明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1782)長崎県の放射線観測データ偽造の背景に新規制基準による事故軽視がある!

2020年03月23日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1800)

守田です(20200323 09:00)

長崎県で放射線観測データが2年間も偽造されていた・・・

3月19日の報道によると長崎県の環境保健研究センターが実施している大気中の放射線量などの測定で、1人でこの仕事を任されていた主任研究員(36)が測定データの分析結果を偽造していたことが明らかになりました。
データは九州電力玄海原発から30キロ圏内にある長崎県松浦市なで4市で、携帯型測定器を使って計測されたものの、この研究員が「データ分析がうまくできなかった」ことから、過去の数値を転用するなどして上司に報告していたそうです。
2017、2018年度の2年間で452件行われた測定のうち、312件の分析結果をねつ造があったとか。うちわけはサーベイメータによる空間線量率測定140件、空間積算線量64件、環境試料放射能分析156件だそうです。

どうしてこんなひどいことが起こったのか。直接的にはこの主任研究員があまりにモラルを欠いていたことが要因です。
しかしこの研究員は「計画的に仕事を進めるのが苦手だったので、途中で分析を放置し、急場のしのぎで繕ってしまった」と語っています。そんな「主任研究員」に計測と分析の全てを任せてチェックが入ってなかったことも大きな要因です。
不正の発覚も、データチェックからではなく、この人物が今年1月、出張の報告書に上梓の印鑑を勝手に押していたことが発覚したことからだそうです。仕事上の不正が重ねられ、今年になってようやくデータ改ざんが分かったのです。

明らかにそこに現れているのは、玄海原発30キロ圏内で放射線測定を行っていくことの意義が、センターそのものにきちんと把握されてなかったことです。
だからモラルを欠き、仕事もきちんとできない人物1人に、放射線計測と分析が丸投げされ、しかもデータ改ざんが本年1月まで発覚しなかったのです。
僕はそこには新規制基準のもとで起こりうる原発事故があまりに小さく見積もられこと、事故が軽視されていることが大きな影を落としてると思います。


データ改ざんを伝えるNBC長崎放送 20200319


新規制基準が生んだ事故軽視の影のもとで・・・

その点で思い出すのは川内原発が、およそ2年間続いた「原発ゼロ状態」に終止符を打つ形で、再稼働に漕ぎ着けた過程での、伊藤祐一郎鹿児島県知事(当時)が再稼働に同意した記者会見での発言です。(2014年11月7日)
伊藤元知事は新規制基準を非常に高く評価した上でこう言ったのです。「もし福島みたいなことが起っても、放出量は5.6テラベクレル。そして5.5kmのところは5μシーベルト。もう、命の問題なんか発生しないんですよね。」
ちなみに毎時5μの放射線はかなり危険なレベルですが、いまはそれは横におくとして、この発言の背景を読み解きたいと思います。

 (なお伊藤知事の発言については以下の資料を参考のこと。哲野イサクさんが会見動画を保存し文字起こしもしてくださっています。)
 <参考資料>川内原発再稼働“同意”記者会見 ―伊藤祐一郎鹿児島県知事 2014年11月7日
 http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/restart/sendai/restart_sendai_ito_20141107.html

2013年7月から適用された新規制基準は、この間、繰り返し述べているように「シビアアクシデント」=過酷事故を前提としたものです。放射性物質が原子炉から漏れて環境中に出てしまう事態を容認しているのです。
ただし漏れ出す放射性物質の量を減らしなさいとなっている。セシウム137だけで見積もっているのですが、福島原発事故で出たセシウム137を1万テラベクレルとした上で、その100分の1、100テラベクレル以下に抑えなさいと書かれているのです。
しかも「格納容器破損モードにおいて」と書いてある。放射性物質を閉じ込める最後の砦の格納容器が壊れたときに、漏れ出す量を100テラベクレル以下にせよと言うのです。

 (これは新規制基準の中の「実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関わる審査ガイド」14ページに書かれています。)
 https://www.nsr.go.jp/data/000213306.pdf

シビアアクシデントは、設計段階での想定を突破された事態です。しかしそのときの放射性物質の漏れを100テラにコントロールできるならそれはもう想定内です。
いや格納容器がどう壊れるかすら分からないのに対処できるとするのがおかしいし、さらにその量を福島原発事故の100分の1にできるというのはあまりに根拠がない。
そもそも福島原発はまだ放射線値が高くて内部に人が入れません。どこがどう壊れてだからどれだけの放射性物質がどのように出て行ったのか、実証できない段階なのです。それでどうして対策がたてられるのか。


関西電力による新規制基準の下での対応の説明(同社HPより)
これでどうして漏れ出す放射性物質を100テラ以下にできるのか、理解不能。

にもかかわらず九州電力は「5.6テラベクレルに抑えます」と言ったわけですが、一体なんの根拠があるのでしょうか。
しかしこれが独り歩きしだし、伊藤元知事の「もう、命の問題なんか発生しない」という発言につながったわけです。
「もう福島の事故の100分の1以下の事故しか起こらない」・・・この新たな安全神話が放射線計測の仕事を著しく軽視することにもつながっているに違いないと僕は思います。

分析を続けます!


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