
◆被告は不逞社に加入しているか
○本年4月中私と朴とが相談して不逞社を結成しました。
◆どうして不逞社を組織することになったか
○不逞社というのでありますから、不逞の徒の親睦を計るために組織したのであります。
◆不逞の徒とは
○権力に対して反逆する虚無主義や無政府主義を抱いている者の集まりです。
◆不逞社の目的は
○ただいま申し上げたとおりです。
不逞の徒が寄り集まって気焔を挙げその「とばっちり」を持っていくのです。
これは、(入手すらしていない)爆弾によって皇太子(後の昭和天皇)暗殺を謀ったとして大逆罪で死刑判決を受けた金子文子の第1回被告人訊問の出だしである(「金子文子 わたしはわたし自身を生きる」梨の木舎)。1923年10月25日、関東大震災直後の東京地方裁判所での出来事であった。
第12回訊問
◆その爆弾を誰れに投げるというのか。
○つまり坊ちゃん一匹をやっつければよいのであります。
天皇をやっても好いのでありますが、行列の機会が少ないのと天皇は病人ですから、坊ちゃんをやるのとは宣伝価値が違って甲斐がありませぬ。それで坊ちゃんを狙ったのです。
◆被告はなぜ皇太子殿下にそのような危害を加えようとしたのか。
○私はかねて人間の平等ということを深く考えております。人間は人間として平等であらねばなりませぬ。(中略)
しかし、この自然的な行為、この自然的の存在自体が、いかに人為的な法律の名の下に拒否され、左右されつつあるか。(中略)
もともと国家とか社会とか民族とかまたは君主とかいうものは、一つの概念に過ぎない。ところが、この概念の君主に尊厳と権力と神聖とを付与せんがために、ねじ上げたところの代表的なるものは、この日本に現在行われているところの神授君権説であります。(中略)
かつて私は海に沈んで魚の餌食となったという安徳天皇とやらはわずかに2歳で日本の統治者としての任を負っていたと聞いております。こうした無能な人間を統治者として祭り上げておくということが果たして被統治者の誇りでありましょうか。むしろ万世一系の天皇とやらに形式上にせよ統治権を与えて来たということは、日本の土地に生まれた人間の最大恥辱であり、日本の民衆の無知を証明しているものであります。(中略)
学校教育は地上の自然的存在たる人間に教える最初において「ハタ」(旗)を説いて、まず国家的観念を値つけるべく努めております。(中略)
神国と迄見倣されている日本の国家が実は少数特権階級の私利を貪るために仮設した内容の空虚な機関に過ぎないことゆえに、己を犠牲にして国家のために尽くすという日本の国是とまで見倣され賛美され鼓吹されている、かの忠君愛国なる思想は、実は彼らが私利を貪るための方便として美しい形容詞をもって包んだところの己の利益のために他人の生命を犠牲にする一つの残忍なる欲望に過ぎないこと。したがってそれを無批判に承認することはすなわち少数特権階級の奴隷たることを承認するものであること等を警告し、そうして従来日本の人間たちの生きた信条としていた儒教に基礎を求めている他愛的な道徳、現に民衆の心を風靡しややもするとその行動をすらも律しがちな権力への隷属道徳等の観念が、実は純然たる仮定の上に現れた一つの錯覚であり、うつろなる幻影に過ぎないことを、人間に知らしめ、それによって人間は完全に自己のために行動すべきもの、宇宙の創造者はすなわち自己自身であること、したがって、すべての「もの」は自分のために存在し、すべてのことは自分のためになされなければならぬこと等を民衆に自覚せしむるために私は坊ちゃんを狙っていたのであります。(後略)
第13回訊問
◆その訂正したい事とは何か
○前回、私は坊ちゃん一匹をやっつければよいと申しました。その際、判事さんからご注意を受けたことを思い出して、私はその後一匹という言葉がなるほどいかにも汚い醜しい言葉であることを気づきました。
すでに私の国家観、天皇、皇太子観を述べ、皇太子に対する私らの計画を申し上げた以上はことさら敬語を用いる必要もありませぬが、またことさら罵倒する必要もない。かえって私の立場を醜くするものであることに気づきました。それで私は前回、私らの爆弾を投げる対象がつまるところ坊ちゃん一匹をやっつければよいと申し上げた点を、皇太子一人を殺すればよいのであると申し上げて、用語を訂正したいと思います。
国旗、美しい国、ボランティアの義務化…。私たちは、金子文子のように私たち自身を生きているだろうか…。
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また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで
○本年4月中私と朴とが相談して不逞社を結成しました。
◆どうして不逞社を組織することになったか
○不逞社というのでありますから、不逞の徒の親睦を計るために組織したのであります。
◆不逞の徒とは
