今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

久しぶりのおフランスの巻

2020年08月11日 23時50分00秒 | ブログ

今日は暑かったですね。車でスーパへ買い物に行く時、かみさんに「エアコン入れる?」と聞いたら睨まれました。で、帰ってからFOCAをやります。ご常連さんにFOCA MATIC系がお好きな方がいらっしゃいまして、しばらくぶりで来ましたね。MATIC系にも種類があるようでSPORT CFはセレン窓周辺のデザインが微妙に異なるようですね。今回の個体はあまり良くないなぁ。距離リングがカラカラと回りレンズ2群が外れているようです。

ASA感度リングも単独で回らず、たぶん分解されていい加減に組まれているようです。

 

 

レンズとシャッターをメンテナンスして行きます。セルフタイマーユニットが不調です。動きだけではなく、シャッターが切れるタイミングと動作が止まるのがほとんど同時で、調整に苦労します。

 

年代を考慮すればレンズの状態は悪くはありませんが、前玉は汚れの付着がすごいです。幸い、コーティングの傷は少ないです。

 

ピンセットで押しているピンは距離計ではなく、ASA感度と露出メーターの追い針との連動です。ピンを押すと赤い針が動きます。

 

シャッターとレンズはこれで良いと思います。

 

 

側面のメッキ帯板にへこみがありますね。

 

 

取り外してみると・・

 

 

修正をしましたが板厚0.6mmのチャンネル構造ですから完全には戻りません。

 

 

ファインダーの清掃は非常に厄介。上カバーを留めるネジは底部でナット留めとなっており、ネジロックが塗布されているため、ファインダー全体を下ろさないと分解が出来ません。また、ハーフミラーやブライトフレームは接着されておらず、上カバーの溝で固定される構造のため、上カバーの合わせ位置によりハーフミラーの角度が微妙に変わってしまうため、ブライトフレームが倒れてしまう現象が出ます。何度も組み直して妥協します。

ファインダーを取り除くと巻上げのラックギヤが見えます。グリスを塗布しておきます。

 

 

前カバーと裏蓋が樹脂製なので本体も樹脂かと思うと、ちゃんとダイカスト製です。最後の拭き上げと動作確認。伸縮式の巻き戻しレバーで巻き戻し軸がロック、回転しています。

 

に巻き戻し軸とギヤ連動するフィルム巻上インジケーターが回転します。

 

 

で、一般的にシャッターボタンのある位置にレリーズ用のネジ穴がありますね。じゃ、普通にシャッターボタンを付けたらいいんじゃないの? とか思ったりしますが本体のサイズが大きくてボタンを押しにくいのでしょうね。

 

まぁ、そんなこんなでおフランスの弁当箱が完成しました。レンズはNEOPLAR 4.5cm f2.8が付いていますけど、写りも個性が強いのでしょうかね? 完成させてみると意外に良い個体となりました。

 

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SEARS AUTO 35の巻

2020年08月10日 21時10分00秒 | ブログ

世の中お盆休みでしょうか? リコー・ハイカラーかと思いましたらSEARS AUTO 35と言うらしいです。シアーズはカタログ販売会社と思いますのでリコーがOEMブランドで供給したもののようです。2台来ていましてニコイチご希望です。

露出計をセレンからCdsに変更されたタイプで1968年頃の製品のようです。電池室の蓋が液漏れによる固着で簡単に開きません。何とか開けましたが・・

 

リコー・オートハーフ系で一番面倒なのは裏蓋のモルトです。広範囲を清掃するのには時間が必要です。モルトの消費も多いですからね。本来はカメラが直って最後に貼るのですが、このベタベタカメラを触りたくないので直ることを信じて先に貼り替えます。

ふぅ、やっと劣化したモルトを清掃しました。

 

 

本来は1枚物ですが、糊付きモルトで1枚物は貼りにくいですし、モルトの裁断にも無駄が出ますので分割して貼って行きます。

 

裏蓋全体と蝶番、ファインダー部のモルトも交換しました。裏蓋部はオリジナルと同様にRを付けてカットしているのが芸が細かいところ。

 

では、レンズを分離して行きます。ヘリコイドグリスは完全に抜けています。

 

 

