能率技師のメモ帳 中小企業診断士&社会保険労務士のワクワク広島ライフ

マネジメント理論を世のため人のために役立てるために・・・経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

経営の失敗学 地雷排除が行き過ぎた結果、戦略が尖っていない・・・そんな会社が増えているように思います

2018年07月23日 | 本と雑誌
ビジネスは、失敗の山。
確かにそのとおりです。

友人の経営する会社でも、毎月1日には、必ず赤字から始まります。
事務所の賃貸料、電気代や通信費、秘書の給与や社会保険料、交通費にコピー機のレンタル代・・・かなりの額の固定費。

案件や依頼が持ち込まれ仕事が発生・・・徐々に売上が上がり、BEP、損益分岐点を超え、そこから売上総利益が積みあがっていきます。

しかし、受注、仕事がなければ、赤字が積み重なり、累積赤字・・・債務超過に陥っていきます。

また、利益とキャッシュフローは別物で、資金繰りのマネジメントをしておかないと黒字倒産ということもあります。
そうです…会社はつぶれるように出来ており、ビジネスも基本、失敗の方が多いのです。


経営の失敗学
菅野寛著  日経ビジネス文庫  850円+税

著者は、BCG/ボストンコンサルティンググループ出身で、現在は早稲田大学ビジネススクール教授。

同書で「必勝法は存在しないが、失敗は回避できる」と喝破します。
失敗本では、野中郁次郎さん他がまとめた名著「失敗の本質」や畑村洋太郎さんの「失敗学のすすめ」などがあります。

けれども、人々が求めるのは、成功本です。
華やかだし、勇気や希望をもたらしてくれる成功本の方が前向きで受け入れられやすい傾向にあります。

しかしながら、ユニクロだって、ソニーだって、エンロンだって、その裏では、失敗の連続・・・。
ファーストリテーリングの柳井さんの書かれた「1勝9敗」というタイトルが、ビジネスの厳しさを物語っています。

同書では、第1部「失敗から学ぶ」と第2部「陥りがちな失敗のパターン」の二部構成になっています。

大きな学びとなるのが、第2部の失敗のパターン。
当たり前のこととアタマでは分かっていても、ついついやってしまう行動が、きれいに整理されています。

大きく8つのパターン・・・実務家として、そして学者としての視点でうまく分類されています。

パターン1 考えるアプローチ、頭の使い方がずれている
教科書の理論をそのまま使ってしまう 分析すること自体が目的化している・・・

パターン2 戦略の筋が通っていない

パターン3 顧客が求めていない価値を提供してしまう
バリュープロポジションを間違える

パターン4 定性的なロジックの詰めだけで満足して、定量的な数字の詰めが甘い
楽観値だけでバラ色の戦略を立ててしまう 数字を幅でとらえない・・・

パターン5 リスクや不確実性に対処しない
予定調和を信じて一つのシナリオに突き進んでしまう


パターン6 地雷排除が行き過ぎた結果、戦略が尖っていない

パターン7 実行に必要な徹底度が足りない
アクションプランが曖昧 whatが定義されていない 結果をきちんと測定しない・・・

パターン8 実行者の意識・行動を変えていない
強い意志と覚悟が足りない モチベーションの段階で負けている・・・

個人的には、「パターン7・実行に必要な徹底度が足りない」「パターン8・実行者の意識・行動を変えていない」あたりに弱みを感じているため、思わず納得です。

経営コンサルタントの波頭亮さんも「執行力」の重要性をされています。
PDCAサイクルでいうと、アタマを使う「P(plan)」ら利き足が置かれがちですが、
成果、実績に結びつくのは「D(do)」の部分。

著者は述べます。

経営に勝利の法則などいうものは存在しないが、失敗はある程度パターン化できる。だが、多くの企業がこの分かり切ったパターンにはまって自滅している・・・。

次に地雷を踏むのは・・・???

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