○権力に対して反逆する虚無主義や無政府主義を抱いている者の集まりです。
◆不逞社の目的は
○ただいま申し上げたとおりです。
不逞の徒が寄り集まって気焔を挙げその「とばっちり」を持っていくのです。
これは、(入手すらしていない)爆弾によって皇太子(後の昭和天皇)暗殺を謀ったとして大逆罪で死刑判決を受けた金子文子の第1回被告人訊問の出だしである(「金子文子 わたしはわたし自身を生きる」梨の木舎)。1923年10月25日、関東大震災直後の東京地方裁判所での出来事であった。
第12回訊問
◆その爆弾を誰れに投げるというのか。
○つまり坊ちゃん一匹をやっつければよいのであります。
天皇をやっても好いのでありますが、行列の機会が少ないのと天皇は病人ですから、坊ちゃんをやるのとは宣伝価値が違って甲斐がありませぬ。それで坊ちゃんを狙ったのです。
◆被告はなぜ皇太子殿下にそのような危害を加えようとしたのか。
○私はかねて人間の平等ということを深く考えております。人間は人間として平等であらねばなりませぬ。(中略)
しかし、この自然的な行為、この自然的の存在自体が、いかに人為的な法律の名の下に拒否され、左右されつつあるか。(中略)
もともと国家とか社会とか民族とかまたは君主とかいうものは、一つの概念に過ぎない。ところが、この概念の君主に尊厳と権力と神聖とを付与せんがために、ねじ上げたところの代表的なるものは、この日本に現在行われているところの神授君権説であります。(中略)
かつて私は海に沈んで魚の餌食となったという安徳天皇とやらはわずかに2歳で日本の統治者としての任を負っていたと聞いております。こうした無能な人間を統治者として祭り上げておくということが果たして被統治者の誇りでありましょうか。むしろ万世一系の天皇とやらに形式上にせよ統治権を与えて来たということは、日本の土地に生まれた人間の最大恥辱であり、日本の民衆の無知を証明しているものであります。(中略)
学校教育は地上の自然的存在たる人間に教える最初において「ハタ」(旗)を説いて、まず国家的観念を値つけるべく努めております。(中略)
神国と迄見倣されている日本の国家が実は少数特権階級の私利を貪るために仮設した内容の空虚な機関に過ぎないことゆえに、己を犠牲にして国家のために尽くすという日本の国是とまで見倣され賛美され鼓吹されている、かの忠君愛国なる思想は、実は彼らが私利を貪るための方便として美しい形容詞をもって包んだところの己の利益のために他人の生命を犠牲にする一つの残忍なる欲望に過ぎないこと。したがってそれを無批判に承認することはすなわち少数特権階級の奴隷たることを承認するものであること等を警告し、そうして従来日本の人間たちの生きた信条としていた儒教に基礎を求めている他愛的な道徳、現に民衆の心を風靡しややもするとその行動をすらも律しがちな権力への隷属道徳等の観念が、実は純然たる仮定の上に現れた一つの錯覚であり、うつろなる幻影に過ぎないことを、人間に知らしめ、それによって人間は完全に自己のために行動すべきもの、宇宙の創造者はすなわち自己自身であること、したがって、すべての「もの」は自分のために存在し、すべてのことは自分のためになされなければならぬこと等を民衆に自覚せしむるために私は坊ちゃんを狙っていたのであります。(後略)
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○前回、私は坊ちゃん一匹をやっつければよいと申しました。その際、判事さんからご注意を受けたことを思い出して、私はその後一匹という言葉がなるほどいかにも汚い醜しい言葉であることを気づきました。
すでに私の国家観、天皇、皇太子観を述べ、皇太子に対する私らの計画を申し上げた以上はことさら敬語を用いる必要もありませぬが、またことさら罵倒する必要もない。かえって私の立場を醜くするものであることに気づきました。それで私は前回、私らの爆弾を投げる対象がつまるところ坊ちゃん一匹をやっつければよいと申し上げた点を、皇太子一人を殺すればよいのであると申し上げて、用語を訂正したいと思います。
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トラックバックと表紙の画像アップありがとうございます。
金子文子に関しては下記、案内サイトもあります。
「金子文子の生き方」
http://members2.jcom.home.ne.jp/anarchism/index3.html
未だに当時の裁判記録を戦災で焼失したとして、現裁判所が反省しないで済んでる事件とか多いですよね...。
「暗黒時代」さんのコメントは、どの時代を指しているのでしょうか? いろいろな時代のイメージが混在しているような文面ですね。
言わんとしていることは理解できます。官憲の横暴、司法の(国家総体もですが)「戦争」責任が為されていないこと、1945年の敗戦時、責任が明白になる記録を自ら焼いたこと(幸徳秋水たちの残されていた獄中記は、救い出され数年後に明らかにされましたが)は徹底追求されていないでしょう。
