経営者フォーラム 東京ランド株式会社

借金たっぷり真っ赤な赤字企業でも破産も倒産も夜逃げも無用です。一人で悩んでいないで私たちに相談してください。

第一章 諦めない思考と行動

2018年04月08日 | 倒産回避


1 自らの思考と行動から得た布袋製作所

消費低迷のあおりをうける

 機械製作工場を営むこの会社は、加工機械を製作していました。
 しかし、消費低迷のあおりで加工機械の注文がぱったりと途絶えてしまったのです。もともと苦しいながら経営を続けていたところに、あまりにも急な環境の激変があったために、適切な対処ができず、資金調達もままならなかったので、この会社は問題が起きてから半年後に二回の不渡りを出し、銀行取引停止となりました。

 当時、社長は病気で倒れていて、現在でもリハビリを頑張っています。指導者が不在であったことも不運なことでした。
この時の経営指揮者は専務で社長からみたら甥っ子で常務は現社長の息子です。

破産していない以上再起は可能

 一般に、機械製作会社は手形仕入が主な決済方法であり、銀行取引停止が事実上の倒産という定義になります。
しかし、銀行取引が停止になったからといっても、それは単なる破綻であり、「手形決済と言う方法が途絶えた」だけであり、破産と同じではないのです。

 破綻すると「事実上の倒産」という言葉でも分かるように、もう会社は存続できないと思われがちですが、「経営者フォーラム東京ランド」の認識では、まだ破産申立手続きが受理されていない以上、再建の可能性はあると判断し、破綻後の会社であっても応援します。

なぜなら、「裁判所を通じて法的手続きをしないと破産はできない」のです。
「破綻」と「破産」は、似て非なるものなのです。

 しかし、「事実上の倒産」となった布袋製作所に対し、銀行は破産をするよう迫ってきました。
布袋製作所の常務と専務は、取引先に不渡りを二回出して迷惑をかけた以上、破産しなくてはならないのだろうと考えました
何しろ、彼らにとって、いや、ほとんどの経営者にとって破産しなければいけない事態など初めてのことが多いのです。
またそれは、銀行取引停止という経営者の信用失墜なのですから、気が動転してもそれは仕方がありません。

 鬱状態になる経営者を私たちは大勢みています。
実直な経営者ほど人情味豊かですから、お金の論理と道徳的論理をすりかえられても抵抗することができず、「申し訳なさ」にすべてを投げ出してしまいす。

失踪・自死などがその例です。
ですから、このような危険のある相談者には生命保険の解約を勧めるのです。

一般に銀行や弁護士にとって、破産してもらう方が処理しやすいのです。
布袋製作所を切り盛りしていた専務と常務も当然、鴨葱(かもねぎ)状態で、地元の閻魔弁護士に破産前提で相談に行ったのです。

【ポイント】
 なぜ銀行が破産を勧めるのか。それは破産してもらうと銀行は不良債権処理がしやすいからです。

破綻した企業が破産しない状態で金融機関が貸付金の回収をしていくためには、未回収金額の一〇〇%~数一〇%を貸倒引当金として積み立てたうえで、法的な手順を踏んで回収作業をしなければなりません。

引当金は運用資金の負担にもなるし、手間と時間と、お金もかかるのです。
ですから、「手っ取り早く、破産してもらえませんか」なんてことを言ってくるのです。

不良債権の処理にはルールがあります。4つあるのですがそのうち3つに関して見ていきます。

① 「自己破産」
この手続きは債務者の費用で行われますから債務者が勝手に自己破産してくれれば銀行は楽です。
しかも税務署はすぐに無税償却に応じてくれますから税金を払わなくて済みます。

② 「債務免除」
銀行が債権を放棄する場合です。
貸したはずのお金を贈与したことにするよと言うわけですから、当然課税対象になります。
また株主などからの損害賠償請求の恐れもあります。
だから銀行は、ほぼ絶対にやりません。

