にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【映画】『ゆずり葉の頃』

2015年06月20日 | MOVIE
『ゆずり葉の頃』(2014年/日本)
監督・脚本:中みね子。
出演:八千草薫。仲代達也。風間トオル。岸辺一徳。

戦後まもなく復員してきた夫は一人息子を残して病死。和裁を覚え、着物の仕立てを生業に息子を育てた市子。息子は大きくなり今では商社の海外勤務。市子は今でも着物の仕立てをしながら一人暮らしをしていたが、ある時「ある絵」を追いかけて軽井沢へと旅立つ。母の不在を知らずに海外勤務から一時帰国した息子進は母の家を訪ね、母を探しに同じく軽井沢へと向かう。市子が追い求める絵は宮謙一郎という画家の「原風景」。展示されている絵は日により入れ替えされると聞き毎日美術館へ足を運ぶ市子。しかし市子が目にしたいと思っている「原風景」は個人所有で展示されることはないことがわかる。がっかりする市子に思いがけない出会いが訪れる・・・。

自ら何かを選ぶことなど出来なかった時代。与えられた場所で実直に生きてきたであろう市子が、遠い昔「本当にやりたいことをやり遂げるんだ」と言った少年の夢の結晶である一枚の絵に自らの姿をみつけ、ぜひとも自分の目で本物の絵を見たいと思う。淡い恋の思い出、これから終の棲家を探す決心。燐とした一人の女性の姿に心が暖かくなる。ゆずり葉は新芽が出ると葉がまだ緑のうちに地面に落ち、地面で枯れ、地に還る。生き方として本当に潔い。そう思います。この市子というキャラクターは八千草さんへのあて書きだそうで、八千草さんだからこそ出来る役ですね。絵を探す旅、その映画の映像がすべて絵画のように美しくて、場面、場面すべてが背景と役者さんたちがマッチしている。きれいな映像の映画です。
美しいシーンの一つに市子が湖面にあめ玉を投げ入れ、湖にその波紋が広がるというシーンがあるんですが、今回監督の舞台挨拶付きということで聞けたお話の中にそのシーンのことがあったんですが、そのシーンの撮影にはとても苦労したとのことです。あのあめ玉・・・現実には小石なんだそうですが、それをカメラマン指示の場所へ投げ入れるのがみね子監督の役だったそうで、コントロールが悪くなかなかその場所へ行かない。そして一度投げ入れると波紋が消えるまで待たないと次の撮影が出来ないという状態で、本当に大変だったそうです。その苦労が報われる美しいシーンになっています。
舞台挨拶後、パンフレットにサインがいただけるということでいただいてきました。「古臭い映画でしょ」なんておっしゃってましたが、丹念に丁寧に撮られた素敵な作品です。決して派手な作品ではないですが、清々しい気持ちにさせてくれる美しい作品でした。
そうそう・・・そんなことないよって言われるかもしれませんが、私はこの作品を見ていてフッと喜八監督の雰囲気を感じる時があったんですよね。作風は全然違うハズなのにね。
舞台挨拶付きの回に行って中みね子監督とお会い出来て本当によかったです。映画の中の市子さんも素敵ですが、みね子監督も素敵な人でした。
シニア向けの映画と言われてしまえば、そうなのかな~って気がする作品ですが、「ゆずり葉の頃」までにはまだまだあるっていう人でも、ああ向かうには今どうすればいいのかな?なんて考えるきっかけになる作品でもあるんじゃないかと思います。


-2015.6.20 シネ・リーブル梅田-


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