東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2022年08月24日 | Weblog
大雪の夜、一頭の犬が寒さをこらえながら、いなくなった少年を捜し求める。英作家、ウィーダの児童小説『フランダースの犬』。出版から今年で百五十年だそうだ▼大聖堂の中で倒れていたネロ少年を見つけた犬のパトラッシュは涙を見せる。「パトラッシュは(中略)ネルロの胸にひしとその頭をおしつけました。大粒の涙が、その茶色の悲しそうな瞼(まぶた)にたまりました」(訳・菊池寛)…。この後の筋は正直、書きたくない▼話は犬の涙である。大切な友との再会に犬が涙を浮かべるのはまんざら、児童小説の作り話ではないらしい。麻布大学などの研究グループによると犬は時間をおいて飼い主と再び会った場合、涙の量が増えることが分かった▼こんな実験をしたそうだ。犬を五時間以上、飼い主と離れさせ、その後に再会させる。涙の量を測ると離れる前に比べて一定程度増えていたという。パトラッシュだけではなかったか▼飼い主ではない人を使った実験では涙は増えなかったそうだ。だとすれば、その涙は飼い主に会えて、うれしいという感情による涙と言っていいかもしれぬ▼同じ研究によると人は目の潤んだ犬を見ると保護したくなる傾向があるらしい。犬の涙は長い人間との付き合いの中で身につけた武器とも考えられるが、なんだって構わない。再会に心から涙を流してくれる友なぞ、めったに巡り合えない。