今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ハミルトン・ミリタリーMIL-W-46374BをO/Hするの巻

2014年08月14日 14時32分40秒 | インポート

Img_485022ミリタリーウォッチは魅力的で私も好きなのですが、このモデルはハミルトンがアメリカ軍に納入した官給品のMIL-W-46374Bで、1982年製です。バネ棒が嵌め殺しなので兵隊用でしょうね。オーナーさんが過去にデッドストック品を購入して使用されていたとのことですが、残念ながら風防にクラックが入っています。じつは、このクラックが成長してしまう失敗をやらかしました。





Img_485246手巻き7石の機械ですが、ハミルトンと言っても機械はスイス、エボーシュのINT7420/4と刻印されています。ドゥローヴェの7420と同じとか?? オーナーさんからは最初から5分以上進んで、ハック機能が働かないとのことでしたが、構造的にハック機能はありませんね。歩度はデータが取れないような滅茶苦茶な状態です。ヒゲゼンマイの絡みを疑いますが、一般的な耐震装置はなく、弾性樹脂が耐震装置の代わりをしているようです。



Img_485499 機械の設計はオーソドックスなもので、特に問題はありませんが、作りはあまり上質ではありません。使い捨て仕様なのかな?輪列を組んでいきます。









Img_485557 コハゼも材質のバネ性を利用したシンプルなもの。角穴車もペラペラですね。











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案の定、ヒゲゼンマイが接触していましたね。一応、作動を開始しました。











Img_485734 一一般的な耐震装置ではないですね。簡略化ということでしょう。











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ヒゲゼンマイの絡みを修正して、まぁまぁの歩度を示してきましたが、片振りは調整しきれません。









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過去に分解歴なしですからきれいな文字盤と針に返って扱いが慎重になります。H3と放射能マーク(長針の陰)は夜光塗料にトリチウムが使われていることを示しています。しかし、現在は殆ど発光しないようです。






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ケースに収めて完成。左は民生用のカーキですが、文字盤の数字や針の色は、やはり本物には敵いませんね。風防の傷を研磨しておいたところ、気が付くとクラックが大きくなっていて大失敗です。
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PEN-FTその他ご一統さんの巻

2014年08月07日 14時36分40秒 | インポート

Photo相変わらず今日も暑いですね。みなさんは、もう一息でお盆休みでしょうね。もう一頑張りです。私はリペイントを終わらせてちょっとうだうだしています。そう、少し前に北海道のINOBOOさんから季節の便りが届いていました。ジャガイモの花だそうです。広大な畑に朝靄が掛かって何とも涼しげですね。あ~、北海道に行ってアイスクリーム食べたい。




Img_480651で、まだうだうだです。先日仕上げたセイコー・スーパーですけどね。付属していたジャバラベルトを超音波洗浄をして取り付けてみました。まぁ、すごい油汚れで何度も洗いました。今まで、ジャバラベルトはオヤジのベルトと敬遠して使ったことがありませんでしたが、考えてみたら自分もオヤジの年齢でした。使用感がこれが楽です。バックルがないので、時計が腕の中心にピタッと来て心地よい。締め付けもそれほど感じません。そこで、昭和40年代初めぐらいまでかなぁ。私が子供のころ、夏になると大人が汗止め用に腕に包帯を巻いて腕時計をしていた記憶があって、それが何ともかっこよいと記憶に残っています。姉ちゃんのクラスでも、怪我もしていないのに包帯をアクセサリーにするのが流行ったりして・・坂本九やバラキンの時代です。で、子供のころの憧れをやってみました。う~ん、気持ち良いですよ。これで今から床屋さんに行ってみようかしら・・


Img_480844包帯のルーツは、昔、帝国軍人の将校が同じように包帯の上に腕時計をしている映像があって、当時は防水性能のない時計を劣悪な環境下で使う実践的な知恵だったのでしょう。じゃあ、時計も少し古くして、と言っても、これも戦後の設計の新10Bですけど、同じ10型なので雰囲気は一緒かと・・南方戦線の戦車兵みたいだな。もうすぐ敗戦記念日が来る。





Img_469822では本題です。あら~、3台のカメラを紙袋で送ってこられた方は初めてですよ。大丈夫でしょうか?・・











Img_480951キヤノンⅡDのようです。巻上げダイヤルの回転が極端に重いとのことで、分解をしましたが、逆転防止用のバネが変形しています。何度も分解を受けていますので巻上げダイヤルが緩んで(剣先のイモネジに問題あり)いたところを逆に回して変形させたものでしょう。このバネは変形すると逆転を止められなくなりますよ。