前面カバーは部品取りの方が塗装ハゲが少ないので交換ご希望です。

 

 

まぁ、すごいデザインセンスのレリーズボタン座に打痕がありますので、こちらはオリジナルに交換しておきます。

 

レンズの各郡を清掃して行きます。

 

 

ファインダーは曇りがありますので清掃をしますが、これが本体から分離しにくいこと。左側にCdsが見えます。

 

レンズを分解して清掃します。ファインダー内から距離リングの表示が見える機能のため、プリズムが仕込まれていますがこれは樹脂製です。

 

知恵の輪のような組立でファインダーをセットしましたが、取付位置の微妙な差により、距離リングの表示が見えなくなるので微調整が大変・・ファインダー内に表示が写っています。

 

他に不具合はないかと点検すると・・フィルムカウンターが全く動いていません。原因はピンセット先のレバーの固着。

 

清掃と注油により無事動き出しました。

 

 

ゼンマイの巻上げテストをしてみると、4~5枚程度しか巻き上がらないようです。原因は、このワンウェイクラッチのバネ。摩耗とグリス切れにより返って滑りが早くなっているようです。清掃と硬いグリスを塗布します。

 

表示プレートを接着します。

 

 

10枚以上はシャッターが切れるようになりました。

 

 

夏の暑い時期にはやりたくないカメラですけど、到着していたのは梅雨のはしりの頃ですから私の責任です。オートハーフファンの方なら欲しいカメラなんでしょうね。

 

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熱中症にご注意PEN-S3.5の巻

2020年08月07日 21時10分00秒 | ブログ

いやぁ、まだ頭痛がしています。今日も暑かったですが、作業の都合で午前中に届いたPEN-S3.5 #1282XXを早めにやってしまおうと根を詰めたのですが、私はエアコンがあまり好きではなく、我慢が出来るうちは扇風機で暑さをしのいで一時はエアコンを入れていたのですが、気が付いてみると気分が悪く頭痛がしています。「あつ、熱中症だ」と気が付いた時は遅いです。まぁ、なんとか回復して来ましたが若くはないので気を付けないと・・皆さんもご注意くださいね。

で、こんなのがまだあるんですね。ちょっと梨地メッキが曇り気味ですけど、使用感の少ない非常にきれいな個体です。

内部もきれいですね~。

 

 

この個体は未分解だと思いますよ。カニ目ネジも痛みがありませんね。

 

 

距離リングのイモネジも緩められた形跡がありません。

 

 

洗浄をしたら駒数ガラスの接着が剥離しました。

 

 

当然、シャッターも未分解ですがシャッター幕が開いたままで止まります。

 

 

では、洗浄をして組み立てていきます。部品の表面処理も酸化がありませんね。

 

 

さっさとオーバーホールを終えたシャッターユニットを組み込みます。じつは、この辺りから体調が悪くなっています。

 

休みもそこそこに頑張って駒数ガラスとファインダーレンズの接着をしました。この個体の梨地メッキは曇り気味ですけど、このような個体を他にも見ます。保管状態が悪いのか? いえ、巻き戻しダイヤルの落し込み部を見て頂くと光っていますね。ここは梨地を打っていないところなのです。ということは梨地の粒度が荒いことが原因のように感じます。粒度は決められていると思いますし、検査課ではメッキ上がりの限度見本も作ってあるはずと思うんですけどね。

明らかに手触りがザラザラとして梨地が荒いのは間違いありません。メッキ厚も薄いのかも知れません。

 

PENには珍しくレンズの状態は最高です。あえて分解清掃をしてもコーティングを悪くするだけですので前後の清掃だけにしておきます。

 

私ね。初めてPENを見た時に、ファインダーガラスの内側で巻上げと同時に動く何かにすごくメカを感じたんですよね。子供の頃のからくり玩具のようにすごいメカがあるんだろうなぁって。単にチャージレバーの先端が寸法的に隠せずにファインダーから見えているだけなんですけどね。

で、考えていたのは、この部分に日の丸扇子を取付けたら左右に振って可愛いのではないかなぁ・・やってませんけどね。

 

