今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

42mm付きPEN-FTブラックの巻

2022年10月14日 20時30分00秒 | ブログ

大口径の42mmは絞り羽根の作動が重いですから、フリクションが大きいカメラの場合、シャッターがフリーズしてしまうことが多いです。このレンズも絞りが非常に重く、カメラ側の作動トルクでは押し切れない状態です。オーバーホールが必要ですね。

#2623XXのFTブラックモデルです。先日の個体同様、非常に良いコンデションですが、生産が少し前のため塗膜の艶消しが少し磨滅して光っています。まぁ、先日の個体の状態が良すぎるためで、この個体でも充分素晴らしいコンディションです。過去に分解歴有りですが、オーバーホールをして行きます。

作業はいつも通りですが、特に不具合の個所はありませんのでさっと進めます。26万台ぐらいですと電池室からのリード線の半田付けが腐食してくる頃です。この個体の場合、ちょっと触れば半田は外れますのでやり直します。

 

本体の洗浄とモルト貼り、スプロケット軸とスプール軸の組立。電池室からのリード線の新製。

 

シャッターは疲労(摩耗)も少なく、チャージギヤ軸の摩耗も僅かです。ユニットの洗浄点検とグリス塗布組立。シャッター幕も傷がありません。中心の留めネジは緩まないようにカシメをされていますから緩めてはいけません。

 

前板側、プリズムはコーティングも完璧で良い状態です。

 

 

前板を組んだ状態。前回のブラックモデルより、こちらの方が巻き上げがスムーズかも知れません。同じように作業をしているのですが、難しいカメラです。

 

接眼プリズムのモルトが塗装を侵していて、前回修理された方が清掃したら塗装が落ちてしまったという状態でした。これですと接眼から覗くと光線漏れが見えてしまうのです。これは補修塗装をしてから組み込みます。

 

これで組立完成。

 

 

42mmはヘリコイドグリスの流化により、絞り機構に油が回って作動が重くなっているのが原因。分解をして脱脂清掃をします。

 

FT本体も巻上げもスムーズで調子は良好で、42mmを装着しても快調に作動をします。本体レンズ共、非常に良いコンディションのこの組み合わせは憧れですね。

 

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ロードⅣBのメンテナンスの巻

2022年10月12日 20時00分00秒 | ブログ

岡谷光学のロードⅣBが来ています。1955年製のカメラだそうですが、いつ見てもがっちりとした作りで好感が持てます。オーナーさんは、その長野県の岡谷にお住まいの方です。ft機のブラックモデルですから輸出された個体でしょうね。ブラック塗装は非常に上質で黒味に高級感があります。画像の専用フィルターと専用フードは貴重ではないのでしょうか? 

シャッターは精工舎のMXと国産高級機が搭載されていますので信頼性は高いのですが、シャッターを切ってもシャッター羽根が開かない時が多いです。洗浄と注油などをしていきます。

 

スローガバナーを洗浄して注油をします。

 

 

ファインダーの汚れがひどいのでトップカバーを開けようとしましたが・・過去に駒数計のノブを外そうとしてロックのイモネジを壊されています。さて難儀なことです。

 

かといって開けなければ仕事になりません。開けてみるとトップカバーを開けられなかったために長期間のホコリが多く積もっています。

 

この頃の高級機はプリズムが使用されていますね。カメラは重くなりますが・・対物レンズとプリズム間の清掃がやり難いですね。

 

画像はスプロケットのギヤが巻き上げに連動している撮影時の状態。

 

 

巻き戻しボタンを押すとストッパーがスプロケットギヤを上げてフリーにする。

 

巻き戻しが終ったら、復帰ボタン(ピンセット先)を押してスプロケットギヤを解除する必要があります。

 

ファインダーの清掃と巻き上げ系の清掃注油をしたところ。

 

 

駒数窓はセル板ですが接着が剥離していますので、清掃後再接着をしておきます。

 

この頃のレンズは変な曇りやコーティングの曇りなどが無いので良いコンディションを保っていますね。

 

PEN-Wなどか見習って欲しいぐらいの塗装の良さ。当時の高級機という感じがします。専用のフードにはLordの彫刻が・・

 

結局、この時代の作りが一番永く品質を保持できる作りのように思いますね。生真面目な当時の日本人を見るようです。特にブラックモデルは魅力的です。

 

 

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PEN-SとPEN-D兄弟の巻

2022年10月08日 20時08分10秒 | ブログ

秋田のご常連さんからPEN-SとPEN-Dが来ていました。両方とも状態は悪くはないと思いますが、シャッターは粘って眠い状態。このシャッターですから工場を出たままメンテナスを受けていない場合調子良く動くものはないと思います。

 

まずは全て分解をして本体を洗浄したところ。

 

 

裏蓋開閉鍵の留めネジが緩んでいて脱落しそうでした。分解をして古いグリスを洗浄します。

 

#3463XXと昭和38年4月製のためシャッターユニットは変更前になっています。のネジが以後は逆に本体から生えるシャフトにナット留めになります。強度の問題でしょうかね。画像のように、シャッターを切ってもシャッター羽根が開いたままで停止します。

特の摩耗はありません。フリクションが大きくなっているだけです。組立の最後にシャッター羽根を取付けて完成。

 

シャッターユニットを本体に搭載して洗浄研磨をしておいたカム、リング類を取り付けます。

 

ファインダーのレンズはかなり汚れがひどい状態でしたが清掃できれいになりました。対物レンズを接着してトップカバーに取り付けます。駒数ガラスに対角2か所のクラックがありますが、交換のご希望はありませんでしたので再使用とします。

 

製造の古い個体ですが、レンズは非常に良いです。コーティングの劣化も無く欠点がありません。比較的保存が良かったのでしょう。

 