Img_481575巻上げダイヤルの緩みの原因ですが、イモネジの先端が本来剣先に尖っているのですが、何度も締め込んだために先端が平らになってしまい、スプール軸を留めることが出来ないのです。オイルストーンにて鉛筆削りをして修正をします。








Img_481388もう一つの不具合は、駒数カウンターが正確に同調しないとのこと。ここは、ダンパーグリスで固定しますが、水油がつけられている状態。これでは滑りますね。摩耗もあるので、一番硬いグリスを塗布して同調を見ます。 40枚まで正確に同調します。その他、アイレットの曲がりはカシメの修正や彫刻文字の入れ直しその他清掃をしておきます。





Img_481657アイレットも真っ直ぐになりました。スローダイヤルに汗によるメッキの劣化がありますが、きれいな個体ですね。巻上げは軽く、シャッターの調子も良好です。










Img_481748では、次やるニダ。PEN-FT #2760XXですが、何々・・「レンズ脱着の時にごりつきがある?」これはカメラ本体ではなくて、レンズのヘリコイドグリスが抜けてガタが出ているのでしょ。あとは二回巻き上げね。








Img_481915で、分解とセルフタイマーボタンをはずそうとしましたがレンチが滑って外れませんねぇ。面取りを大きく取った部品が使われている頃です。確かにこの方が製品の完成度としてはカッコ良いですけど、あとの分解のことを考えていないよね。幸い、ネジ自体が緩んでいたので、裏ワザで分離をしてボタンを外しているところ。






Img_482116過去に分解修理を受けていますね。露出計の基板は抵抗が交換されています。












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前板の留めビスも1本欠落しているし・・













Img_482324きったないユニットだなぁ。モリブデングリスを塗りたくってありますが、このような着け方をしても意味はないと思います。シャッター自体には手を付けていませんね。取りあえず全て分解洗浄から・・









Img_482565では、いつものように洗浄後に組立をしていきますが、長くなりそうな予感があるので簡単に行きますね。巻上げ系を組んだところ。










Img_482752油と汚れまみれのシャッターユニットを洗浄して点検します。二回巻き上げにしては、歯車の損傷は大きくないようです。スローガバナーも良好です。










Img_482857シャッターユニット完成。これで各部の注油はしてあります。目に見えるほどの油を着ける必要はありません。











Img_483046ミラーユニットも油でギトギトでしたので、すべて洗浄をしてあります。注油も済ましていますよ。











Img_483246ハーフミラーは拭き傷は目立ちますが腐食はないので再使用も可能ですが、オーナーさんのご希望で新品と交換します。











Img_483332この個体はビスやワッシャーが欠落している部分が多いですよ。露出計ユニットを留める3本のビスのうち1本がありません。じつは、最初から2本で組まれている個体もあるのですが、この個体はねじロックから3本で組まれていました。なぜ工場で省略したかというと、この部分はドライバーが真っ直ぐに入らないのです。米谷さんの設計にはよくあることです。それで工程上省略したのでしょう。この個体は正規のビスを追加して組みます。



Img_483411ちょっと、嫌な予感がしていたのですが、セルフタイマーユニットの留めビス2本のうち、右側のビスとワッシャーが欠落しています。なんで?? じつはね。このユニットは、設計変更後のものに交換されているのです。








Img_483557分かりますかね。右のユニットが本来この個体に適合するユニットです。右側のねじ穴位置を見比べてください。左の設計変更後のユニットはねじ穴が右に寄っていますね。これは、マウントを分離せずにセルフタイマーユニットを分離できるように設計変更したためです。サービスさん辺りから「めんどくさい」とでもクレームが入ったのではないでしょうかね。知らないけど・・ ユニットを交換するか、このまま知らないふりをするか?



