倉敷観光の目玉の一つである大原美術館は、市内の江戸時代の面影を残す旧市街(美観地区)の運河に沿って建つ1930年に設立された日本最初の西洋美術中心の私立美術館です。
この美術館の創設者、大原孫三郎はクラレの創設者でもある実業家であり、彼より1歳年下の友人の画家、児島虎次郎に選択をまかせて購入した西洋の近代美術作品を中核として、国内画家の作品や中国・オリエント古美術など幅広く展示されています。
訪れたのが1月の半ばで観光シーズンから外れていたためか、土曜日の午前中でも館内は空いていて、落ち着いて観ることができました。
西洋絵画の常設展示品には19世紀、20世紀の絵画の巨匠たちの代表的な作品が含まれ、とても見ごたえがあります。
近代絵画の中ではゴーギャンの「かぐわしき大地」、モネの「睡蓮」やモディリアーニの「ジャンヌの肖像」などがポピュラーな作品でしょうが、僕は個人的にお気に入りの画家達、モローの水彩画「雅歌」やらルドン、コローの作品の前でしばし釘付けとなりました。
近代絵画以降の展示作品がほとんどですが、それより2世紀以前に描かれたエル・グレコの「受胎告知」は別格の扱いで、この作品のみ単独で別室に展示されていました。グレコも僕の大好きな画家で、彼の作品は幻想的かつ独創的な構図が特徴的ですが、この傑作も同じ主題を扱ったフラ・アンジェリコやダ・ヴィンチの作品と比較し、より神秘性が深く劇的な表現となっていて、作品を眼前にして新たに強いインパクトを受けました。
ピカソのキュビズム以降の作品が2点、「鳥籠」と「頭蓋骨のある静物」が展示されていて、今まで彼のキュビズム以降の作品には余り興味を覚えなかったけれど、この2作品は"美しい"と心底感じました。1925年作の「鳥籠」は彼の新古典主義時代の作品だそうだけど、青の時代の作品と通じる抒情性が感じられました。この時期の他の作品も観てみたい。
国内の洋画家の作品を中心に展示している分館が工事中で休館していたのが残念でしたが、本館でその主要作品が展示されていました。熊谷守一の「陽の死んだ日」、佐伯祐三の「広告“ヴェルダン”」や関根正二の「信仰の悲しみ」などがとくに印象に残りました。
(参考)
・大原美術館HP
・倉敷市美観地区(Wikipedia)
・地図情報:大原美術館周辺
・モローの作品紹介(My HP)
・ルドンの作品紹介(My HP)
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