諸々の弾圧法に関して下記ブログ記事を参照してください。
http://blogs.yahoo.co.jp/fu_tei/2346950.html?p=1&pm=l
1923年の関東震災後の朝鮮、中国の人々、社会主義者、大杉栄、伊藤野枝らへの虐殺の責任を明らかにすることなく、逆に不逞社の金子文子、朴烈に弾圧を加えたわけです。
刑法73条での予審は1925年、大審院に付すとの結論も同年。公判が開かれたのは1926年です。
一般的に幸徳秋水たちの処刑後が社会主義者たちにとって「冬の時代」といわれていますが、実際は大杉栄、荒畑寒村が刊行した『近代思想』『平民新聞』をはじめ幾つかの運動紙が刊行されています。
実際に社会主義者たちが「身動き」がとれなかった「冬の時代」は1908年の「赤旗事件」から幸徳たちへの弾圧と処刑の1910年、1911年までと私は認識しています。
そして1917年のロシア革命(ボルシェビキだけではなくロシアの民衆、各派、アナキストたちにの協同による)、1918年の米騒動を経て労働運動の拡大、新たな社会主義運動が発展します。
1919年の大杉栄らによる『労働運動』の創刊、堺利彦、山川均、荒畑寒村たちも雑誌を創刊。総合誌『改造』の創刊もこの年です。
日本の共産党もコミンテルンとの連携で1921年4月か5月に結成されます。
しかし議会では普選法成立と共に治安維持法が成立、以降は思想検事、特高体制のもとアナキスト、共産主義者への弾圧が激しくなります。中国への本格的な侵略と期を一にします。
抵抗する勢力が「一掃」され(少数のグループは抵抗運動を持続させようとします)、15年戦争下、戦時国家体制が整えられ翼賛体制に突き進みます。しかしその結果を招いたのは当時の「国民」であり、仮に戦時国家体制を「暗黒の時代」と呼称するならば、それは「国民」大衆が招いたことです。
補足、「赤旗事件」に関しては下記サイトに当時の公判報告のデータがあります。
http://members2.jcom.home.ne.jp/anarchism/akahatagiken-kouhannkiroku.htm
1947年に刑法から削除された73条、いわゆる大逆罪弾圧は下記サイトを参照してください。
http://members2.jcom.home.ne.jp/anarchism/anarchism-katsudo-danatsu.html
しかし大逆事件などを知らない訳ではありません。
だから、そういう弾圧は「暗黒時代」じゃないですか?
で、戦後はまだ一寸マシ、と。
確かに細かく時代を区別してなかった点とか、誤解を招き易かったです?
兎に角、弾圧を肯定してる趣旨ではない積りですが...?
官憲の横暴とか、悪と思っていますよ?
つい最近、横浜事件(ポツダム宣言後の司法と特高の弾圧行為にかかわる事件)での原司法の見解は、被害者の名誉は回復の確認が行われ、当時の司法の責任を認めていると解釈しえます。(形式的には認めてないといわれますが)
横浜事件そのものは、免訴されて成立したわけです。その上での係争で名誉回復がなったわけであり、これ以上、誰かを傷つける必要があるのか?という疑問が残ります。
当方は素人で、あくまで一般論として「戦前はヒドかった」という認識があるので、そう呼んだのでしたが。
どうぞ、一般人レベルにもご容赦下さい。
で、この問題の民主主義上の意義は、今現在の自民党と公明党の政府権力が、学者を含めて国民全体へ行使していている権力に対し、どういう態度をとるかにあります。
歴史を学術で規定していく意義は、今および未来に誤った人権侵害の歴史を繰り返さないことにあるのであり、極端な話で言えば、戦前の特高警察とか治安警察法、治安維持法を暗黒政策と歴史的には規定しながらも、今現在の共謀罪あるいは警備・公安警察の存在を認めて、推進してくる者もいるのであって、必ずしも過去の歴史的な「暗黒」概念の規定を学術的に行うものが、共謀罪・公安警察に反対かといえばそうではないのではないでしょうか。
ゆえに、今現在の共謀罪の創設、公安警察の存在に対し、どのような態度をとるのかを問題とすべきであり、今現在の人権問題を解決していく際に、過去の政府権力の実態を合わせて指摘し、これを繰り返すのかどうかと追及しておくことが真の学問への実践的な態度・方法ではないでしょうか。
暗黒と呼ぼうが呼ぶまいが、暗黒時代さんのいうように「戦前の日本政府権力は日本国の人民にみならず、アジア人民全体の人権を蹂躙・抑圧したのであり、明治以来の日本政府権力が戦争と人民弾圧の警察国家であったことは、日本国憲法の条文を見れば明らかであり、憲法前文と同法9条ならびに31条以下で捜査機関の適正手続きが厳格に規定されておるのであります。
暗黒時代さん、共謀罪と警備・公安警察の透明化、刑事警察への移行を目指してがんばりましょう。