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今日の筆洗

2019年06月27日 | Weblog

 一人の子どもをめぐって騒動が起きる。二人の女が、この子は自分の子どもだと譲らない。吟味したのが名奉行、大岡越前守。「子の手を引き合ったらよい。勝った方が親である」▼二人の女は子の手を引き合うが、その痛さに子は大声で泣きだす。泣き声に一人の女は手を放す。手を放さなかった女は勝ったと連れ帰ろうとするが、越前守が待ったをかける。「真の親なら子の痛みを哀れと思い、手を放すであろう。おまえこそ偽者である」▼実際に越前守はこんな裁きをしたことはないそうだが、「引き出し屋」なる最近の言葉に、泣き叫ぶ子の手を引く光景が浮かぶ。親の依頼で、ひきこもりの子どもを家から無理やり連れ出して施設などに入れる業者のことだそうだ▼強引な連れ出し方や数百万円単位の法外な料金に対し、各地で被害の訴えが相次いでいるという▼ひきこもる子を何とかしたい。苦しい心や焦りが「引き出し屋」に依頼させるのか。理解はできるが、無理に手を引っ張ったところで子は痛みを感じるばかりで一件落着とはなるまい▼連れ出されたショックで心的外傷後ストレス障害になるケースもあると聞く。業者への依頼を親の裏切りと感じ、親子関係が完全に崩壊する危険もある。子の手を業者に引っ張らせるのではなく、親の手で握り、さすり、話し合うしかあるまい。心の通った親の掌(たなごころ)の力を信じる。

 
 

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