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今日の筆洗

2021年05月31日 | Weblog

『怪談』などの作家、ラフカディオ・ハーンが山陰のある村での体験を『日本の面影』の中に書いている。宿で夕食をとったが、出てきたのは「ごはんに卵、野菜にデザート」。少々、寂しい膳である▼訪れたのが旧盆の時期で漁が休みとなるため、魚を出せない。女将(おかみ)は何度もわびるが、ハーンの方は満足だったようで、「二人前はゆうに平らげた」とある▼女将は気にすることはなかったかもしれぬ。というのも、その卵こそ、ハーンの大好物だった。毎朝、生卵を一度に八、九個食べていたという証言がある。映画の「ロッキー」みたいである▼ハーンの機嫌が悪くなる話題か。鶏卵の価格が高騰しているそうだ。いつもより、二、三割高い地域もあるそうで、なるほど、近所のスーパーでも以前なら山と積まれた特売品を最近は見かけぬ▼「ニワトリが先かタマゴが先か」で言えば、高騰の背景はニワトリが先。鳥インフルエンザの流行を受け、感染した鶏を大量に処分した結果、卵の供給が落ち込んだ▼値上がりとは関係ないが、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から狭いケージでの飼育を見直し、よりコストのかかる平飼いに移行する国際的潮流もある。ケッコウな取り組みだが、その場合、価格はどうなるか。値段が変わらず、「物価の優等生」と言われ続けた卵の将来の「成績」が食いしん坊には気になる。