人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラで「カルメン」を観る~歌も踊りも演技も3拍子揃ったケモクリーゼのカルメン

2014年01月20日 07時00分27秒 | 日記

20日(月)。昨日、初台の新国立劇場でビゼーのオペラ「カルメン」を観ました キャストは、カルメン=ケテワン・ケモクリーゼ(メゾソプラノ)、ドン・ホセ=ガストン・リべロ(テノール)、エスカミ―リョ=ドミトリー・ウリアノフ(バス)、ミカエラ=浜田理恵(ソプラノ)、スニガ=妻屋秀和(バス)、フラスキ―タ=平井香織(ソプラノ)、メルセデス=清水華澄(メゾソプラノ)ほか。指揮はアイナルス・ルビキス、演出は鵜山仁です 新国立オペラの「カルメン」公演は1999年、2002年、2004年、2007年、2010年に次いで今回が6回目です。記録によると、私は2002年を除いてすべて観ています

 

          

 

日曜日+プルミエ(初日)+「カルメン」ということで、会場はほぼ満席です 今回のプロダクションで一番の”目玉”は、「カルメン」ロールデビューのケテワン・ケモクリーゼです グルジアのトビリシ生まれの彼女はトビリシ国立音楽院とスカラ座アカデミアで学びました。もともとロッシーニやモーツアルトのオペラを得意とする歌手ですが、今回、悲劇のオペラ「カルメン」にどのようにチャレンジするのかが見どころです

ラトヴィア出身のルビキスのタクトで軽快な序曲が演奏され、第1幕が始まります タバコ工場から出てくる女工たちを男たちが迎えます。そこにカルメンが登場しますが、彼女の着ているドレスは”黒”です。カルメンを象徴するのは情熱の”赤”のはず。なぜ最初は黒なのか、演出の意図は最後の第3幕で分かります

ケモクリーゼが歌う有名なアリア「ハバネラ」、「セギディーリャ」、「ジプシーの歌」は、カルメンの情熱的な性格が表れた見事な歌でした これらのアリアに限らず、歌も踊りも演技も出来る超一流のメゾソプラノ、しかも美人です。今回が「カルメン」初体験というのが信じられません

とくに第2幕で、ホセが帰省ラッパの音で兵舎に戻ろうとする場面でのケモクリーゼが演じるカルメンの秘めた怒りの演技は、ただならぬものを感じさせる迫真の演技でした

 

          

 

ドン・ホセを歌ったガストン・リベロはウルグアイ系のアメリカ人ですが、良く通るテノールで聴衆を魅了しました エスカミーリョ役のドミトリー・ウリアノフはロシア出身のバスですが、逞しい闘牛士を堂々と演じ、歌いました

忘れてはならないのはミカエラを歌った浜田理恵です。第1幕でホセと歌う二重唱をはじめ、第3幕第1場で歌うアリアは胸に訴えかける力がありました。ミカエラは今や彼女の当たり役です

若手に目を転じると、メルセデスを歌ったメゾソプラノの清水華澄が着実に力をつけていると感じました 彼女は声量があるので迫力があります。プログラムを見ると、カルメン役のカヴァー歌手として彼女の名前がエントリーされています。つまり何らかの理由で急きょケモクリーゼが歌えなくなった時には、清水華澄がカルメンを歌うということ。それほど期待されているということです

第3幕第2場で、エスカミーリョとともにカルメンが登場しますが、ここでのカルメンは”赤”のドレスを身にまとっています ”情熱の赤”であるとともに”血の赤”であることを暗示しています。この場の最終局面で彼女はホセに刺されて死ぬ運命にあります 第1幕でカルメンの着ていた”黒”は最終局面での”赤”を際立たせる対比として使われたのだと思います

今回の公演で際立っていたのは、ルビキス指揮東京交響楽団の演奏です 第2幕や第3幕では、歌手陣と同じくらいに悲劇を歌い上げ、ドラマを盛り立てる演奏を展開しました

さて、このオペラは最後にホセがカルメンを刺殺して悲劇に幕が下ろされますが、その後ホセはどうなったのでしょうか?原作はフランスの作家プロスペル・メリメの「カルメン」ですが、オペラの台本はリュドヴィク・アレヴィとアンリ・メイヤックが共同執筆したということです 台本には「その後のホセ」については書かれていないでしょうが、慎重にオペラを観て聴いていると、カルメンの台詞の中に答えがあります

第3幕第1場で、カルメンは仲間のジプシー女とトランプ占いをしますが、カルメンが切るカードは何度やっても死を意味するスペードばかりが出てきます カルメンは嘆きます。「あたしが最初に死に、次にあの人(ホセ)が死ぬ」。

カード占いどおり、カルメンは殺されて死にました。次はホセの番なのです これが「生き残ったホセは、心を入れ替えてミカエラと田舎の一戸建て住宅で仲良く暮らしましたとさ、チャンチャン」になってしまったら”カルメン”が”軽めな”オペラになってしまいます。やっぱり、ここはホセに死んでもらわなければなりません

同じオペラを同じ劇場で何度も観ていると、たまにそんなことを考えてしまう今日この頃です。NHK(日本ヒマ人協会)でしょうか

 

          

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