情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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民族差別表現は、保障されるべきか~再度上程狙う人権擁護法案に対する読売、産経の社説に寄せて

2008-06-01 01:30:50 | 人権擁護法案(原則必要派)
 人権擁護法案が自民党内で再度議論されているようだ。人権擁護法案は、裁判所による解決が期待できない分野や迅速な解決が望ましい分野の人権侵害について対処するための人権救済機関の設置や人権教育の実施を目的とする法案で、国連総会決議で各国に対し設置が求められている。また、部落問題差別の解決にとっても必要な機関だとされており、10年近く議論されてきた。

 しかし、残念ながら、①政府からの独立性を十分なものとできていないこと、②メディアの人権侵害を口実とするメディア規制の恐れがあったことなどから、反対する意見が根強かった。他方で、自民党などの一部議員などからも、A)人権擁護委員に外国人がなれないようにするべきだ、B)人権侵害の定義があいまいだ、などという反対論が寄せられ、結局、現在まで成立していない。

 人権救済機関の必要性、その権能をめぐって、さまざまな思惑があり、容易にまとまらないのが実態だが、個人的には、国連の決議(パリ原則)に従ったシステムが設けられるべきだと考えている。

 そんな折り、選挙が近いせいか、またまた、自民党内で人権擁護法案が騒がれるようになってきた。以前、この法案が成立直前までいったときも、選挙がらみだという情報が飛び交っていた。

 今回は、自民党は、救済対象を限定することや不当な申立に対抗する制度を設けることなどで、党内の反対派を押さえ込むとともに、メディアに対する特別な規制を削除することで、メディアの反対を防ごうとしたようだ。

 産経新聞(※1)によると、【救済対象を「公務員、事業主らによる差別行為」などいくつかの類型に限定。学術、歴史、宗教に絡む申し立てを救済対象から外し、制裁措置の対象は民法上の「不法行為」に限った。「差別的言動」の調査では過料制裁を除外し、制度乱用を防ぐため不服申し立て措置も設けた】ということのようだ。

 議論は多岐にわたるので、ここでは、とりあえず、差別的言動について検討した。

 読売新聞(※2)や産経新聞(※3)は社説で、次のように述べている。

【しかも、私案で示された人権侵害の例には、「反復して行う差別的言動」「差別的取り扱いを誘発する差別助長行為」など、どういう行為を想定しているのか不明瞭(めいりょう)なものが掲げられている。】(読売)

【例えば、人権救済の対象となる「差別的言動」を「反復して行われるもの」に限定したとしているが、言論を浸透させるためには、繰り返して主張することが必要である。言論自体が封じられる恐れは依然としてあり、「反復して」は無意味な付け足しに近い。
 また、法務省が平成14年に示した案には報道制限につながりかねないメディア規制条項があった。マスコミの批判を受けて太田私案では削除されたが、それは報道機関が特別扱いされないだけで、他の民間組織と同様、「差別的言動」の有無などについては人権委員会の監視を受ける】(産経)

 両紙とも、差別的表現について規制されることをおそれているようだ。しかし、個人的には、差別的表現、特に、人種、民族、国籍などに関する差別的表現は、児童ポルノなど同様に少なくとも公で語られるべき表現ではないと思う。

 世界的にみても、人権救済機関の対象として差別的表現を入れているところは多い。

 この点、産経新聞(※4)は、【英国やカナダなどはパリ原則に沿った人権機関を設けている。いずれも人権侵害の定義を明確に規定し、「表現の自由」は最大限尊重されている】としているが、明らかにミスリーディングだ。

 英国では、差別禁止法によって、「皮膚の色」「人種」「国籍」「出身」に関する「差別的広告」「差別の支持、教唆」「人種的憎悪」などが禁止され、それに基づく人権救済機関への申し立てが可能となっている。

 カナダでは、人権法によって、「人種」「肌の色」「出身地(国)・民族」「宗教」などに関する「差別的言辞」「憎悪の表明(ヘイトメッセージ)」「嫌がらせ」などが禁止され、人権救済機関での救済対象となっている。

 産経が、「表現の自由」は最大限尊重されているという国々でも、他国の国民を差別することで愛国心などを煽る記事などは、申し立ての対象となるわけだ。

 表現の自由の刃は差別される者に向けられるべきではなく、権力に向けられるべきではないでしょうか?

 皆さんは、どう思いますか?

 
 

※1:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080529/stt0805292304007-n1.htm

※2:http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080530-OYT1T00863.htm

※3:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080531/stt0805310305000-n1.htm

※4:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080310/stt0803102007004-n3.htm






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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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12 コメント

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Unknown (トオル)
2008-06-01 10:46:19
反対も反対。大反対です。

なぜこの法案だけは権力に悪用されないと思っているのが本当に不思議です。
そして何よりこんな強権的な法案に対して国民が
どういうものなか知らなさ過ぎる。議論も不十分。
他の様々な抑止的法案やマスコミの報道には疑問を投げかけるのにこの法案だけには異常に甘い。

何か政治的意図や政治的商売があるんですか??

と疑いたくなるような思いです。
この法案を推している自民党の議員わかってますか?
あまり良い噂のない人ですよ?

なぜこの法案に関しては左派勢力が普段は対峙する
自民族議員に賛同するのか不思議でなりません。

お互いの商売を考えてのマッチポンプなんでしょうか?

