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今日の筆洗

2021年05月16日 | Weblog

 小学校三年の時に小児結核になり、小学校にはあまり登校できなかったそうだ。たまに学校へ行っても授業が分からない。本はよく読んでいたので国語や歴史、理科には困らなかったが、算術には閉口した▼親しい友達もいない。級友が談笑している中、一人で時間を過ごした。孤独な少年を救ったのはまわりの自然だった。学校の成績は悪かったが、昆虫や動物の名前や魚の捕り方、鳥の育て方の知識と経験なら誰にも負けない。少しも引け目を感じることはなかったそうだ▼「サル学」の権威を育てたのは故郷、丹波篠山の自然ということになるのだろう。世界的霊長類学者で日本モンキーセンター(愛知県犬山市)所長などを務めた京都大学名誉教授の河合雅雄さんが亡くなった。九十七歳▼霊長類研究を選んだのは人間とは何かについて探るためだったそうだ。とりわけ、人間が持つ善と悪について進化の過程から考えたかった▼河合さんの独創的な推論がある。霊長類は元来、植物食だったが、肉食にも向かった。この傾向を強くしたのが人類で、結果、草食獣の集合性、やさしさ、思いやりなどの「善」と肉食獣の残虐性、搾取と収奪などの「悪」という両面を併せ持つようになったのではないか▼サルから「悪の世界」を背負わされた。その「悪」にどう向き合うべきか。河合さんが人類に遺(のこ)した大きな宿題なのだろう。


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