「コミュニティデザインの時代 自分たちで「まち」をつくる」
山崎亮著 中公新書 860円+税
今、コミュニティデザインと言えば、山崎亮さんというぐらいの著名人。
もともとは、建築、公園、造園などのハードの専門家だった山崎さん、
それが今ではソフトの最先端ともいえるコミュニティデザイナーの第一人者です。
このコミュニティデザイナーという呼称は、ご本人もあまり意識されていないようですが、
人口減少の続くわが国にとって、とても大切な役割があるのではないかと考えているところです。
同書の中に、日本の適正人口という指摘があります。
空想という前置きで、それは3500万人ぐらいではないか?という指摘です。
鎖国をしていた江戸時代、日本の人口は3500万人程度・・・。
それがいまでは1億2000万人。ほぼ3.5倍になっているわけです。
この100年で急増した人口膨張・・・その反動としての少子高齢化・・・。
このままいけば日本の人口は6000万人程度になるのではないかという予測もあります。
そういえば、街中で遊ぶ子供たち(やんちゃな悪ガキ)の姿がめっきり減り、商店街も閑古鳥が鳴きシャッター街化したエリアも多々あります。
子どもたちの塾通い、室内でゲームプレイという要因もあるのでしょうが、とにかく人の絶対数が減っているのではないかという印象です。
つまり、街・町をそのままにしておくと、ますます人が減り、コミュニティが消えていくことになります。
ここで、今までのフレームを再構築し、少ない人口にマッチした街・町を再創造する・・・。
これがコミュニティデザインが必要になってくる背景ではないかと思います。
目次
第1章 なぜいまコミュニティなのか
第2章 つながりのデザイン
第3章 人が変わる、地域が変わる
第4章 コミュニティデザインの方法
コミュニティの再構築の主役になるのは、外部の専門家ではなく、あくまでそこに住む住人。
このコンセンサス、合意を取り付けるのは大仕事です。
地元行政でもなかなか難しいこの大仕事を推進するのがコミュニティデザイナーの仕事。
本当に重要かつ大変な仕事です。
わたしもNPO関係の支援をしているのですが、
共通の理念を持つNPOでも、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちの集まり。
そこから、同じ方向性に向ってまとめあげていくことは難易度の高い仕事です。
「良い」「悪い」というロジックだけでは前に進まず、
「好き」「嫌い」といったセンティメントな議論、長老やベテランの保守性・・・
よくもまあ、これだけ多様な意見や考えがあるものだと感心したりします。
ビジネスの世界で仕事をする自分にとっては、驚きと発見の連続という場面に直面することになります。
ワークショップの技法やファシリテーション、アサーションなどの技術はあるのですが、
これを現場で推進することは大変な熟練を必要とします。
コミュニティデザインに興味を持たれた方には、入門書として最適な一冊だと思います。
山崎さんの語り口調の記述が、分かりやすい同書です。