金融の天才
大蔵省は、「日本の工業力を金融面での支配力に変換する」と言う構想を抱いていた。これは投資王ジョージ・ソロスが実際に大蔵省官僚から聞かされた話だそうだ。日本経済を制御解体するために、プラザ合意の円高が日本経済に壊滅的な影響を及ぼすが如く装ったが、逆に円高差益で輸入原材料が安く仕入たり、政府の輸出産業振興策などで円高分の50円ほどを帳消しにし、残りは国内販売の価格に円高差益分を反映せず相殺して難を逃れていた。しかし、マスコミが円高不況を煽り国民にはひた隠した。プラザ合意での円高不況を口実に、政府、日銀は公定歩合を数度引き下げ、銀行に過剰な資金供給を開始し、特殊法人(国鉄、専売公社、、電信電話公社など)の民営化の新規公開株の値上がりで得られる巨額の含み益(購入原価と時価との差額)を海外へ資金逃避させ日本経済をクラッシュさせる制御解体を目論む、そのツールとして土地が選ばれた融資の抵当に設定する不動産が大幅な値下がりをしたら?財テクで株式投資など金融証券が値下がりしたら?当然、会社の経営は悪化し大惨事に陥る。
金融の天才は、プラザ合意、公定歩合の引き下げ、バブル、BIS規制(自己資本比率=融資総量限度額)、時価会計など日本経済を制御解体するツールを施行、日本の工業力を金融面での支配力に変換する計画を実行に移し成功した。1990年代に入ると融資先の経営状態の悪化、いわゆる銀行の「不良債権」が深刻な問題となる。日本の輸出産業は海外、東南アジアへと低コストな条件を求めて逃げ出した。タイ、韓国、インドネシア、マレーシア、中国などの東アジアは日本産業の進出で、空前の活況を呈する事になった。世界金融資本は大量の資金を東アジアへと投入し活況の度合が激化する。1994年の東アジアの活況を経済学者ポール・グーグルマンは東アジアの活況に懸念を表明、世界資本は、94年暮れに「テキーラショック」を発生させた。これにより米国経済が一時低迷し、米国経済を懸念した投資家がドルを売り、円を買う予定通りの行動に出る。海外でも「通貨マフィア」と賞賛される大蔵省官僚OB行天豊雄らの精緻な計画、金融の天才は金融市場の売り呼びと買い呼びを一斉に同時行動に移させるツールを開発、金融デリバティブ商品である。投資信託なども市場トレンドを追随し高騰や下落の幅を増幅させるが金融デリバティブ商品もトレンドに弾みを付け増幅を大きくする作用を持つ。
金融デリバティブ商品や投資信託は常に市場のトレンドを追随する性質を持つ、市場が生み出すトレンドが購入時原価と時価とのスプレッド(差額)を産み出す。買いそびれれば含み益が飛ぶ、売り遅れれば含み損が生じる。これを回避するために投資信託や金融デリバティブ商品はトレンドを追随して含み損を市場に転嫁し、自己の利益を確保する。また商業銀行や投資銀行の自己販売部門も自社の利益を転嫁させるために投資信託や金融デリバティブ商品と同じ行動を執る。同様に世界金融資本は、通貨デリバティブの商品も販売する。日本の中小輸出産業の大半は急激な円高差益から身を守るために、「ノックアウト・オプション」と言う通貨デリバティブを購入していたが、この通貨デリバティブは、ある限度額の下落を起こすとデリバティブの機能を失効させるものであった。日本の中小輸出産業はノックアウト・オプションが安価であったために購入していたが、94年の暮れから始まったテキーラショックで円は一時90円台を割り込む異常な円高を示し、デリバティブ商品の機能が失効し大きな損失を被る。投資王ジョージ・ソロスは、その惨事を「彼らが一斉にノックアウトされた時」と形容する。
日本は国内の低金利や円高不況を嫌い、一斉に資金を東アジアへと向かわせる。世界金融資本の一員である日本の壮大な計画は残虐である。一例を挙げると韓国はBIS基準を採用していたが、監督省庁の中央銀行総裁は日本と共謀していた。韓国の中央銀行総裁は期間一年以上の融資には登録を義務付けたが一年未満の融資には全く規制を与えなかった。その結果、世界金融資本の融資は韓国に集中する結果となる。OECD(経済協力開発機構)の規約では、韓国と取引する海外の銀行は特別引当金を積む必要が無かった事もあり、韓国に対する融資は一年未満のものに集中し、韓国国内のアジアバブル崩壊の惨劇を一層深刻なものに追いやった。行天豊雄ら大蔵省官僚の精緻な「日本の工業力を金融面での支配力に変換する」いわゆる「大東亜共栄圏」岸信介が描いた植民地構想を実現させ、日本および東アジアの経済の制御解体計画は成功した。
ポール・グーグルマンは東アジアの活況に懸念を示し、「いまの日本の経済政策は一般的なものに当てはまらない状況である・・・・・・インドネシアの危機は人類の一員として心配であるが、世界経済への影響は少ない。世界の全ての人間を引き込む恐れがあるのは、日本の経済政策である」と懸念を示した。日本のプラザ合意からの一連の経済政策はアジアをなぎ倒す結果となる。
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