れでPEN-Sは完成で次はPEN-Dを作業します。

 

 

PEN-D系は巨大なレンズが飛び出しているので、フィルターを装着していなかった個体は傷が多く付いています。仮に清掃をしたところですが、コーティングの●劣化が取れませんね。後で分解清掃をしてみます。

 

最近思うことは、PEN-Dは製造が古くてシボ革剥離が困難になって来たこと。材質が硬化気味になって来て、糊も弾性がなくなりダイカスト本体と密着して熱を掛けた程度では簡単には剥がれません。材質も弱くなっていますので無理をするとシボ革が破れてしまいます。

シャッターはフリクションが大きくなって不調となっているもので、摩耗や部品不良は無く、通常の作業で快調になっています。この個体は未分解と思っていましたが、駒数板に大きなひっかき傷がありますね。しかし、シャッターは取り出されていませんでした。

セレン式メーターは正常でしたのでファインダーの清掃に留めておきました。洗浄したトップカバーの接眼部モルト貼りや駒数ガラスとメーターガラスを研磨してあります。

 

前玉の分解清掃。やはり傷は多く、程度の良いレンズがあれば交換したいところ。

 

本体にレンズを取付けてシャッターリングを取り付けます。

 

 

機械的には非常に良い個体ですが、PEN-Sに比べてやはりレンズが惜しいですね。PEN-Dの方は外観が汚れ放題でしたので洗浄を丁寧にしてきれいになっています。

 

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ローライ35ジャーマニー2台の巻

2022年10月06日 07時30分00秒 | ブログ

ローライ35ジャーマニーが2台来ています。どちらも外観のへこみなどはなく良い個体です。しかし、#30259XXは不具合が多いのでオーバーホール。#30093XXは限定修理とします。

 

#30259XXは沈胴がスカスカです。沈胴部分を過去に分解されているようです。

 

 

ヘリコイドグリスも抜けています。レンズも汚れがありますのでシャッターを分解清掃します。

 

手前右のネジがありませんね。

 

 

軸受けやギヤの洗浄グリス塗布をして組みます。その他、シャッター低速不調を修理しておきます。

 

沈胴のフェルトは分解されていまして、再組立の時に無理に沈胴チューブをねじ込んでフェルトを痛めています。

 

B(バルブ)で止まらない。これも多い故障です。ピンセット先のカシメの固着です。たまにBまでシャッターダイヤルを回して固着しないようにした方がよろしいかも知れません。

 

ローライ35のシボ革剥離はそれほど困難ではないのですが、この個体は親の仇のように剥がれませんでした。前カバーをセットします。

 

絞りダイヤルとシャッターダイヤルを取付けてシボ革を接着します。

 

 

シャッター・レンズを清掃します。チリの混入はありますが、カビなどは無いようです。

 

多くのローライ35を所有されていたうち2台を残されたとのことでコンディションは良いですね。絞り羽根の腐食などもありません。分解清掃をしておきます。

 

ヘリコイドグリスを交換してシャッターユニットを本体に搭載しました。フィルムレールを取り付けます。

 

巻上げカムの偏摩耗もありません。ジャーマニーの初期型ですのでのロッキングスプリング(駒数板の戻りを留める爪)の下にリーフスプリングが入っていません。多くの個体は巻き上げが20枚を超えると駒数板を止められなくなり、それ以上カウンターが進まなくなります。この個体は現状は大丈夫ですが将来は症状が出るでしょうね。

初期型の巻き戻しダイヤルは金属の組立式。汚れで回転が粘るので清掃とグリス塗布をしておきます。

 

これはもう一台の#3009338と、こちらの方が初期ですね。こちらはレバーアテと低速不調のみの限定修理をします。カウンター窓の樹脂ガラスは両端しか接着をされていませんので、このように脱落している個体が多くあります。下にある露出メーターのガラスと接しているので、特に問題にはなりませんが・・

カバーの洗浄後、レバーアテの熱カシメと樹脂ガラスを接着します。

 

 

レバーアテが欠損して状態で使用を続けると、トップカバーにレバーが直接当たって傷を付けてしまいます。この部分のみの限定修理もお受けしています。

 

 

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緊急作業のPEN-FT(B)の巻

2022年10月04日 11時30分00秒 | ブログ

昨日お電話を頂きました。「今週末の娘の修学旅行にPEN-FTを持たせたい」え~今週末~?。お嬢様の思い出作りですから何とかして差し上げたいと緊急で送って頂きました。来て見てびっくり、こんな塗膜の磨滅も無い個体が残っているとは。お電話を頂いたお父様も使用されたカメラだそうです。ストラップも新調されていますね。

トップカバーを開けるとやはり未分解でした。

 

 

使われずに長期保管のため#3166XXと後期の個体ですがハーフミラーは腐食しています。その他、巻上げのゴリツキが顕著に出ています。では作業に入りますが、途中でUPする時間は無いと思います。

 

フィルムカウンターの復帰が緩慢です。原因はギヤの場合とリターンススプリングの場合がありますが、この個体の場合はリターンスプリングの劣化です。

 

組立はこれで終了ですが、長期の保管による露出計の感度低下が大きいです。何とか補正をしてありますが、特性にも影響があるかも知れません。

 

付属の40mmですが、絞りリングの回転が異常に重い。分解をしてみると絞りリングと当たる部分が異常に摩耗しています。たぶん、過去に絞りリングに打撃を受けていて目視で分からない変形があると思います。

 

指標環の上部が変形陥没しています。やはり打撃を受けているようです。

 

 

これで緊急作業完成。このカメラで若い世代のお嬢様が思い出の写真を撮影してくださるのは嬉しいですね。素晴らしく程度の良い個体ですから大切にされてください。(1970年01月製)