東京・上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」におめでたの兆候があるそうだ。まだ偽妊娠の可能性もあり、はしゃぐわけにはいかないが、無事出産となれば「シャンシャン」(三歳)に続く、ベビーの誕生ということになる▼「おめでた」。無論、おめでたいことの意味だが、なぜか、使うのは結婚や妊娠・出産の場合ぐらいで、たとえば、同じ慶事でも大学合格などには「おめでた」とはあまり言わない。部長に昇進する人に「ついにおめでたですね」。ぎょっとされるだろう▼人と人が結ばれる。新しい命が誕生する。それが人にとって特別の喜びであって「おめでた」と言うのに値するということなのだろうか▼おめでたい話とはならない。厚生労働省の人口動態統計によると、二〇二〇年生まれの赤ちゃんの数は八十四万八百三十二人。これで五年連続で過去最少を更新したことになる。その昔は二百万人を超えていた赤ちゃんの笑い声がまた小さくなった▼もう一つの「おめでた」の結婚も減っている。コロナ禍が恋路を邪魔しているらしい。景気が悪い上、この先もどうなるか。人と人が出会うことさえままならない時代とあっては結婚も難しかろう。そして赤ちゃんも▼この分でいけば、今年分の二つの「おめでた」はさらに期待しにくいか。「シンシン」の出産を願いつつも、その朗報が少々うらやましい。
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