第二次世界大戦中に活動した有名なスパイにフアン・プホル・ガルシアというスペイン人がいる。いわゆる「二重スパイ」である。ある時は英国の情報をドイツに流し、ある時はドイツの情報を英国に提供する▼れっきとした英国のスパイである。ドイツのスパイになっていたのは懐に飛び込み、信頼を得て機密情報に接近するための偽装。ドイツに流した英国の情報の大半は捏造(ねつぞう)したものや意味のない内容だったそうだ▼就活学生の味方のふりをして情報を集めて、そのデータを断りもなく学生を採用する企業側に売る。まるでガルシアの手口である。就職情報サイトの「リクナビ」が学生の内定辞退率を算出し、企業に販売していた問題である。政府の個人情報保護委員会はサイトを運営するリクルートキャリアに対し組織見直しなどを勧告した▼就活学生がどんな企業のサイトを閲覧していたかなどをAIを使って分析し、辞退率をはじき出していた。そのデータによって、企業が学生への内定を見直すようなことも起こり得る。その商売は学生への明白な裏切りである▼ガルシアは英国はもちろん最後までだまされていたナチスからも勲章をもらったそうだが、リクナビに与えられるのは曲がったビジネスへの軽蔑である▼「リクナビ」を並べ替えて、スパイめいた暗号文を作るならば、「ビ(っ)クリナ」か「クビナリ」か。
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