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『キリスト教と日本人』 井上章一

2007年03月09日 | 新書教養


キリスト教と日本人.jpg


本書の著者、井上章一氏の『美人論』 が大変おもしろい一冊でしたが、本書も日本の歴史や宗教、そして社会全体を考える上でいろいろな興味深い視点を示してくれる本でした。

私にもクリスチャンの知り合いが何人もいますが、どちらかといえばまじめな人が多いように感じますが、偏見でしょうか(笑)。少なくとも筆者と同じ感想で、色と欲におぼれる俗物的なキリスト教信者のイメージは日本ではないように思います。


受験においてもいわゆるミッション系と呼ばれる学校の人気は、仏教系を圧倒していますし、坊主が境内でクリスマスパーティーをすることはあっても、教会で彼岸やお盆の催しはないでしょう。また仏教徒が教会で結婚式を挙げるのは珍しくありませんが、その逆は聞いたことがありません。


これほど現代においては人気の高いキリスト教、またはその行事ですが、それでも日本での信者はわずか1%ほどで、お隣の韓国は30%以上だそうです。

いったい日本においてキリスト教がどのように受け入れられてきたのか、珍説や俗説がどういう背景で生まれ、どのように広まったのか、またその俗説は本当に研究するに値しない、的外れなものなのかなどをさぐっていきます。


明治憲法下でも一応信教の自由は保障されていましたが、その約20年前に岩倉具視が米国などに不平等条約の改定を交渉するために、渡航した折、相手に言われたのが、キリスト教を信じない未開の民とは同列には扱えないということらしいですね。

ところが日本側にしてみると、聖書にはたくさん奇跡の話が出てきて、とても信じられない。今でいうカルトと見なしているわけです。オウムの空中浮揚を信じられないように、当時の人はキリストが生き返ったなどの話を受け入れられないわけです。

それでも、確かに文明が発達しているのを目にした日本人の驚きはいかばかりでしょう。西洋へのあこがれが強い人々にキリスト教がどう映ったのか、記録などから検証しています。


それ以前、かなり長い期間に渡って、キリスト教と仏教は同じものであると見なす考え方がありましたが、それは似ている点があるからなのですが、想像がつきますか。聖徳太子はキリストと同じように馬小屋で生まれたと言われますね。そのあたりを考察しています。


目次を紹介しておきます。


第1章 幻想のネストリアン(アダムと空海;世界のなかの高野山 ほか)

第2章
 異端の魔術(天草騒動と由比正雪;謀叛人、あるいは売国奴 ほか)

第3章
 仏教と神道と(江戸のアレクサンダー・ロマン;仏教異端説 ほか)

第4章
 ユーラシアのなかで(日本人とユダヤ人;フランス・ルネッサンスの大奇人 ほか)



それにしてもさまざまな珍説奇説があったのだとはじめて知りました。明治初期、キリスト教が、ヤソ教と呼ばれて白眼視されていた頃の様子は、三浦綾子の『塩狩峠』 に印象深く、感動的に描かれていますね。本書は明治までで終わっています。


それ以降、冒頭で述べたような、現代の状況にいたる過程は別の機会に書きたいと筆者は述べています。ぜひ続編を読みたいと思っています。



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (milesta)
2007-03-09 22:32:15
>それ以前、かなり長い期間に渡って、キリスト教と仏教は同じものであると見なす考え方がありましたが

そうなんですか!?興味深いです。
以前読んだ本で、日本在住のユダヤ教のラビが、神は一つだけど伝わり方が国(地域)によって違うと仰っていたのを思い出します。
日本にキリスト教徒の割合が少ないのも、完全否定しているわけではなく、「それも神様のうちの一つよね。」と寛容に受け止めているからのような気がします。

珍説俗説に焦点を当てた本というのは面白いですね。目次だけじゃ想像がつかないくらい怪しい感じがしますが・・・。
こんばんわ (ふる)
2007-03-10 00:43:46
欧米の人に「神道と仏教の違い」について聞かれ、それを英語で答えるというのはなかなかキツイですね。そして、ヨーロッパ辺りに住んだことがある人なら一度は体験する通過儀礼ですが(笑)

しかし、カソリックとプロテスタントの違いにかなり突っ込んだ質問をしたり、宗教改革の意義など聞いてみると、意外と答えられなかったりして。

つまり自分の国のことはあまり知らないってことではないかな?などと思います。

追伸:記事とは無関係のメッセージ、ちょっとVIVAさんに向けて書いてみたのでTB送ります。
milestaさん (VIVA)
2007-03-10 11:57:10
当時の人々なので情報も限られた中のことですが、仏教・キリスト教とも天国・地獄・告白・懺悔などもちろん呼び方は違うのですが、似ていると考えられていたようです。

どちらが先(主流)という点では、両方あるのですが、中には釈迦とキリストが同一人物とする記述まであるそうです。

旧約聖書にベベルの塔という逸話があり、それによると、長くなるので省きますが、要するに世界中の人々がユダヤ起源になるということです。日本人はシナイ半島から来たと(笑)。もちろん今ではまともに扱われていないそうです。
ふるさん (VIVA)
2007-03-10 12:04:23
日本人はやっぱり宗教に関しては鷹揚なんだなと感じました。島国だからでしょうかね。

別の本ですが、西洋人の中にももちろん信仰に関して、熱心に活動していない人もたくさんいるらしいのですが、そういう人々は自分が怠け者のキリスト教徒であることに自責の念を抱いていると書いてありました。

日本人は超怠け者の仏教徒ばかりですが、罪の意識はありませんよね。


ところですばらしい記事のTBありがとうございます。感激しました。これをご覧になっている方、ぜひご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/full-chin/e/51ff9f56fa140fa9cc01f5df20ff76ea



Unknown (キャンキャン)
2007-03-10 13:16:24
12月24日にはツリーを飾り、31日には寺の鐘を聞き、1月1日には神社へ行く。。。
ほんとごちゃ混ぜな私も、一応仏壇に手を合わせています。。。
キャンキャンさん (VIVA)
2007-03-10 13:35:57
まったく同じでございます(笑)。田舎の家には仏壇と神棚両方あっても全然違和感ありません。生まれた時からそうでしたから。

きっと小さい時にこっちは“手をパンパンしない”という程度しか教わっていませんね(笑)。