Img_483728まぁ、いいや。オーナーさんはセルフタイマーは使わないと言われるし、ダイカスト本体に接着で強度を保持させておきます。しかし、なぜ交換する必要があったのでしょう。動かなければ治せば良いだけと思いますけど。








Img_483977少し問題はありましたが巻き上げはスムーズでシャッターの調子も良好。現存の中では90点以上は上げてよい個体です。ただし、オーナーさんからのご要望で、前面の「MP」の上部の色が抜けているとのご指摘。これは、プレスが甘くて落とし込みが足りないために手の摩擦によって剥離したものです。こんなのは珍しいけどね。工場ではかろうじて色入れ出来たけど、使用過程で梨地も磨滅するので、現状の色入れは困難です。一応補修をしてありますけど、すぐに抜けてしまうと思います。深さ0.1mmも無いぐらいですから。
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2台目のPEN-FT #2514XXですが、こちらの個体の方が使い込まれているようです。毎回二回巻き上げになりますね。特に問題が無ければダブるので簡単にUPをします。








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この個体は雨の日に使うことが多かったのかな? 結構ダイカストが粉を吹いていますよ。マウント取付け部も同様でした。










Img_484215 アイビース枠がバラバラになっていました。アクセサリーシューなどを取付けていた個体に良くあります。通常は片方だけが多いのですが、この個体は両端ですので、接着修理をしても強度がないと判断して交換することにします。







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すべて洗浄をしてから組み立てています。電池室のリード線の半田付けが取れましたので再半田をしてあります。










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シャッターユニットの洗浄点検です。ブレーキナットに緩みが発生していました。このナットは緩みやすいです。










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もう一つの問題。シャッター幕のセクターギヤ軸の回転が異常に重いです。じつは、これも結構ある不具合で、シャッタースピードが上がりません。現状は殆ど無給油で作動していますので、摩耗のため軸が荒れてくるのですね。改善させています。







Img_484734 付属の20mmですが、ヘリコイドの回転がスムーズでない。また、ガタもあります。ヘリコイドグリスの劣化と抜けですね。過去に分解を受けていますので、ネジ部もあまり良くはありません。








Img_484826 そんなことで、2台のFTは両方とも良い感じに仕上がりました。1台はパートナーさんの使用機だそうです。最後にⅡDを入れて記念撮影。
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知人から譲られたPEN-Fが変ですよ

2014年08月02日 14時13分16秒 | インポート

Img_475426知人から譲られたというPEN-F #1645XXですがミラーボックスの中がすごいことになっていますよ。付属のレンズもカビが多いです。










Img_475132あら~、すごいことに・・。この連載は長くなりそうな予感がします。問題はリターンミラーが再接着をされていますが、接着が浮いているのですね。ピント調整をされた形跡がありますが、調整範囲は非常に狭いですから、ミラーは正規の板厚でホルダーに正確に貼られていないと調整範囲を超えてしまうのです。





Img_475588トップカバー内は手を付けられていないようです。












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まず、前板のリターンミラー関係を仕上げます。プリズムは、典型的な黒点の腐食はないのですが、残念ながら一か所だけ腐食があります。では、すべて分解・・










Img_476055ミラーが二か所欠けていますね。こじって剥がそうとした? だって剥がれていたんでしょ。











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ミラーを分離しました。観察すると、2回接着をされています。まず、オリジナルの接着剤を除去せずにエポキシで接着をして、その後に、ゴム系で接着をしています。それによって、密着も平行度も滅茶苦茶になっています。








Img_476226古い接着剤をすべて剥離したところ。ホルダーの黒塗装も剥離しています。












Img_476311あ~、この調子では画像が何枚あっても終わりそうもありませんね。少しはしょって行かなくては・・では、工程は飛ばして。ホルダーを再塗装をしてから新品のミラーを貼りましたとさ。









Img_478555ミラーユニットと汚れが激しいスクリーンを超音波洗浄をして組み立ててあります。これで前板ASSYは完成。











Img_476685なんですか、リペイントをご希望とのことで、夏場の暑い時期は避けたいと思っていたのですが、最近、リペイントのご依頼が多くて・・では、駒数ガラスを分離します。ここは、ゴム系接着をされていますが、接着剤の溶剤が樹脂を侵していますので無傷で剥離することは非常に(溶剤は使えません)困難なんですね。これが出来る方は、私の知る限りMazKenさんだけです。





Img_478788完成したシャッターユニットを本体に組み込みます。調子の良いユニットです。












Img_478817ファインダーのピント調整を終えてメカの組立は一先ずここで止めておきます。












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先に38mmレンズを仕上げておきます。ヘリコイドグリスの流化と絞り羽根への付着とレンズのカビがあります。












Img_479257カビが多いです。













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こちらも。













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レンズを装着してのテストは巻き上げもスムーズで快調です。上下カバーと小物のクロームメッキを剥離してニッケル状態としたところ。上品なシャンパンゴールドですね。どなたか、この仕様で使われてみては?






