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今日の筆洗

2020年06月13日 | Weblog

 まだ知られていない子どもの病気がある−と、肩に力を入れて臨んだ発表だったが、学会に集まった人々の反応はなにもなかったという。後に「川崎病」と呼ばれることになる病気を発見した医師、川崎富作さんは五十年以上前の発表の場を振り返っている▼渾身(こんしん)の論文を、その後書きあげている。注目はされたものの、学会の権威とされていた人物に、そでにされた。苦境に<真理は必ず生き残る>とむしろ研究への意欲を高めたという(海堂尊著『日本の医療 この人が動かす』)▼高熱など、原因不明の症状の子どもたちを数多くみていた。正しさへの確信と持ち前の気骨で研究を進める。海外でも評価されると、世界の小児科医の「教科書」にも書き込まれるまでになった。川崎病の名も定着した。治療法の研究も前進している▼真理に支えられて、長い道のりを歩んできた人だろう。川崎さんが九十五歳で亡くなった。アルツハイマー病、メニエール病など、発見した研究者らの名前を冠した病名がある。日本人では、数少ない名誉であるという▼新型コロナウイルス感染症をめぐり、欧米から川崎病に似た症状があるという報告が相次いでいる。世界保健機関(WHO)も新型コロナとの関連について、研究を強化すると表明した。感染症の解明に、役立つかもしれない▼その功績に光がまた当たっているようでもある。