③ 「債権譲渡」
債務者が破産してくれなければ銀行が行う一般的な処理はこの債権譲渡で、一定の手続きのより進みます。

【銀行の債権譲渡のメリット】
回収するために訴訟による勝訴を得る → その上で差し押さえる → 回収できなかったときにようやく未回収債権の無税償却が税務署に認められるのです。

これは手間がかかりますね、ですから銀行は早く自己破産してもらいたいのです。
しかし、それはあくまでも銀行の都合であり債務者が自己破産しないほうが自分の利益になると思えば自己破産する必要はありません。

実際、布袋製作所は自己破産しなかったために再起の糸口を見つけることができたのです。

 話を元に戻します。
専務と常務は、閻魔弁護士に倒産処理一切の権限をあずける契約をしました。
委任状を差し入れてしまったのです。

閻魔弁護士はそれを受け取り破産前提ですべての財産処分に関する権限を得ました。
閻魔弁護士は、まず「資産価値がある動産である制作機械類は売ってはいけない」と強く言ってきました。
制作機械類を売ってはいけない、というのは破産申し立て前提だからです。
破産手続きの次の担当者になる管財人に対して(管財人も弁護士)、債権者へ機械の売却代金を分配しなくてはならないのですから当然のことです。

「これですべてが解決した」と常務は安心したそうですが、二度の不渡りを出した直後で無一文だった彼らは、破算申立費用を支払うのは待ってもらっていたのでした。

 ですから、閻魔弁護士は受任通知を全ての債権者に出してはいませんでした。
出したのは大口債権者の数人にとどまりました。そのことこそが、私が彼らを救済できたきっかけとなったのでした。

不動産屋なのか? 弁護士なのか?

 布袋製作所は、地元地銀に八億円の借金があり、当然、会社以下社長個人と大地主の親戚の不動産はすでに抵当権がついていました。
ですから、銀行は競売という法的手続きで抵当権付の財産を処分できますから、すぐに回収可能でした。

 しかし、競売という処分では一般に自ら不動産会社をとおして買主を探しておこなう任意売却の価格をかなり下回ることが多いのです。

 競売になると、一般的に売主は競売(強制的な売却)に非協力的ですから、入札者はその物件についての情報を十分に知ることができません。
従って、入札者はそのリスクを含んだ低い価格で入札を行ないます。
一般に任意売却の場合は、売主は売却に積極的なので、十分な情報発信をするので安心して購入できますから適正な価格となるのです。

しかし、不動産会社の中には競売で落札したのち、瑕疵(権利関係などの問題点)を取り除き一般市場で売却し、その差額で収益を得るという商売があるぐらいで、かなりの差が生じているわけです。

 この場合では適正価格ならば二億円強になりますが、もし競売となった場合、最大でも半分の一億円弱しか回収することはできません。
ですから銀行としては、もしできることならば、なるべく任意売却してもらい、その後に自己破産してほしいという願いを持っていました。

 さらにこの会社には大地主の親戚が物上保証人(担保提供者)だけではなく4億円を根保証する連帯保証人として取られていました。そして、この連帯保証人は担保に取られていない多くの不動産も所有していました。

親戚の連帯保証人は担保に取られた不動産処分で二億円強回収されてしまいます。
おまけに、親戚の連帯保証人は会社が借りた借金のうち四億までの借入れに対しての連帯保証もしていましたから担保に入れていない不動産も競売の危機にさらされていました。

 私が支援に入って調査したところ、親戚の連帯保証人は大畑さんという資産家で、抵当権が付けられている土地以外に、抵当権をつけられていない不動産を多く所有していました。
売却すれば十億円以上になりそうので、銀行は大畑さんの4億の連帯保証を取り付けたうえで布袋製作所に追加融資をしたことがわかりました。

 銀行にいわれたとおり布袋製作所と大畑さんが土地を売却してくれれば、銀行は満額回収ができます。
もし、任意売却を拒んだところで、競売でほぼ満額を法的に回収することは可能なのです。銀行としては、大畑さんを連帯保証人として取った時点でビジネス的には完璧だったのです。

