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今日の筆洗

2024年01月19日 | Weblog

 日航ジャンボ機墜落事故の発生は1985年8月12日。夜、機体が管制のレーダーから消えたとの一報が伝わった▼行方が判然としないうちに500人超の搭乗者名簿が公開され、NHKは朗読を始めた。生放送中、日航社長会見が始まるとの情報が伝わり、名簿を読むアナウンサーが会見への映像切り替えを提案すると、仕切り役のキャスター木村太郎さんが「いや、乗客名簿を続けてください」と拒んだ話は有名。視聴者が知りたいのは、運命が絶望的と思われる飛行機の客の名前だという判断である▼時は移り、個人情報保護が求められる今は事故時の名簿朗読は難しそう。日航は搭乗者名簿は原則、非公開という▼石川県が能登半島地震の犠牲者のうち遺族の同意が得られた人の氏名、年齢などの公表を始めた。死という事実を知り、涙する友らもいよう。亡くなった92歳の母親の名の公表を決めた女性は家も失い「今残せるのは母の名前だけかもしれない」と語った。その思いに、伝える側の一人として粛然とする▼誰しも誕生後の名付けは赤子である自分の力が及ばず、親らの仕事になる。『日本民俗大辞典』によると、子の守護や他家との紐帯(ちゅうたい)のため、親族以外が名付ける例も古来あり産婆、僧侶、神官、山伏、村の有力者、道で偶然擦れ違った人も託されたという▼名前は個人情報にして、独りではない証左でもある。