明日に向けて

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明日に向けて(1600)あたりまえの幸せを取り戻すための経済学―社会的共通資本に学ぶ(1)

2018年10月18日 19時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181018 19:00)

7月より「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学 社会的共通資本勉強会」を始めました。主催は市民環境研究所/Peaceflagプロジェクト/たねまきプロジェクト/すみれやの4団体です。
すでに3回を終え、10月24日に4回目を行います。詳しくは以下の記事をご参照ください。

明日に向けて(1597)「社会的共通資本」のアイデアこそが世界を救う!(10月24日水曜 勉強会へ)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/935c1143fc9ec37a98c63a2592ea394a
https://toshikyoto.com/press/2907

この勉強会と並行しつつ、そこで語った内容を記事化していこうと思っています。長い連載になりますがどうかお付き合いください。

● 社会的共通資本勉強会を進めるにあたって

市民がつながる夜間学校 「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学 社会的共通資本勉強会」
7月17日 市民環境研究所にて

今回から社会的共通資本についての勉強会を始めますが、最初に勉強会への呼びかけの文章をご紹介します。主催団体の一つのPeaceflagの井崎敦子さんの手によるものです。

「経済学者・宇沢弘文先生をご存知でしょうか。私は最近教えていただきました。最初、サンタクロースのような風貌に驚きました。今は宇沢先生の著書の中でも一般向けのわかりやすいものを読み始めたばかりです。社会的共通資本←この段階で難しい。
けれど読んでみると、あれ?なんだか読める。そして、ずーっと考えてきたことの答えが書いてあるような気持ちになってしまいました。
学ぶこと、思索すること、日々の暮らしとは縁遠いようですが、普通の市民がやっていかないと、なんかこの偏った社会は全然健全にならない気がします。高学歴の人が企業のトップも官僚も政治家も独占しているからおかしなことになるんじゃないだろか?
小学生時代を思い起こせば、人気があったのはガリ勉くんじゃなかったよな。子供は敏感に人を見る。学歴だけで独占しないでよね、社会を。
というわけで、市民のための夜間学校、まずは経済学から。宇沢先生の最後の教え子、守田敏也さんを講師にお迎えしてスタートします。」

この文章、とてもいいなと思いました。また宇沢先生もきっと喜んでくださるに違いないと思います。宇沢先生はこういう感覚を喜ばれる方です。

● 初めての方には『人間の経済』がお勧めです!

その宇沢先生に僕は2005年から2009年まで同志社大学社会的共通資本研究センターに客員フェローとして拾っていただき親しく指導をしていただきました。
宇沢先生はある程度近づくととても怖い先生でもあって、僕はたくさんのことを教わりながら、一方でどんなに叱られたか分かりません。指導する時のとても厳しい一面を持った方でもありました。
でもいまはそれも含めて師としての宇沢先生の深い温情に心の底からの感謝の念を深めるばかりです。宇沢先生の志を受け継ぐ一人として今回の勉強会も頑張りたいと思っています。

さて学習会の初めに宇沢先生の本を紹介しようと思ったのですが、とてもたくさんあって「まずはこの1冊」に何をあげれば良いか決めかねました。でも最近、新潮新書から『人間の経済』という本が出ていることを知りこれをご紹介することにしました。
素敵な序を宇沢国際学館の占部まりさんが書いています。宇沢先生の娘さんです。
ここには講演やインタビューが1冊の書物にまとめられています。先生自身がお亡くなりになる直前まで出版社の方と相談して編み上げたものなのだそうですが、宇沢先生のインタビュー記事はとても分かりやすくて面白いのです。
書き下ろされた書だと先生は経済学者ですからどうしても学問的な話が出てくるので経済学の素養のある人でないと分かりにくい面もある。
もちろんそれもとても大事なのですが、この書は昭和天皇にお会いしたときのエピソードから入っていて読みやすいのです。初めての方に特にお勧めです。

あと「社会的共通資本としての教育」について論じた『日本の教育を考える』はぜひ読んでみて欲しい本です。先生の旧制一高の時のエピソードが書かれています。
なんと第二次世界大戦下の東京の学校で毛沢東の『持久戦論』という「中国人民がいかにすれば日本帝国主義を打ち破れるか」を論じた書が回し読みされていたのだそうでとても驚かされる本です。
この他、『経済学と人間の心』も読みやすいし、心温まる話が多いのでお勧めです。

● 宇沢先生とノーベル賞

宇沢先生は世界的に有名な方で、先生の先生や同僚、教え子からたくさんのノーベル経済学賞受賞者が出ています。先生も毎年ノミネートされていて、社会的共通資本研究センターにもノーベル賞発表の時期になると必ず記者が近づいて来ました。
中には「宇沢先生をとても尊敬していて、これから社会的共通資本について学びたいと思っています」などという方もおり、センターにある先生の本を差し上げたのですが、発表がなされ、未受賞に終わると瞬く間に去って行かれました。

宇沢先生が受賞されなかったのはノーベル経済学賞のミステリーとも言われていたそうですが、どうもノーベル委員会は反政府運動へのコミットなどを嫌うらしいとも聞いたことがあります。
それで宇沢先生が成田空港をめぐる闘争の調停に奔走されたことなどが受賞にいたらなかった理由ではないかというのですが、真相はまったく分かりません。
これらについて先生自身は何もおっしゃられませんでしたが・・。
(ちなみに2018年の経済学賞を受賞されたノードハウスも宇沢先生の影響を受けられていたそうです。経済学者の諸富徹さんが講演でご指摘されていました)

続く

社会的共通資本勉強会第4回
10月24日(水) 午後7時から9時
市民環境研究所にて(京都市叡山電車元田中駅から5分)
https://www.facebook.com/events/589590494805103/

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