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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『灘高キムタツの東大英語リスニング』木村達哉

2006年04月27日 | 英語リスニング
 
東大の二次試験に的を絞ったテキストです。東大のリスニングテストの特徴を徹底的に分析し、その対策を立てたもので、かなりのボリュームがあります。本試験10年分(30の英文)に相当する模擬テストを収録、と書いてあります。至れり尽くせりの分析ができていますから、東大といえばドラゴンイングリッシュ、の図式が変わるかもしれないほど、徹底されています。

東大リスニングの特徴は、とにかく英文が長いということ。スクリプトだけ見ているぶんには、長いとは感じないでしょうが、赤本のCDを聞いてみればすぐにわかりますが(音質が悪い)、それを本番の緊張の中でずっと集中して聴くには訓練が必要で、その要望に応えるだけの構成になっています。

当然のことながら、センター試験のリスニングをはるかに越えた集中力が要求されるだけでなく、英文のレベル自体もぐっと上がります。その点においても本書は良く研究されており、政治、経済、環境、言語、歴史、科学などに関して、新旧の話題をまぜ、いかにも出題されそうな英文を、出題形式も考慮しながら易から難へ配列してあります。

英語講師ならみなご存知だと思いますが、言い古された日本論や西洋文化論を排除した、新しい話題を含むテキストというのは極めて少なく、仕方なくネットや原書を当たってみても、難易度、長さなどの問題などから、めったに演習に最適の英文を見つけることはできません。そういう意味でも高く評価できます。高2や東大よりやや下のレベルの生徒たちには、読解テキストとして用いても良いでしょう。

もう一つ、見逃せない利点は、ネイティブがおそらく5・6人?正確にはわかりませんが、いろいろな発音が聴けるということです。男性の低いこもった英語と女性のハスキーな英語はまったく違うだけでなく、個人のレベルで、どうしても発音にクセがあります。よく1人だけまたは男女1人ずつというリスニングテキストがありますが、不十分だとかねてから思っておりましたから、その点をもっと宣伝すれば良いのに、と余計なことも考えてしまいます(笑)。

注文を付けるとすれば、センター試験対策編で用いていた、3sメソッドをぜひ本書でも踏襲して欲しかった。語彙・文法の説明が丁寧であれば、あるいは単語集などが付いていれば、先に述べた読解のテキストとしても、極めてユニークになるし、当然受験生の時間節約にもなるでしょうから。もう一点、トイック、トフル対策にもと書いてありますが、本書はあくまで東大、あるいは難関私立向けです。

以上、見てきたように、東大リスニング特化というテキストですから、このブログで紹介してきた他のものとは同列に比較できませんが、本書の目的は充分達せられているものとして非常に高く評価できます。アドバイスも的確です。

p.s. このブログを継続的に読んでいる生徒は、私が時々キムタツ先生ご本人からコメントをもらっているので、お世辞、つまり“知り合いだから褒めてるんだろう”と勘ぐってしまう人がいるかも知れませんが、心配ご無用。本書が売れても(実際、よく売れていますが)私には何も利益はありませんから(笑)。トップクラスを目指す生徒は利用したら良いと思います。そのかわり値段もトップクラス。(あっ、余計なことを…)

http://tokkun.net/jump.htm

灘高キムタツの東大英語リスニング

アルク

詳細


『灘高キムタツの東大英語リスニング』木村達哉
アルク:252p:2310円


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (都内塾講師)
2006-04-28 11:49:56
なかなか良いが、問題量が多過ぎて、生徒たちにはあまりさせられません。もっとも東大をねらってるのはほとんどいないので、、、
コメント恐縮です (VIVA)
2006-04-28 21:11:03
おっしゃるように、確かに、普通のレベルの生徒には負担が多すぎてします可能性がありますよね。ですからリスニングならやはり、東大レベルの生徒で、その下であれば、私は読解に使えると思っております。また、ぜひご意見をお聞かせ下さい。
ありがとうございます (キムタツ)
2006-04-28 22:25:37
灘高の木村です。いつもお世話になっております。

ご紹介いただきましてありがとうございます!



読解に使うという発想、全くありませんでした。

なるほど…ご指摘ありがとうございます。

リスニングをメインに、さらに数をたくさん

収録したかったもので、ページ数の関係もあり

3Sまでの細かい解説ができませんでした。



6月末に『東大英語リーディング』を出版します。

またよろしければそちらもご批評賜りますれば

幸いに存じます。いつもありがとうございます。



ありがとうございます。 (VIVA)
2006-05-01 14:57:32
木村先生、こちらこそ、毎回わざわざコメントを頂戴しありがとうございます。出版の制約のようなものが分からずに勝手なコメントお許し下さい。東大英語リーディングにCDは付いているのでしょうか?いずれにしろぜひ拝見させていただきます。
それが・・・ (キムタツ)
2006-05-01 22:43:00
実は企画段階でCDを付けるか付けないかをすごく

話し合ったのですが、ボリュームが大変なもので

制作費と価格との関係を考えて、無理でした。

価格を上げると生徒らに負担がかかりすぎるので

苦渋の選択でした。



ところで実はCD付きの長文読解モノを作りかけています。

それはおそらく来年アップになると思いますが

また僕のブログで紹介することもあると思いますので

よろしくお願いします。



そろそろ (VIVA)
2006-05-02 15:24:58
正直、木村先生のリスニングのテキストは、失礼にもたくさん注文を付けましたが、他書に比べて優れていると思います。特に本書は、対象は絞られるものの抜きん出ています。もちろんお世辞じゃありませんよ(笑)。

ですから、そろそろ先生の方が出版社より発言力が強くなって、『オレが作りたいものを作るんだ!』と言って、生徒のための読解や文法のテキストを作って下さい。何年後になっても『名著』と呼ばれるようなヤツをど~んと出して下さい。

木村先生やドラゴンイングリッシュの竹岡先生方や他のカリスマ教師が競っていただくことによって、生徒は良い参考書を手にするという利益が得られます。期待しております。

もちろん東大英語リーディングも来年の本も、批評させていただきます(本当に偉そうですいません)。