 この時、閻魔弁護士は大畑さんに所有する不動産の任意売却を強く勧めました。
また、会社の破産前に担保不動産を任意売却処分して売却代金で返済することも強く勧めました。

「すべての担保不動産を処分し、その後で破産手続きを進めましょう」といって手回し良く不動産屋を連れて来ました。
そして同意する間もなく査定を行なわせ、買主まで見つけてきました。

 それでいて、肝心な、素早くやらなくてはならない破産申立弁護士の義務として果たすべき通知は後回しにしていました。

 一般の取引先債権者は八〇名もいて、彼らが騒ぎ出せばとんでもない事態になることも予想されました。布袋製作所の役員たちは債権者に対して申し訳ない気持ちを強く持っていまましたから、彼らから罵倒されることは身を切るようにつらかったのでした。
ですから、もし弁護士や銀行の言うことを聞けば債務者にとっても罪滅ぼしになるのではないかと考え、破産のお願いをしたのでした。

 ですから、弁護士介入は銀行にとって都合の良いことばかりでした。
一般常識では受任通知を優先するはずなのに、不動産を「売れ売れ、売れ売れ」の一点張りで「早く売って、後は自己破産しろ」と迫ってきたのでした。

 不動産からの売却代金は皆銀行のものとなります。
その上で自己破産すれば優先したい一般債権者の債務は1円も払えずに踏み倒すことになりかねません。

なので、一般債権者を完全に無視した、このようなやり方はさすがに同意できなかったので専務と常務は思いどおりの解決にはならないと「経営者フォーラム東京ランド」に相談に来たのです。

 そして、彼らは言ったのです。
「閻魔弁護士変だよね。まるで不動産屋だ」
「不動産屋弁護士」

 このフレーズに私は思わず吹き出してしまいました。
「うまいこと言いますね。私も初めて聞きました。ユーモアのある言葉を思いつくんですから、まだまだ大丈夫ですよ」とお二人を励まし、和やかな空気で相談が始まりました。

「閻魔弁護士は銀行に有利だと思う提案ばかりですよ。このままではすべての不動産を売らされて一文無しになる。しかも取引先を踏み倒すことになって多大な迷惑を掛けます。会社はもう稼動していないし、従業員もすべて解雇してしまいました。この上、取引先を裏切るような行為になれば、私たちは死んでお詫びをするしかありませんよ。」
 布袋製作所の常務と専務は自分たちが楽になるためではなく、お世話になった周りの方々に対する迷惑を少しでも減らしたいと考えたので、私たちと出会うことができたのです。

 その後、布袋製作所の常務と専務は、「会社は、破綻はしたが、破産しない。そして、あらたに個人として再生を目指す」という方向で動き始めました。

 その上で、閻魔弁護士に「破産手続きを一時的に中止します」と通告しました。
すると、いままで破産手続きに関してはまったく無関心であった、連帯保証人の不動産を売らせようと働きかけていた閻魔弁護士は、今度は連帯保証人である大畑さん本人を直接、説得し始めます。

「大畑さんにいくら財産があろうが、布袋製作所が破産してくれれば、求償権の行使ができなくなるので、連帯保証人である大畑さんが土地を売却して弁済しても課税されませんよ。あなたも連帯保証の苦しみから解放されるし、財産もある程度残る。だから、迷惑を掛けられた布袋製作所に対し、破産の申し立てを勧めて欲しいのです」

 しかし、その話を聞き、弁護士として正しい指導なのか、私は疑問が生じました。
たしかに、弁護士にとしては、連帯保証人の被害を最小限に抑えるための当然の思考のように思えますが、私の考えでは、 「破産しても、しなくても、一手間掛ければ連帯保証人にかかる負担は同じだと思います。ただ、閻魔弁護士にとって都合のよい物語を思い描いただけですよ」と伝えたのです。
破産を止めたから生まれた宝物

