今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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SEIKO スピードタイマーUFOの巻

2016年05月19日 13時09分41秒 | ブログ

PENのご依頼が少ないので、腕時計のご常連さんから送られて来た時計を2つやります。どちらもセイコー・スピードタイマーですが、現在では非常に人気が高く、オークションなどでは高値となるモデルですが、それだけにニコイチなどの個体も多いのです。このモデルは6138-0010で通称「UFO」とか呼ばれているようですね。時計機能としては歩度の狂い以外は問題は無いと思いますが、クロノ系のストップウォッチ機能が正常に作動しません。まず、問題は秒針の発進・停止をする第一ボタンの動きが悪く、押し込むと戻らないこと。当初は汚れやパッキンの不良固着と思ったのですが・・

作動不良はそれだけの問題ではないようです。ボタンと作動カムが同調していません。また、画像のように作動レバーバネが正規ではなく、太いピアノ線で作られています。何かありそうですよ。

 

卵型の特異な形をしたケースですね。空飛ぶ円盤に似たいるところからUFOと呼ばれるのでしょうね。海外のマニアもそう呼んでいます。大型で重い時計ですし、当時の若者が使った時計ですから傷だらけの個体が多いですね。

特にベゼルの傷はひどいです。ベゼルは研磨しろも殆どありませんから、すべての傷を取り去ることは不可能です。イーベイなどではリプロ品も出回っていますが・・

 

腕時計のオーバーホールの場合は、先にケースとベルトを仕上げます。機械が完成すれば、すぐにケーシングが出来るからです。で、軽研磨をしておきました。卵型のケースに同心円のヘアーラインを入れるのが難しい・・

ベルトは貴重なオリジナルが付いていますが乱暴に扱ってジョイント駒が捻じれています。それらを修正してバックルを点検すると・・あれ、なんで左側のバネ棒が盛り上がっているの?

 

特に規格外の長いバネ棒を付けてあったということでもないようです。バックルの形状を修正して。

 

最後に仕上げ研磨をしますけどね。ヘアーラインを入れ直して超音波洗浄をしたところ。

 

問題のボタンを検証して行くと・・あれ? 2つのボタンが違うじゃん。画像では見にくいですが、トップ面の形状が、右はフラット、左は大きく窪んでいるのが分かります。ということは、別の部品に交換されたためにケースパイプとボタンの内径が合わずに固着した? ということではないのかな? レストアは推理。

 

巻芯がペンチで銜えられて、しかも曲がっていますよね。何か嫌な予感がする個体です。

 

気を取り直して洗浄後に組み立てをして行きます。

 

 

切換機構を注油しながら組んで行きます。

 

 

香箱車や輪列をセットして行きます。中央がこの機械の胆。秒クロノグラフ車でクラッチを内蔵しています。この時点では問題に気が付いていません。

 

作動レバーバネですが、右が正規の純正品で左がやっつけ品。ピアノ線で太さも異なり、形状も違いすぎます。これでは正確なボタン作動が出来ませんので純正品と交換します。同じ線径のステンレスばね線で作れば、そんなに難しくないと思うのですけどね。

元々、この個体はクロノボタンの作動が不良なのですが、まず①ボタンの復帰不良②作動レバーバネが正規品でないための不具合の他に、③画像右側の作動レバー(爪)が中央の作動カムを正確に押さない。という不具合もありました。原因は、作動レバーのカシメが浮いてクリアランスが過大のため正確な動きが出来ないというものです。

ポンス台で再カシメをして作動カムが正確に作動するようにします。

 

 

 メカの組立が終わって作動テストをしてみると・・通常、発停(第一)ボタンを一度押すと秒針がスタートして、もう一度押すと停止をしますが、この個体は停止をせず、常に動き続けてしまう。これは、⇧の方であった「秒クロノグラフ車」のクラッチが切れていない状態。ホゾの摩耗のためか、組んだ時にアガキが大きいなぁとは思ったんですね。で、どうするか・・

 秒クロノグラフ車のホゾを受ける穴石(中央のルビー)の位置を下げて、結果的にクラッチを切れ易い方向に調整をすることで解決しました。

 

上部にある水平のレバーは分躍制レバーと言って分クロノグラフ車をひと歯ずつ送るように規制していますが、調整は下の左窓に見える歯車の歯が3枚対称に見えれば調整は正常ですが、この個体は調整がずれていました。

カレンダー機構を組み立てて行きます。この部分の設計はオーソドックスで、部品点数も非常に少ないのです。

 

文字盤をセットして針を付けます。ふぅ、6139より1つ多い。帰零レバーを押しながら針を0時にセットします。

 

研磨をしておいたケースに機械を入れます。最後は自動巻機構を取り付けます。伝エ車の一部が腐食していますが噛み合い面は辛うじてセーフ。

 

最後に回転錘を取付けて組立完成。

 

 

問題のある個体に当たるとブログが長くなっちゃうよね。しかし、書かないと理解して頂けないしね。研磨してSSベルトを取り付けましたが、片方のバネ棒が外れていたので気が付きませんでしたが、このベルトは私のように腕の細い人間でもきついです。こんなに大きくて重い時計をする人が細すぎる感じですが、70年代のコマが大きなデザインですから、1コマ抜かれると極端に短くなりますね。たぶん、普通の体格の方には合わないと思います。コマを探してください。ということで、完成してみると、色々な問題を抱えた個体で、それに嫌気がさして手放したのではないでしょうかね? しらないけど・・

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


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2 コメント

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Unknown (カオル)
2016-05-19 19:14:11
本当に違うボタンですねU+1F4A6
バネの太さも倍ぐらいあるような…。
素人ではないけど雑な感じの修理ですね。
もうひとつのやつも心配になってきました(ーー;)
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Unknown (カオル)
2016-05-21 10:00:55
本当に修理は推理ですね。
ありがとうございました。
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