情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

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朝日新聞は新自由主義推進論者に堕ちたのか?~タクシー運賃社説に見る共感力のなさ

2007-09-15 05:37:17 | メディア(知るための手段のあり方)
「タクシー運賃 思い切って自由化したら」~9月12日付朝刊社説欄にこのような暴論を掲載したのは、なんと朝日新聞だった。どのような意図があって、このような社説を掲載したのかは不明だが、労使関係の現状についてまったく理解のない記事にあきれはてた。いま、自由化をすれば、タクシー運賃は当然、値下げ合戦になり、タクシー乗務員にその負担が着せられるのみ。必死に働いても生活保護以下の収入しか得られない状況がさらに悪化することは間違いないのに…。

まずは、社説を読んでほしい。

■■引用開始■■
 東京都内のタクシー運賃の値上げ問題が、ヤマ場を迎えている。
 全国の物価に影響する東京の場合、国土交通省の認可に先だち、内閣府で審査し、閣僚会議の了承が必要だ。ところが参院選前の検討では閣僚から反対が相次ぎ、結論を選挙後に先送りしていた。
 業界側は、現行の初乗り運賃の上限660円を、750~810円へ上げるよう求めている。理由は「運転手の労働条件の改善」である。

 02年の規制緩和以来、業界ではタクシーの台数過剰が問題になってきた。新規参入や増車が、国による免許制から許可制に自由化された。同時に、地域一律だった初乗り運賃も、上限の1割安までなら自由に設定できる。
 初乗りが500円玉1個のワンコインタクシーが各地に登場した。95年に2万5000台だった東京のタクシーは、07年3月には3万5000台へ増えた。この間の雇用の受け皿にもなった。
 その一方で、運転手の平均年収は約530万円から約400万円へ、120万円強も減った。改革の負の側面だ。

 業界側は「他産業との格差は266万円にもなり、平均労働時間も一般産業より年300時間近く長い。良質な労働力の確保もおぼつかない」などと値上げの理由を主張してきた。

 だが、労働条件が悪化したのはそもそも経営側の問題によるのではないか。
 増車が自由化され、各社は収入を増やそうと台数を増やした。車が増えれば1台当たりの売り上げが落ちる。運転手は減った分を長時間運転で補おうとする――。この繰り返しが現状を招いている。

 労働条件を改善するには、安全にも影響しかねない長時間運転を抑制する必要がある。例えば、長く運転させれば賃金を大幅に上げざるを得なくしたり、歩合給の比重をさげたり、賃金の仕組みに枠をはめることも考えるべきだろう。
 要は、経営側が安易に台数を増やしすぎたツケを運転手に負わせないようにすることだ。いい運転手を確保するため、各社に労働条件の良さを競わせる工夫も欠かせない。

 そのうえで運賃は、思い切って自由化したらどうか。運輸政策審議会は99年に運賃の自由化を求めたが、業界や自民党の反対で見送られた。

 いまの物価環境と増車競争があれば、自由化してもほとんど値上がりはしないだろう。運賃の認可制を続ける限り、いわば公認の価格カルテルのように働き、値上げすると上限に張り付く恐れがある。自由に値上げできるなら、会社それぞれの経営判断になり、むしろ下がることもあるかもしれない。

 大事なのは、規制緩和を中途半端に終わらせず、競争が消費者、経営者、運転手の3者の利益につながるように、仕組みを設計することなのだ。
 まずは大市場の東京から、試みに始めてみたらどうだろうか。
■■引用終了■■

 いろいろ、言いたいことはあるが、許し難いのは、「労働条件が悪化したのはそもそも経営側の問題によるのではないか」という指摘だ。

 経営側が労働条件を引き下げようとするのは、当然であり、タクシー業界の経営者だけが労働者を特に搾取しているというわけではない。ほかの業界だって、経営者は似たようなもんだ。だからこそ、最低賃金を定めたり、労働組合の存在を積極的に認めたりすることで、経営者が勝手に労働者をこき使うことができないようなシステムを採用しているわけだ。