と言うことで、外観やレンズ・メカ共、現在では最高の状態の個体だと思います。後期型の仕様変更されたシャッター搭載機よりよっぽど良いです。私も欲しいくらいの個体でした。1965年10月製造。

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ヴェラのシャッターが開かないの巻

2020年08月06日 20時30分00秒 | ブログ

UPの予定が無かったので画像を撮っていません、途中からです。ヴェラですけどね。シャッターが開かないので来ましたが、原因はシャッター羽根にテンションを掛けているコイルバネが折れているものでした。そこで、バネを修理してシャッターを切っていると・・今度は後ろの遮光用羽根が作動しなくなってしまいました。そこで分解をしてみると、の極小の◯は何? じつは、折れたシャッターバネが後ろの遮光羽根に入って羽根の動きを止めているものでした。

外国製のカメラは専門ではないので、がたぱしゃさんにお知恵をお借りしました。ピンセット先をスライドさせることによって遮光用羽根が作動します。横のLレバー(カム)によってシャッター羽根との作動タイミングを制御しています。

故障原因の折れたバネの先端部。これによって余計な時間を消費することになりました。

 

画像が暗くて良く分からないですけど、これはシャッターチャージ前の状態。遮光羽根が閉じている状態。

 

こちらはシャッターチャージをした状態です。

 

 

まぁ、プレストールRVSは厄介なシャッターです。1/750を実現するためにシャッター羽根を回転式とし、チャージの時にシャッター羽根が開くので露光を防止するために後ろの遮光羽根が作動するということですけど分かりますかね? 実際に作動を見ないと理屈が理解出来ないのでしたが、よくもまぁ、こんな方式を考えたものです。完成したシャッターを本体に取り付けます。チャージピン、レリーズレバー、距離計連動ピンの接続を確認しながら組み立てます。

リングナットを締め込んでフィルムレールを取り付けます。

 

 

やれやれ、何とか修理が完了しました。

 

 

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オリンパス・トリップ35のメンテナンスの巻

2020年08月05日 13時20分00秒 | ブログ

きれいなトリップ35ブラックですけどね。EE精度(赤マーク)について安定しないということで来ていましたが、点検のところセレンは正常で針オサエなどの動きにも問題は無いようです。画像のようにメーター針が針オサエのギリギリにある場合、シャッターボタンを押すたびに赤マークが出たり出なかったりの動作をすることがありますが、これは機構上の問題で不良ではありません。シャッターボタンを連続で押すとメーター針がジャンプして違ったEE値になることがありますので、連続のボタン押しはメーカーでも禁止しています。

それではとレンズを点検すると・・PEN-EEもそうですが、この形式のシャッターは前から覗いたのではレンズのカビや汚れが見えにくいのです。Bバルブもありませんからね。後ろから光を入れるとかなり汚れているのが分かります。

 

この個体は過去に修理を受けていますが、ピントリングを触ってみると・・グラグラでイモネジが止まっていないことが判明しました。無限を確認するとかなり前ピンになっています。

 

前玉のヘリコイドグリスは殆ど無くなっていました。カビがありますね。

 

 

続いて2群目も。

 

 

最後も同じ様にカビがあります。清掃をしましたが、経験的にPENも同じ様にズイコーレンズのカビは清掃が出来ない場合が多いと思います。ローライ35のHFTコートなどは清掃で殆どカビを取り除くことができるのに、コーティングの種類の問題なのでしょうかね?

絞り羽根も洗浄して組み立てました。ファインダーのカビ汚れも清掃しておきます。

 

シューのターミナルを半田付けをしてトップカバーをセットします。

 

 

ボタンドメはPEN-FTと共通部品でしょうね。

 

 

この個体は長く放置をされていたと見えて裏蓋の内側(バネ、圧板)に多くのカビが付着していました。すべて清掃をして圧板は研磨をしてあります。

 

トリップ35は1968年5月の発売だそうで、当時の価格は¥14.800でした。PEN-EESをベースに製作されたフルサイズ小型EEカメラということで、EESの基礎設計を使い早く安く市場に供給をしようと企画された製品でしょうね。メカは定評がありますから故障が少なく、小旅行には持って来いのコンパクトとカメラとして人気がありました。少数派のブラックモデルはすごみがありますね。

 

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