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今日の筆洗

2023年06月09日 | Weblog
先天的に両手足がなく、著書『五体不満足』で知られる作家の乙武洋匡さんは一時期、小学校教諭を務めた。後に学校が舞台の小説『だいじょうぶ3組』を書いた▼車いすに乗る主人公の先生は赴任先の始業式で児童にあいさつ。自分には手足がなく、できないこともあると語り「困ってるなと感じたときには、ぜひお手伝いをしてください」と頼むと、後に学年主任に苦言を呈される。「われわれは教師ですよ。どうして、子どもに手伝ってもらわなくてはいけないんですか」▼実体験に基づく話。児童の前では完璧たれと考える教員は少なくないと、乙武さんは別の随筆で振り返っている▼仕事の時間が長くなるのも、完璧さが期待される環境ゆえか。昨年度、残業時間が国指針の上限「月四十五時間」を超えた教員は公立の小学校で六割、中学校で七割以上。処遇改善の検討が国で本格化する▼長い労働のためか教員志望者は減少傾向。実態通りの残業代が払われず「定額働かせ放題」といわれる給与体系も問題視される。不登校の子らと向き合うカウンセラー、部活を指導できる住民らとの分業も大事だという▼乙武さんは、異業種経験者や障害者ら多様な教員が増えればと願う。そのためにも働き方の改善は不可欠だろう。障害とともに生きる作家がかねて唱えるように元来、何でもこなせる完璧な人などいないはずである。