ヒゲの婚活④

昭和４４年は、世界でベトナム反戦運動・日本で東大安田講堂紛争の時代。
騒然たる雰囲気が世の中に漂っていましたが、予備校内は整然としていました。

昼食が済むと、生徒は校庭でバレーボールを楽しんで気晴らし。
ヒゲとK田君は、近くを流れる小川の土手でチェスの勉強。
まだ、日本チェス界が黎明期の頃です。
熊本で唯一手に入った松本康司氏の本を参考にしながら　・・・　。
《　OーOーO　》　のやり方は、こんな感じで良いのだろうか？
首を傾げながらの手探り。
なにしろ、キャスリングの概念は、将棋の中では考えられないモノでしたから。
一番の問題は、ポーンでした。
ポーン同志がぶつかり合うと動けない！？
じゃあ、どんな風に展開するんだ？　日本人には、謎多きゲームです。

予備校の帰り道。
ヒゲが、いつも通りにボチボチ運転の原付きバイクで帰っている時です。
前の方に、予備校の仲間がいます。
バイクで先に帰っているハズなのに？
困った様子でバイクを押して歩いています。
　　　　　　　　　　　　　　　　
S高の同級生ではあるし、ヒゲは声を掛けました。
　　「　ジュンな、どぎゃんしたつや？　」
M角君は恥ずかしそうにしながら、　「　うーん、ガス欠のごたっとたい？　」　。
ヒゲはピーンときて、バイクのエンジンを停めます。
　　「　どーっ！　ちょっと見せてん？　」
そして、彼氏に示しながら、
　　「　このレバーを９０度ひねると、予備タンクが開いて暫く走行出来るから、
　　　　　　その間にガソリンスタンドに駆け込むとよかたい。　」
M角君が試しにキックすると、エンジンが動きだしました。
彼氏は、ホッとした顔に。
ヒゲは笑いながら、
　　「　おいおい、バイク屋の息子だろうたい！？　そんくらい知っとけよ～！！　」

　　　　　　　　　　　　　　　　≪　その頃のヒゲ　≫

それから約２０年後、田園の３F大広間。
彼が、会社の部下を大勢連れての宴会がありました。
ヒゲも懐かしくて挨拶に出向き、この予備校時代のガス欠騒ぎが思い出話に。
彼が、　「　ああーっ、そんなことが在ったネ～　はははははー　」　

今回は、テーマからは少し横道に反れた、同時代のお話でした。　

　　　　　　　
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