明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1419)NHKドキュメント『原爆死 ヒロシマ 72年目の真実』が突き出したものー原爆の非人道性が再度、明確にされた!

2017年08月28日 08時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)
守田です(20170828 台湾時間08:00)
 
台湾に来ています。
今回は芸術家の友人夫妻とともに故宮博物院やアマミュージアムを訪れることと、日本軍「慰安婦」問題の犠牲者のおばあさんを訪ねることが目的の旅ですでに3回目の朝を迎えています。前回の台湾への旅は昨年末、おばあさんたちの足跡を記した「アマミュージアム」が開設されたときでした。オープニングセレモニーに招待してくださったのですが、このとき、台湾のアマとしてはただ一人出席してテープカットなどにも参加してくださった陳蓮花(チェンレンファ)アマも、今年になって亡くなられてしまいました。今日はあとわずか2人になったおばあさんを訪ねてきます。良い時を過ごしてきます。
 
さて、このところ「明日に向けて」でタイトルに掲げたNHKドキュメントの文字起こしを3回にわたって行いました。画期的な位置があると思ってのことです。
またこれに続いて2012年8月6日にやはりNHKドキュメントで放映された「黒い雨」に関する番組の文字起こしも再掲しました。黒い雨の調査がアメリカによって握りつぶされていたことを告発したものです。これをも踏まえて、今回の番組に関する僕なりの解説を試みたいと思います。

今回の番組で特筆すべきことは、原爆の残虐性の中で、これまで明らかにされていなかった特有の火傷のひどさが浮き彫りにされるとともに、アメリカや日本政府が認めてこなかった内部被曝の影響がビッグデータの解析から裏付けられたことです。
この内部被曝の絶大な影響については、これまで肥田舜太郎さん、矢ケ崎克馬さんなど、多くの方が告発を行なってきました。中沢啓治さんの名著『はだしのゲン』でもこの問題が明快に描かれています。原爆投下時には広島にいなかった兵隊のおじさんが、遺体処理等をしているうちに下痢を起こし、髪の毛が抜け、やがてガタガタ震え出して亡くなってしまうことなどを描くことを通じてです。
 
番組が扱ったデータは広島原爆投下の朝からの人々の行動の軌跡です。投下前、多くの人々が続々と広島市に出勤してきていました。その上にアメリカ軍は原爆を落としました。広島市はその後の人々の行動を調査していました。番組はこれら55万人以上の記録のすべてをデータに落とし込み、コンピュータグラフィックで原爆投下前から投下後の人々の動きを可視化しました。そのことで多くの事実が浮かび上がってきました。

番組は50分あり、文字起こし量も長いので3回にわけて掲載しましたが、この分割は、番組が主に3つのことを扱っていたことに沿ったものでもあります。
ここにも番組が掲載されているネット上のアドレスを記しておきます。
 原爆死 ヒロシマ 72年目の真実 (2017年8月6日 放送) 
 http://www.dailymotion.com/video/x5w6j3i
 
扱われたのは一つ目は「圧焼死」の問題です。
原爆は多くの家屋をたたきつぶし、崩壊させたため、多くの人々が下敷きになりました。身動きが取れないままの人々に火がまわってきて「圧焼死」するという惨劇を多数もたらしました。番組は実際に爆風でつぶされ、20人の女子学生が圧焼死した広島女学院を舞台にこの問題をレポートしました。
自らはがれきの中から這い出すことができて、友を助けようとしたものの、教師にうながされて泣く泣くその場を後にした女性が、焼け死んだ友を嘆き悲しむシーンが収録されています。
 
二つ目には新たに明らかになった原爆特有のやけどの問題です。
今回、原爆による猛烈な光線によって血管内部の水分が沸騰し、水蒸気を発生させて血管を熱破裂させていたことが告発されました。
このため血管の周囲の組織がダメージを受けて死滅。人々は皮膚が剥がれたまま2~3日かけて命を失っていきました。
さらにこの時期を生き延びた人々も、治りにくい深い火傷の傷から細菌が侵入して感染し、高熱と痛みにさいなまれながら一週間後には亡くなっていきました。いずれも長い苦しみの末の悶絶死でした。
 
番組はこれらの火傷が爆心地から500mから1.5㎞の「死のドーナツ地帯」とでも呼ぶべき地域に集中していたことも明らかにし、当時、こうした火傷患者が運び込まれた旧府中国民学校(現府中小学校)を舞台にレポートを発しています。
広島原爆で最も犠牲になった年齢層 は10代前半の少年少女たちでしたが、この救護所でも亡くなった方の中で最も多かった年齢層が14、15歳だったそうです。
この場に当時12歳で救護にあたった女性が登場します。彼女は少し年上の子どもたちに「家族にここにいることを伝えて」と言われながら、とても伝えるすべなどなく、その場しのぎの答えしかできなかったそうです。
 
「ごめんね。私なりに精一杯じゃった。ごめん。なんの力もなかったあ。ごめんなさい。すまなんだね。ごめんね」と彼女は号泣するのですが、なぜ彼女が謝らなければならないのでしょう。
目の前でたくさんの同世代の子どもたちをなぶり殺しにされ、助けようとして助けられないもどかしさに終生苦しめられてきたのであろう彼女もまた、原爆のむごさの犠牲者に他なりません。謝るべきは、償うべきは、原爆を投下したアメリカ軍とアメリカ政府、およびその関係者たちです。
私たちは原子爆弾のこうしたひどさをきちんとつかみとり、世界に発信していかなくてはならないと、激しく嗚咽する彼女の姿を見ながら、再度思いました。
 
この二つのことだけでも、核兵器がまったく許されざるものであることは明らかですが、この点で触れておきたいのは本年7月7日に採択された核兵器禁止条約の画期的な位置性です。同条約は核兵器の使用だけでなく、核兵器を使った威嚇をも禁止対象に上げました。広島・長崎に実際に原爆を投下し、そのことをこれまで一度も謝罪もしていないアメリカを始めとする「核クラブ」の国々のさまざまな妨害をはねのけ、戦後72年目にしてようやく締結されました。
 
ご存知のように日本政府は条約締結交渉に参加せず、条約そのものに反対しました。核兵器保有を戦略としているアメリカにまたもべったりと追従したのです。しかし一度も原爆投下を謝罪もしたことのないアメリカがいまの段階で参加することなどありえないことは明らかです。もし日本政府がアメリカに本当に参加を促すつもりがあるのであれば、日本は政府として、非人道的な核兵器の投下に対し、アメリカに謝罪を要求すべきです。
本来、日本中の都市への空襲も、沖縄での地上戦も、軍人と民間人を分けずにおこなわれたので、戦争犯罪として裁かれるべきですが、こうした一連のことを問い返すためにも、日本からアメリカの戦争犯罪を問い、謝罪を要求する必要がある。そしてそれこそが世界の平和の可能性を広げるのです。
 
僕は今、台湾にいて、今日は日本軍性奴隷問題の被害者のおばあさんを訪ねてきますが、日本政府に謝罪を求めた各国のおばあさんたちが異口同音に述べていたのは「二度と、若い子たちが同じ目に遭わないため」でした。そうです。もう二度と惨禍を繰り返さないために、日本政府は戦争犠牲者に誠実な謝罪と補償を率先して行なうべきであり、同時にアメリカに対して謝罪を求めるべきなのです。
 
この点を踏まえて、番組後半で明らかにされた内部被曝のデータ的裏付けの意義について、次号で述べていきたいと思います。
 
続く
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