情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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代用監獄の弊害事例その3~代用監獄における自白強要例

2006-01-24 07:39:08 | 適正手続(裁判員・可視化など)
自白強要がいかなる形で行われているか,日弁連の会報「自由と正義」に掲載された事例を紹介するシリーズの第3弾です。早速取調部分を引用します。プライバシー保護の観点から原文を一部変更しています。


■■引用開始■■

1及び2略

3 逮捕当日の切り違え尋問や偽計による違法な取調べ

(1) 任意であることや黙秘権の不告知
●年●月●日(日曜)午前7時30分頃、刑事約10名がA子とBを迎えに来た車中で「Bに手錠せえへんかっただけでも有り難いと思え」とA子に言うなど当初から被疑者として扱われた。取調室に入ると、任意捜査であることや黙秘権の告知もなく、「正直に言え。おまえがやったんやろう」とA子がBと共謀して本件犯行を行ったという断定の下に自白獲得のみを目的とする取調を始めた(Bは前月に法律相談センターで相談した弁護士を呼んでほしいと言ったが、午後まで連絡がつかなかった)。窓のない狭い部屋の中で、二人の男性刑事に取り囲まれ大声で怒鳴られるだけで小柄な女性のA子は恐怖を感じたが、身に覚えのないことであると否認すると、BとC子に性的関係があった、おまえは三角関係のもつれからC子を殺したのではないか、BがC子をセックスのおもちゃにしていた、●才の息子DはC子が泣いているのを見てた、Dでも知ってるのにお前がわからんか、C子の膣内から精液が検出された、とA子には初めて聞くことばかりを告げた(解剖所見では精液は検出されず虚偽であるが、BがC子に性的虐待をしていたことをBは認めていたことが公判段階で判明)。また、DがA子の兄に養子にやられる話が出ていると告げた。

(2) Bが自白しているとの切り違え尋問と偽計による聴取など
 昼食の話の後、Bは「全部認めているぞ」とBが書いたというファックスの紙をA子の目の前にちらつかせ机を叩いて自白を強要したが、この頃、Bに対しても、A子は自白しているという違法な切り違え尋問を行った。
 また、「●にBが下りて、火を付けたところをDが見てるぞ」と虚偽の事実(DはBが火を付けるのを見ていない)を告げ、さらに「おまえの言うてることとDの言うてることは違うぞ。法廷でDと争うんか。」「A子の両親に(死んだC子に対するBの行為について)Bを訴えてもらうぞ」と自白を迫った。
 我が子を亡くして以来食事が喉を通らず、その日は朝から飲まず食わずで長時間怒鳴られて身体的に疲弊し、●年間夫婦として暮らしたB(子のために入籍しなかった)が「放火を認めている、C子を性的虐待していた。」と言われて真偽がわからず混乱し、C子を助けられなかったという自責の念と火災で生き残ったDまで失うようなことを次々と言われて、生きる意欲をなくしA子は自白するに至った。

(3) 自供書の作成と逮捕状の執行とその後の弁護士の接見
A子は、●に入っている●のC子が逃げられず死ぬという警察の筋書きどおりにBの自供書と食い違わないように誘導されながら自供書5通と供述調書一通を作成したが、秘密の暴露といえる事実は含まれておらず、むしろ「煙の中に入り、自分も死ねば良かった」という真情が吐露されている。作成後の午後8時6分にA子は殺人、現住建造物等放火被疑事件につき逮捕状を執行されたが、午後8時50分項に接見に来た弁護士に、やっていないと言っても刑事らが聞いてくれず自供書を書かされたと述べた。


4 二度目の自供書作成に至る経過

 ●+1日午前11時頃、当番弁護士として接見した私(報告者)に、A子は「私はやっていません。」と否認し、「でも怒鳴って聞いてくれない。今経歴を書いているが署名しても良いか」と聞くので、調書を読み聞かされる時に、経歴の前後に罪を認めていると書いてないかを注意し、事実でないことが書いてあれば調書に署名をしてはいけないと助言し、一旦接見が打ち切られた。
 警察官調書作成後に再び、接見でき、A子から、警察官調書に署名を拒否したことを聞き、私は勾留質問までの手続について説明し、怒鳴られることに怯えているA子に否認しても検察官と裁判官は怒鳴らないと述べた。
 A子は検察官の弁解録取書でも否認した。
 私は勾留質問前にA子への接見に前後して勾留裁判官と面談して前日の違法な取調べについて述べたが、A子は裁判官の質問に対して「事実は身に覚えがな」く「警察官からBがC子をセックスのおもちゃにしていたとか私が共犯者であると自白しているとのファックスを見せられ、頭がボーッとして虚偽の自白をしたのです。」と答え、午後9時50分に拘置所に勾留された(拘置所を勾留場所に定める例は多くないと聞いているので、勾留裁判官が代用監獄での取調べ状況から正当にも拘置所を勾留場所を定めたと考えられる。)。
 ●+2日は拘置所で午後9時頃まで取調べられたが、A子が否認したため、調書は作成されていない。●+3日の午前中に検察官の準抗告が認められて警察署へ再び移監された。午後になってそれを知った私は警察で接見を求めたが接見指定が付けられたので、検察官と交渉の上、翌日に接見をしない条件で午後7時45分から20分間の接見し、A子に移監について説明した。●+4日の午前中に弁護士が接見を申し込んだが拒否された(準抗告の申立等は後記のとおり)。
 ●+3日の午後の取調では、A子が黙秘すると、刑事は「鬼のような母親や。」などと侮辱し、警察に移監されたことについて、勾留決定は一人の裁判官だが、今度は三人や、裁判所は弁護士の言うことは認めへん、警察の言うことだけを信じる、そやから、お前はまたここに戻されたんや、とか、弁護士は金目当てや、自分の名を売るためやとか、A子が弁護士を信頼して否認しても無駄であると繰り返した。午後には、A子の耳元で「これは怒鳴っているんと違うぞ。お前が聞こえてへんと思って、大声で言ってやってるんや。裁判になっても、そう証言してやる。」 と怒鳴り続け、さらに、「マスコミが静かになったのに、またBが認めておまえが否認するとマスコミがおもしろがって騒ぐぞ」(●+1日の朝から新聞やワイドショーの報道が続いたが、A子が否認していることを●+2日の午後に記者発表した後報道は止まっていた)と、新聞に再びC子のことが大きく報道されるかのように言って自白を強要した。A子が吐き気がひどく病院へ連れて行ってほしいと頼んでも詐病扱いされ、椅子から倒れ滑り落ちても放置された。
 午後6時からの取調で、「警察の言うとおりにお前が自白書を書けば、すぐこの場から解放してやる。」と打って変わってなだめるような口調で言われたA子は、朝から10時間近くも耳元で怒鳴られて朦朧とした心身共に極限状態になり、3通の自供書を作成した。検事は、午後8時半頃に接見に来た弁護士に対して取調中であると接見を拒否していたが、自供書が完成した後に午後3時40分から10分間の接見を認めた。その日以降、▲月▲日に詐欺未遂で起訴されるまで約一月の間、連日厳しい取調べが続いたが、A子の自白調書は代用監獄で作成された9通のみである。


後略

■■引用以上■■


引用した中で,「●+3日の午前中に検察官の準抗告が認められて警察署へ再び移監された。」という部分にご注目頂きたい。

なぜ,拘置所から警察署への移管を裁判所が認めたのか…。もう,ため息しか出ない…。




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