人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アレクサンダー・ルビャンツェフのピアノを聴く~日経ミューズサロン

2012年04月11日 06時30分32秒 | 日記

11日(水)。昨夕、大手町の日経ホール「第399回日経ミューズサロン」でロシアのピアニスト、アレクサンダー・ルビャンツェフのピアノ・リサイタルを聴きました 彼は第13回チャイコフスキー国際コンクールで3位に入賞し、昨年の第14回同コンクールで、優勝候補とされながら決勝進出を逃した際に、モスクワの聴衆と音楽批評家から抗議が殺到して、緊急記者会見が開かれ、同コンクール史上初めて「批評家賞」を受賞したとのことです

プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第31番」、②ラフマニノフ「エチュード”音の絵”作品39-7」、③ショパン「ノクターン第13番ハ短調」、④リスト「メフィスト・ワルツ第1番」、⑤スクリャービン「ピアノ・ソナタ第5番」、⑥ショパン「ピアノ・ソナタ第3番」で、このうちベートーヴェンとショパンのノクターンを除く各曲はチャイコフスキーコンクールでの演奏曲です

日経ホールに着いて、まずトイレをチェックしました。男子トイレが極端に狭いようです このホールのトイレは男女間の壁が可動式になっていて、女性用のスペースを拡大したためです。たしかに女性の観客の比率が高かったようですから仕方ないですね。女性の方にはこのホールを水洗、もとい、推薦します

自席は1階L列8番で中央近くの通路側。会場は9割方埋まっている感じです。照明が落とされて長身のルビャンツェフが登場します。彼は下のプログラムの写真のような厳めしい顔ではありません。むしろイケメンの好青年といった印象です ステージマナーもいいです

1曲目のベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第31番」は1819年から1821年にかけて作曲されました。2曲目のラフマニノフ「エチュード”音の絵”」は1916年から翌年にかけて作曲されました。この2曲を弾くルビャンツェフは、小さなピースを積み重ねて、最後には大伽藍を築き上げるといった感じでスケールの大きな演奏を展開します

3曲目のショパン「ノクターン第13番」は、円熟期の1841年に作曲されました。私は21曲あるノクターンの中でもこの13番が一番好きです。ルビャンツェフはあくまでも男性的に”男のロマン”を奏でます。こういう演奏、すごくいいと思います

この曲を聴いているとき、なぜか同じメロディーのハミングが左の方から聞こえてきます。最初は演奏家が口ずさんでいるのかと思いましたが、女性の声なのです。空耳かなと思って演奏を聴いていると、またハミングが聞こえてきます どうやら左隣の中年カップルの女性の方が口ずさんでいるようなのです。2つ向こうの席の女性です。同行の男性が彼女の方を向いて”やめろ”という合図をしているのをちらっと見ました。こういう人は困るのです お金を払ってプロの演奏を聴きに来ているのに、見知らぬ素人のハミングなんか聞かされて大きな迷惑です春になるとこういう人が必ず出てきます。ハナ歌はハナ見をしながらにしてほしい。ハナはだ迷惑です

プログラムにはここまでで前半が終了の手筈ですが、次のリスト「メフィスト・ワルツ第1番」の演奏終了後に休憩に入るとアナウンスされました。前半の最後に超絶技巧曲を演奏して盛り上げて終わろうと意図したのでしょう

ルビャンツェフは完ぺきなテクニックの裏付けによって「メフィスト・ワルツ」の悪魔的な曲想を見事に弾き切りました チャイコフスキー国際コンクールで「批評家賞」を受賞したのは、この曲の演奏が審査員に訴えるところが大きかったのではないかと思います

次のスクリャービン「ピアノ・ソナタ第5番」は彼の代表作「交響曲第4番”法悦の詩”」と同じ1907年に、わずか1週間で作曲されたとのことです。神秘的な曲想と力強い曲想が交錯する単一楽章の曲ですが、ルビャンツェフは詩情ゆたかに、また、力強く演奏しました

最後のショパン「ピアノ・ソナタ第3番」は1844年に作曲されましたが、この作曲中の3月に父の死の報せを受け取り、ショックで一時病床につきますが、ポーランドから見舞いに来た姉のルドヴィカに励まされながら作曲を続け、その年の秋に完成しました ルビャンツェフは、物語を語るように、スケール大きく、また抒情豊かに、楽章間の間を空けずに弾き切りました

鳴り止まない拍手に応えてアンコールを演奏しましたが、1曲目はシューマンのような、でも微妙に違うような、2曲目はリストのような、でも微妙に違うような、3曲目はショパンのような、でも微妙に違うような、4曲目はラフマニノフのような、でも・・・・ここで、はたと気が付きましたたしかプログラムのプロフィールに「自身の楽曲制作にも精力的に取り組んでいる」という記述があったはず。ひょっとしてアンコール曲はすべて彼の自作ではないのか、と。ブラボーと拍手の嵐の中、彼は結局5曲演奏しました

帰り際に会場出口の掲示を見ると、英語でこう書かれていました。

「アンコール曲=ルビャンツェフ作曲 ぺシミック・ソング、リング・ダンス、タランテラ、サンディ」

・・・・・・もう一曲あったはず。書きそこなったか?

この日のコンサートは想定外の収穫でした これほど素晴らしい演奏が3,500円で聴けるのは日経ホール主催の「日経ミューズサロン」くらいのものでしょう。休憩時間には協賛のファンケルから無料のドリンクサービスもあるし、ホールも新しくて音響もいいし、申し分ありません。次にミューズサロンを聴くのは6月26日の韓国のソン・ヨルムのピアノ・リサイタルです。これも楽しみです

 

        

 

コメント (2)
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