 したがって、もし、一定の業界で、極端に労働条件が悪化した場合、なぜ、そのような状況が発生しているのか、その原因を突き止め、それを改善する必要がある。

 タクシー業界の場合、それは、歩合制賃金だ。タクシー業界では、例えば1万円の運送収入があったら、そのうちの50%くらいを運転手に渡し、残りを会社がとって、車両代、燃料代、管理者の賃金などに充てることになる。

 ここで、重要なのは、歩合制であるがゆえに、例えば運賃を2割値下げして、その結果、運送収入が8000円に減ったとしても、その分、運転手の取り分も減るから、会社側にとってはあまりダメージがないということだ。

 普通の業界であれば、賃金は5000円と決まっているのだから、8000円から5000円を引けば、会社側に残るのは3000円となる。もし7000円まで値下げすれば、会社側には2000円しか残らない。したがって、無謀な値下げをすることはない。

 これに対し、完全歩合制をとるタクシー業界では、8000円になっても4000円は会社に、7000円になっても3500円は会社に回される。しかも、タクシーの台数を増やすことで、会社側は減収に対処できる。つまり、8000円になって1台あたりの収入が4000円になっても、台数を20%増やせば、理論的には4000円×1.2=4800円となり、全体での収入はほぼ維持できる。もちろん、台数を増やせば、新車購入費用はかかるが、そんなに高価なものではないため、会社側の痛手は小さくてすむ。

 つまり、完全歩合制という仕組みを取っている限りは、労働条件を無視した値下げ合戦が行われる可能性が大きい。

 しかも、タクシー運賃の価格破壊(大阪では5000円以上5割引など過当競争となっている。東京では大口割引の導入程度であり、価格破壊はいまのところ、防がれている)は、アメリカの年次改革要望書による規制緩和の外圧に屈して行政主導でなされたものだ。

 そういう事情を配慮せず、「労働条件が悪化したのはそもそも経営側の問題によるのではないか」とは、なんたる認識不足、勉強不足か?

 いや、はっきりしよう。怒りを増幅させるのは、朝日新聞が自ら、労働者を切り捨てておきながら、このような社説を掲げることに対する厚顔無恥さである。

 朝日新聞は、ヘラルド朝日従業員を切り捨て、従業員はこれに抵抗して、法廷闘争に持ち込んでいる。次に引用するのは、ある従業員の投稿である。

【偽装請負やUnion Yes! キャンペーンなどについて、積極的に取り上げている朝日新聞ですが、国際編集部で英字紙「ヘラルド朝日」の編集に携わっていたスタッフの雇われ方は、まさにその偽装請負でした。

契約書面なし、各種保険なし、有給なし、日給月給だが、毎日出社し正社員と並んで仕事・・・という勤務状況でした。

2002年に全国一般労働組合東京南部に加盟し、会社に労働者としての基本的権利を求め続けましたが、団体交渉は決裂。

会社の提示した5年有期雇用と業務委託契約締結を拒否した結果、2005年7月に組合員はクビになりました。

それ以降、不当解雇を訴え裁判闘争中です。

私たちは、朝日新聞社から激しいハラスメントも受けてきました。当初18名(外国籍10名・日本人8名)だったメンバーは、いじめに耐え切れず、次々と組合を脱退したり仕事を辞め(させられ)ていき、2005年7月には残り6名になっていました。現在、私たち裁判闘争組以外、ヘラルド朝日労組のメンバーは国際編集部内には残っていません。

まだまだ苦労話はあるのですが、長くなるのでこのへんにしておきます。詳細はホームページ(www.iht-asahiunion.com)でご覧ください。】

仲間が不当に解雇されている状況に目をふさぎ、労働条件が悪化したのは経営側の問題によるとは何事か?

経営側に問題を起こさせないように、労働側が対抗できる体制を設けること、つまり、労働組合を産業別に編成し、加盟率を高めること、そういう提案を…望むべくもないわな…。

全国のメディア労働者よ、団結せよ!…あ、そういう趣旨のエントリーではなかったはずなのに…。









★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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