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今日の筆洗

2019年06月22日 | Weblog

ぜんそくなどのアレルギーを起こす物質の正体が知りたい。血清を注射する方法によって謎に迫れそうだが、中にはウサギから得た成分もある。知らない人には打ちにくい。ともに免疫学者の夫婦は米国の研究室で互いの背中に注射を繰り返す。「さしつ、さされつの仲」。そんな会話をしたという▼一九六六年、免疫グロブリンEと呼ばれる物質を突きとめる。大発見であった。石坂公成(きみしげ)さんと妻照子さんの夫婦は、「日本のキュリー夫妻」として知られるようになる。後にノーベル賞候補となるのは公成さんだったが、照子さんと共同受賞でなければ辞退すると言ったという▼戦後間もないころに知り合い、結婚している。拠点を移した米国で、夫の歩みを全力で支えただけでなく、照子さんは自らのテーマでも成果を残し、家事も育児もこなした▼女性の社会進出で日本に一歩も二歩も先んじていた米国で、若い女性から、研究と家庭との両立について、相談を受ける存在にまでなった。「先駆者」と両国で言われ、欧米と日本で一流の賞を多数受けた照子さんが今月、九十二歳で亡くなった▼二十年以上前から脳神経の難病のため故郷山形で病床にあった。見舞いに通っていた公成さんは昨年亡くなっている。いまは天国で「さしつ、さされつ」であろうか▼日米の女性科学者に力を与えてきた先駆者の活躍を忘れたくない。

 
 

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