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「ごらん、世界は美しい」

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聖の青春

2016年11月21日 | 映画
聖の青春
を観ました。


1994年、大阪。路上に倒れていたひとりの青年が、通りかかった男の手を借りて関西将棋会館の対局室に向かっていく――。
彼の名は村山聖[さとし](松山ケンイチ)。現在七段、“西の怪童”と呼ばれる新世代のプロ棋士だ。聖は幼少時より「ネフローゼ」という腎臓の難病を患っており、無理のきかない自らの重い身体と闘いながら、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指して快進撃を続けてきた。
そんな聖の前に立ちはだかったのは、将棋界に旋風を巻き起こしていた同世代の天才棋士・羽生善治(東出昌大)。すでに新名人となっていた羽生との初めての対局で、聖は必死に食らいついたものの、結局負かされてしまう。
「先生。僕、東京行きます」
どうしても羽生の側で将棋を指したいと思った聖は上京を希望し、相談を持ちかける。先生とは「冴えんなあ」が口癖の師匠・森信雄(リリー・フランキー)だ。聖は15歳の頃から森に弟子入りし、自分の存在を柔らかく受け入れてくれる師匠を親同然に慕っていた。
体調に問題を抱える聖の上京を家族や仲間は反対したが、将棋に人生の全てを懸けてきた聖を心底理解している森は、彼の背中を押した。
東京――。髪や爪は伸び放題、本やCDやゴミ袋で足の踏み場もなく散らかったアパートの部屋。酒を飲むと先輩連中にも食ってかかる聖に皆は呆れるが、同時にその強烈な個性と純粋さに魅了され、いつしか聖の周りには彼の情熱を支えてくれる仲間たちが集まっていた。
その頃、羽生善治が前人未到のタイトル七冠を達成する。
聖はさらに強く羽生を意識し、ライバルでありながら憧れの想いも抱く。そして一層将棋に没頭し、並み居る上位の先輩棋士たちを下して、いよいよ羽生を射程圏内に収めるようになる。
そんな折、聖の身体に癌が見つかった。「このまま将棋を指し続けると死ぬ」と医者は忠告。しかし聖は聞き入れず、将棋を指し続けると決意。もう少しで名人への夢に手が届くところまで来ながら、彼の命の期限は刻一刻と迫っていた…。


森義隆監督作品です。
宇宙兄弟の印象しかありませんが、まるで違う監督の作品の様でした。

松山ケンイチと東出昌大の役作りのエピソードくらいの前情報はあったので、
正直、モノマネ映画かな?くらいの期待値で観に行きましたが。

めちゃくちゃ魂揺さぶられる名画でした。

雰囲気モノマネを超越するような松山ケンイチと東出昌大の物凄い役作りでした。

監督の演出のセンスも良すぎて嫉妬すら感じるほどのセンスでした。
もし自分がこの素材で映画を撮れと言われてこのセンスで作れるとは到底思えないような。

最近の日本映画では減りつつある、一見意味不明なシーンの多さ。
各シーンの切れ方の独特さ。
誰かもう一言発して場を絞めてくれ!って思うようなシーンが多いのに、
各シーンが完結しないようなテイストで場面が変わって行ってしまいます。

または親切に対してちゃんと感謝して欲しいとか、ここで褒めてあげて欲しいとかのシーンがありますが、
観客が期待するセリフを全然登場人物たちが言ってくれません。

リアリティ重視の映画というわけでは無いですが、人間のやり取りの描写は妙にリアリティを感じました。

羽生善治との戦いとかかなりドラマチックに盛り上げて観せても良さそうなのに、
全然違う場面からの転換でいきなり対戦シーンになっていたりします。

対局シーンも二人の仕草を中心に対局の流れは具体的に見せないように描写する時もあれば、
駒を移して対局の流れを伝えつつ見せる時もあり。

騎士たちの静かな対局の中の苦しそうな仕草の演技の素晴らしさ。
まさしく命がけのしびれるような空気感がビンビンと伝わりました。
それを伝えるのにこの方法論を取っていることに本当に感心しました。

最初は若干後ろ体重な気持ちでみたいた自分ですが、あまりに演出のセンスが良いので終盤にはかなり前のめりでした。

松山ケンイチは20キロ増量したそうですが、本当に凄い太り方していました。
ただしそれを差し引いても役作りが凄いです。
コミュ障まるだしな首をヒクヒクさせる喋り方、相手と目を合わせない喋り方。
ガサツでホームレスみたいな不潔な暮らし、爪も髪も切らない人間の感じが見事でした。
そして将棋の駒の扱い、打ち方、本物みたいでした。

同じく東出昌大の役作りも凄まじかったです。
無口の羽生善治を演じるのはなかなか難しいと思いますが、仕草のらしさとかはもはや憑依でした。
仕草や佇まいが素晴らしくて見てるだけで不思議と泣きそうでした。

そして村山と羽生の決して親友感が生まれない微妙な距離感のリスペクトの持ち合いの描写が見事過ぎました。

リリー・フランキーの脱力感は今作でも健在で素晴らしかったです。

染谷将太がこのくらいのポジションで出てるのは少々贅沢にも思いましたが、
流石の演技派で素晴らしかったですね。

安田顕、柄本時生のハマりっぷりも素晴らしかったです。

筒井道隆もまるで別人みたいな、将棋業界の人っぽい無頓着なルックスの役作りが見事でした。

ちょっとネタバレになりますが、
クライマックスで村山の家に羽生の弔問シーンが無く、
「さっきまで羽生さんが来ていたんです」と村山の母が師匠の森に言うセリフがあります。
なんというハイセンスな描写か!と胸を打たれました。

そしてその後の東出昌大の表情、常にポーカーフェイスの羽生を無表情のまま感情を伝えているようでした。
かなり魂揺さぶられて泣いてしまいました。

俳優が役作りで太ったり痩せたりするのは今やひとつの話題作りでしょ?
くらいに思っていた自分の考えを覆してくれる名画でした。

基本的に対決を描く映画ですが、ここまで魂揺さぶられる感じは久々でした。

そしてめちゃくちゃ将棋を打ちたくなりましたね。


そんなわけで9点。
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