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今日の筆洗

2019年06月18日 | Weblog

中原中也に「帰郷」という詩がある。<柱も庭も乾いてゐる/今日は好い天気だ><これが私の故里(ふるさと)だ/さやかに風も吹いてゐる>-▼<今日は好い天気だ>といいながらも中也が故郷の光景に感じたのは安心や心地よさばかりではあるまい。詩はこう結ばれている。<あゝ おまへはなにをして来たのだと…/吹き来る風が私に云(い)ふ>。故郷の風が中也を問い詰めている▼逮捕された男は「故郷」になにを感じていたのだろう。大阪府警吹田署の千里山交番の敷地内で巡査が包丁で刺され、拳銃が強奪された事件である。東京に住む容疑者の男は吹田市で暮らした過去がある。思い出の場所をわざわざ選んだのか。その心が見えてこない▼巡査の回復を願う一方、拳銃を持ったまま逃げていた容疑者の早期逮捕にひと息つく。大阪でのG20サミットが近づく中、奪われた拳銃によって、別の事件が引き起こされなかったことだけが救いである▼警官が拳銃を奪われる事件が絶えぬ。人を守る道具も曲がってしまった心が手にすれば、人を傷つける凶器となる。なにがあろうとも奪われぬ、あるいは使用できぬ仕組みを早急に整えなければなるまい▼防犯カメラの男が息子に似ていると父親が警察に連絡してきたという。その日は父の日である。故郷。父の日。二つの言葉を並べ、うめく。<あゝ おまへはなにをして来たのだと…>

 
 

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