 そして私は、布袋製作所の専務と常務の思いであった、一般債権者への返済原資としての資金を作る作業に入りました。

 弁護士の関与が取れた後、私は、専務に付き合いのあった中古機械売買業者に連絡を取ってもらい、売却処分を凍結されていた工場内にある機械やトラックの売却価格を依頼しました。

結果、予想以の上千三百万円という驚く値が付きにました。
そのことにより、それまで絶望により思考停止だった専務と常務は、私の経験から思い付いて言ったの「工場内の床に落ちている鉄片など売れますよ」と私の思考と行動を更に信用して行動しはじめたのです。

 今まで見向きもしかったゴミ、すなわち工場に落ちているくず鉄やビスなどの金属を拾い集めはじめました。
私が布袋製作所に出かけていった時には、工場は荒れ果てていましたが、それが綺麗に掃除されて見るとたいへんな量の鉄くずの山がトラックに荷台にできていたのです。

専務と常務はトラックの鉄くずを売りに行き、ゴミだと思っていた鉄屑が、本人たちが驚くような金額で売れたことで更に思考が働きだしました。

 それまで、ただあきらめて死を待つ病人のようにしていたのですが、今こそ「絶望は愚か者の結論」であることを理解したのです。そして、彼らは、他にもさまざまな手段でお金を作りだし始めたのです。

 破産申立てによってすべての財産を破産管財人の管理下におかれたら、これだけの自由になる財産を確保することはできなかったでしょう。
それだけではなく生きる気力も奪い取られていたことでしょう。

危ないところだったのです。
しかし今や「やる気さえあれば事業は再び立ち上げられる」、そこに気づいたのでした。
そして再起の思考と行動は幸運を呼び込みます。

「まだ仕事ヤル気ある」債権者である取引先の社長から電話がかかってきました。
そして廃工場になっている工場を売って欲しいとの申し出があったのです。
もう事業停止したのだから、ただのぼろ不動産だと思っていた工場そのものに買い手がついたのでした。

その取引先社長が新事業を開始で、その事業するために土地付きで工場も買い取る、という話がでてきたのです。
この話しには抵当権者である銀行の許可が要りましたが、競売で売れる予想の値段に上乗せして土地を買い取ってくれたのですから、これは銀行にとってもいい話でしたから当然OKが出ました。

当然ですが、売却したお金はすべて銀行が回収しました。
それが大きかったので、それ以上の督促はかかってこなくなりました。
銀行は布袋製作所から直に回収を予定した金額よりも、はるかに多くの金額を回収することができたからです。

 なぜ、その工場が売れたかというと、2つ理由がありました。
買ってくれた会社が受注した新事業を行なうのに、布袋製作所ぐらいの広い場所が必要、というのが理由のひとつでしたが、それ以上に、昔からの知り合いであったその会社の社長は布袋製作所の技術力を買っていたのでした。

その技術力の確保こそが、もうひとつの大きな理由だったのです。
布袋製作所の専務と常務はその工場で「個人事業主として」仕事を請け負い、十分な収入を得ることができるようになりました。

工場とその土地は失ったけれども、そっくりそのまま仕事は別の形で残ることになったのです。

 色々な思考を使って行動し、破産を選ばなかったことで、事実上の倒産であってもすべてを失わず、再起の糸口を掴むことができたのでした。

中古機械と屑鉄売却で捻出したお金は、取引先である一般債権者に一般債権額比率で分配して一部になってしまいましたが、一般債務者に返済することができました。

 もし弁護士や銀行の言いなりになっていれば、工場にあった機械と屑鉄の売却代金は一般債権者へ渡らず、すべて銀行の配当になっています。
「常識の呪縛」は実に恐ろしいものです。凡人を従順な奴隷に変えようとする試みはいたるところで行なわれているのです。
ですから、思考と行動は自分で選択し、その結果については、自分自身が責任を取る決意を持って布袋製作所のように再起してください。




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