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今日、関東地方は最高の暑さだそうで、36℃ぐらいとか言ってたね。こんな日に塗装なんて殺人的です。熱中症が怖いので、小間物を塗って止めましたので画像は1枚です。






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結局、今日も暑かったね。水分を補給しながら塗りましたよ。塗装の終わったトップカバーに色入れとシンクロターミナル、駒数ガラスを取り付けて完成です。









Img_480481 カバーを本体に取り付けて完成。レリーズボタンはFTとは構造が異なり、塗装仕様とすると作動不良が発生ることがありますのでメッキのままとしてあります。黒メッキをすれば良いのですけどね。その他、全反射ミラーも交換してあります。最初はどうなるのかと思う個体でしたが、メカも安定しており、きれいに仕上がったと思いますね。ただし、猛暑の時期はちょっとつらいです。このカメラを使用するのは初めてとのことで、では、お盆休みにでも撮影を楽しんでくださいね。
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国鉄永年勤続効績者表彰のセイコー・スーパー

2014年08月01日 22時54分31秒 | インポート

Img_476885暑いですね。作業はしていますが、UPはサボりました。初期のセイコー・スーパーを復活させています。スーパーはセイコーが1950年に発売した秒針がセンターにある本中三針の初めての機械。戦中の航空時計なども秒針がセンターにありますが、これは歯車を追加してセンターに持って来たもの。このモデルは2003で1955年6月に製造されて国鉄の永年勤続効績者に総裁表彰記念として授与されたもの。国鉄退職者は多いので、このモデルも比較的良く目にしますね。過去に私も2つ入手しています。製造年と同じお歳で鉄ちゃんには打って付けの個体ですね。画像編集ソフトが不調のため、途中まで画像サイズは大き目でUPします。
Img_477068 上の時計は私が愛用中の全く同じ(国鉄)モデル。但し製造は1954年1月です。すべて分解洗浄したところ。文字盤にカビ汚れが目立つのは惜しいところ。別デザインの新品文字盤は所有していますが、これも歴史なのでこのまま使用します。不動の原因はゼンマイ切れ。それによって早くに使用を止めたようで、機械の摩耗は少ないです。但し、松ヤニのように固着した油が気になりました。どんな油を使用したのでしょう。


Img_477175超音波洗浄だけでは固着した油は落ちないので刷毛で洗浄しました。この頃のゼンマイは鋼製なので切れやすいのです。手持ちから交換してあります。香箱と二番車をセットしたところ。









Img_477275最近はブログをご覧頂いている方から腕時計の組立が出来るようになりたい。とのお言葉も頂いています。情熱があればやられたらよろしいと思いますが、サイズがカメラの比ではありませんので、かなりの根気は必要だと思いますよ。 この頃はまだ工作精度が良くありませんので、三角の受けの3つのホゾが中々合ってくれません。無理をすると歯車のホゾを折ってしまいますから甘締めで慎重に追い込んで入れました。



Img_477365 天真の摩耗は少なめで快調に目覚めました。特徴的に大きなリュウズのローレットも摩耗は少ないので実使用も少なめだと思います。ケースは軽く研磨しただけで良好。風防は黄ばみはあります。サイズのあう新品もありますが、ドームの形状は、やはりオリジナルが良いので再使用とします。





Img_477421 針の金メッキが腐食気味ですので軽く研磨をします。メッキが薄いので、ほどほどで止めないと真鍮地が出てしまいます。出たらメッキをしますけど。









Img_477557 文字盤に針を着けました。針がドーム状に曲がっていますので、針同士やインデックスと干渉しないように注意をします。












Img_477635 組んだままで調整なしで測定すると+75秒程度と進み加減です。油切れ状態で歩度調整を繰り返したのかもしれません。










Img_477751 ベルトはモレラートをチョイスしました。ベルトの規格は16mmですが、ケースのラグ幅は15.5mm。当時の規格は良く知りませんが、中途半端な規格があったのか? それともインチ? 6.1も変ですね。私の愛用個体のラグ幅を測定すると15.85mm。このぐらいなら16mmのベルトは全く問題ありません。やはり、ケースの仕上げ精度の違いでしょうか?




Img_477864 合わせてみるとこんな感じです。まぁ、似合っているんじゃないでしょうか。











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2つ並べた画像。左の秒針は私の好みで茶に塗装してあります。精度的にはそこそこですが、充分実用に耐えます。

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