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今日の筆洗

2017年08月29日 | Weblog

 バナナの皮を踏んづけて、すってんころりん。おなじみの古典的なギャグだが、観客の笑いを誘うためには大切な条件がある。転ぶ人物は権威的で強い人物、たとえば政治家や大富豪でなければならぬ。病院帰りのお年寄りが転んでも笑えぬ▼権威ある人物はバナナの皮で転ぶようなことはないだろう。そういう思い込みや常識が崩れることで笑いが生まれる。権威が失われることもおかしさの理由なのだろう▼その人物は政治家である。しかも蔵相や外相を歴任し、首相までおやりになったのだから権威ある強者である。したがって、バナナの皮で滑るのを見れば、大笑いできるはずなのに想像してもどうしても笑えぬ。笑えぬどころか駆け寄って手を差し出したくなる。そういう珍しいタイプの政治家が亡くなった。羽田孜元首相。八十二歳▼政界でも折り紙付きの人柄の良さ。政治改革の実現を追い求める一途(いちず)な姿勢。いずれも政治家特有の権威や敷居の高さをさほど感じさせなかった理由だろう。わずか六十四日で政権を失ったが、その悲劇性も、町で見かければ気軽に肩をたたきたくなる人間的な政治家をこしらえたのだろう▼愛用の省エネスーツにしても権威や体面ばかりを気にする政治家ならば着る勇気はなかろう▼名宰相とはいえない。だが、善き人間とはいえよう。永田町では、そちらである方がよほど難しい。


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