もういい加減、自分達の利権だけに固執するのやめませんか?
なぜこの法案をもっともっと国民に広めて議論しないで通そうとするのか?右も左も。
隠蔽して誤魔化して自分達の利権は確保する。

批判されてるマスゴミと同じ体質だと思いますよ。
Unknown (作務)
2008-06-01 15:13:19
運転マナーの悪いダンプカーに歩行者が文句を言うと逮捕されて、歩行者をひき殺したダンプカーは歩行者の歩き方が悪いのだと無罪になる。そんな感じでしょうか。
どちらがダンプカーで、どちらが歩行者は、言わずとも判ると思いますが。
Unknown (イロハ)
2008-06-01 15:14:19
http://www.odoroku.tv/comedian/nishiazabu/index.html

この西麻布ヒルズ(現在は「シベリア超特急」というらしいです)というコンビは差別をギャグにしたお笑いをやっています。

こういうものも規制の対象になってしまうのでしょうか。
「表現の自由」にも、フェア/アンフェアの感覚が必要かと。 (田仁)
2008-06-01 15:49:06
例えば、先の有名なオランダのムハンマド漫画事件、一切ブッシュの戦争とキリストは(ブッシュ当人が十字軍を持ち出してさえも)関連付けられないのに、ムハンマドと爆弾(要はテロ)を関連付けると言う。
現状の世界において、イスラム教界に比べてキリスト教界の優位は明らかで、しかしオランダの新聞や言論界ですか?『言論の自由』を盾に、寧ろイスラム教界の反発が間違ってるって論調で。
現状とバランス感覚が明らかに変で「弱者弾圧」になっており、公正さを心掛けるなら却って、優位な方へコソ、批判を大きくしないといけないです!ブッシュの戦争の方が、テロより多くの人を殺してるのだから。
ソレは日本の左派/右派が経済的に抱える圧倒的な右の優位性と、左が常にリアクションの形で後付に動く(福祉的・外国人支援等NGOの活動をも含め)事実も、同様に考慮すべき事情であって、「悪平等主義に染まる『戦後教育の弊害』はドッチかってば右に強く出てるのでは?」って皮肉も可能かと。
本当の本当は、弱者を押し込めて声を上げさせなくするのではなくて、弱者の側の声をコソ、大きく響かせないといけないのです(三国人発言とかじゃなくてね)。
あるべき機関… (ヤメ蚊)
2008-06-01 21:19:36
個人的には、①法務省ではなく内閣府所管の独立行政委員会としたうえ、②取り扱う人権侵害の内容を公権力によるもの、差別に関するもの、に限定したものとして設置されることを期待しています。
Unknown (真実)
2008-06-01 21:51:49
トオルさんの仰るとおり人権擁護法案なんてのは善良な日本国民にとって悪法以外なにものでもありませんな…
こんな時こそ左派が…
動きませんよ…
右も左も…
所詮利権が絡めばこんなものです!
要するに世の中お金次第ということです…
腐りきっている日本の現状といったところですか…
Unknown (Mitsu)
2008-06-01 23:07:29
現状では、「皮膚の色」「人種」「国籍」「出身」に関する「差別的広告」「差別の支持、教唆」「人種的憎悪」などを禁止する法律は必要ではないかと感じています。
ネットの掲示板で見た例です。話題の人物をはげしく攻撃しているのですが、内容はただ1点その相手が在日外国人だということでした。この書き手にとって最大の侮辱、非難の発露は相手を在日外国人だとみなすことらしいのです。これはたまらないことです。
在日朝鮮人作家の徐京植氏は、「在日朝鮮人、特に若い朝鮮人は、草の根排外主義で日々精神を磨滅させられている」というようなことを何度も書いていますが、最近は以前にも増して日本社会の差別は酷くなっていることは明白と思います。誰にとっても放っておいていい問題とはとても思えません。
ヤメ蚊さんがおっしゃるように法務省管轄ではない機関で、上記のような差別は禁じられるべきと思います。


スイーツ? (ピンクのくじら)
2008-06-02 07:43:09
ヤメ蚊さんのコメント
>②取り扱う人権侵害の内容を公権力によるもの、差別に関するもの、に限定したものとして設置されることを期待しています。

公権力を縛るだけの法案を与党が賛成して国会で成立する、という発想が、すでにユートピアでしょう。
具体的には、ですね…。 (田仁)
2008-06-02 21:58:52
まだまだ煮詰まってない様に思います。
多分、産経や読売は最も泥臭い民族主義を背負ってるでしょ?
ソレを言えば自民も。
あれ程「外遊(に伴う物見遊山ってか、現地大使館主宰の血税豪遊ツアー)好き」なのに。
視察に行く!とさえ言わない。
余ッ程!向き合いたくないんですよ!自分達の差別性に。
差別してないポーズさえ、左っぽいんだか、インテリ臭いんだか、大嫌いじゃないですか。
またまた、お流れでは?
Unknown (トオル)
2008-06-02 22:23:56
なぜこういう時だけ政府を信用できるのかが全くもってわからない!!!!!

歴史を遡ってみても言論に関する封殺をすると必ず
公的勢力は大衆を悪い方にコントロールするのに。


あれだけブッシュアメリカ批判をして僕よりもその事を知っている人がこの法案に賛同するのかが全く理解できない!!!!!

怒ってますよ僕は。
それにこの法案をどれだけの国民が知っているんですか?こういう時だけは話し合いはしないんですか?

もう本当に悲しくなるようなダブルスタンダードはやめましょうよ!
前にも言いましたが国民レベルで右派だの左派だの
ささいな(どうでもいい!くだらない!)レベルで争えば得するのは 政府 だけです!!!!!



言論の自由は大衆に残された唯一の剣だ!!!!!

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