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今日の筆洗

2019年08月10日 | Weblog

人道に反するような行為であっても、ひとたび行われてしまえば、二度目への歯止めは弱くなる。二十世紀の思想家、ギュンター・アンダースは、この危うい人間性のメカニズムを「ナガサキ・シンドローム」と呼んでいる▼広島への原爆投下で、衝撃的な惨状を知ったはずなのに、米軍は三日後、長崎に二回目を決行した。そこからの言葉であろう。第二次大戦には、同じ心理を思わせる惨事が他にもある▼日本人には受け入れづらい呼び方かもしれないが、国際的な反核運動の指導者だった人の懸念が込められた言葉でもある。その思想が近年見直されているのは、人間性への懸念が、また現実の不安になっているからではないか▼昨日、長崎原爆の日を迎えた。長崎平和祈念式典は、田上富久長崎市長の平和宣言にも、被爆体験とともに核兵器廃絶へ思いを語った被爆者代表の山脇佳朗さんの「平和への誓い」にも被爆から七十四年の現状を憂える言葉があった▼核戦力の廃棄に逆行する核兵器大国、米ロの動きがある。両国は新型の核兵器開発をすすめようとしている。それが現状である▼平和祈念式典とは歯止めが弱体化した世界で、長崎の次がないよう訴える場であるのかもしれない。山脇さんは英語で、長崎を最後の被爆地とするために力を貸してくださいと述べた。次を出さないため声を上げ続けるしかないのだろう。

 
 

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