集成・兵隊芸白兵

 平成21年開設の「兵隊芸白兵」というブログのリニューアル。
 旧ブログ同様、昔の話、兵隊の道の話を続行します!

岩国の隠れた?忘れられた名将と黒獅子旗(その8)

2018-07-12 16:19:31 | 周防野球列伝
 ものすご~く久々の、「黒獅子旗」シリーズです!
 3月から中断していたこのシリーズを再開した理由は…13日から、第89回都市対抗野球が始まることを思い出したからです(;^ω^)。
 「黒獅子旗シリーズ?何それ?よくわからん!でも読んでみたい」というご奇特な方は、ブログ左方のカテゴリーのうち「周防野球列伝」をクリックしてみて下さい。
 岩国の生んだ名将・岡村寿さんと、その畢生の名著「青春・神宮くずれ異聞 宮武三郎と助っ人の私」へのゆがんだ愛溢れる?文章が羅列されておりますので…(;^ω^)。では、ひさびさの本編スタートです!

 昭和30年8月3日の後楽園球場。
「夜の後楽園球場のフィールドは明るかった。
 夜空をななめに断ちきるように幾条もの照明がのびてきて、マウンド周辺はまるで総天然色映画のように色あざやかだった。観客を呑みこんだ巨大なスタンドは不気味にふくれて、こちらは白黒映画のようにぼんやりと見えた。」(「青春」より)
 そのマウンドに立っていたのは、「都市対抗野球60年史」では、専売千葉のエース小宮圭三郎となっており、当然こちらが事実なのですが…本稿では、ネタ元の「青春・神宮崩れ異聞」にリスペクトを捧げる観点及び、あとは単純に面白さを優先する観点から(-_-;)、「専売の先発は『狂介』」のままで、試合の経過をお話ししたいと思います。

 「狂介」がアンダースローから繰り出す剛速球は、試合開始と同時に、全開のパワーで大昭和製紙打線に襲い掛かります。
 「プレイボールの宣告と同時に、狂介は第一球を投げ込んできた。ドマンナカへ、うなりをあげて、凄い球がきた。サインも見ずに狂介は二球目のモーションを起こし、試合開始のサイレンが鳴り終わらないうちに、二球目が吹きあがってきた。」(「青春」より)
 まだまだ国民的人気行事だったころの東京六大学野球・早稲田のスター選手をそろえた大昭和製紙打線も、雄叫びを挙げて噛みついてくる昇龍の如き剛速球に手を焼き、なかなか得点をたたき出すことができません。
 ただ、大昭和のエース山本投手も好投。この大会、大昭和製紙は3位(当時の都市対抗には、3位決定戦があった)を勝ち取っていますが、3位決定戦までの5試合のうち、4試合で先発を務めた百戦錬磨の好投手は、ポっと出の専売打線に、そう簡単に付け入るスキを与えてくれません。

 スコアボードには両軍、ゼロがズラズラと並び続けます。

 一塁側に陣取った大昭和の応援団は、そして、「大昭和の圧勝ショー」を楽しみに見に来た観客は、信じられないといった面持ちでした。
「『大昭和製紙』の応援団の前を通るのは気分がよかった。かれらは信じられない思いで、ゼロがきれいにならぶスコアボードを眺めているはずだった。」(「青春」より)
 …あの徳丸幸助が、荒川宗一が、石井藤吉郎が、北川桂一郎がいる強力打線が…2年前、全鐘紡を打ち砕いたあの打線が点を取れない…なぜ…
 その一方で、岡村さんは「ナニか」に一矢報いたという気持ちでいっぱいでした。早大野球部を辞めてからなめて来た苦渋の報復?を、狂介とともに、この一戦に思いっきりぶつけていました。
「いったいこのピッチャーは誰だ。かれらはメンバー表を見て、狂介の出身校が、名前を見たこともない野球の無名校であることを知るだろう。もっと注意深く見る人は、キャッチャーも同じ高校卒なのに気づくだろう。いったいこの周防岩国とはどこに在るんだ?」(「青春」より)
 岡村さんは5回表、大昭和の二盗を矢のような送球で刺し、狂介を掩護します。

 戦況は完全に膠着し、両軍の応援団、特に、専売千葉応援団のボルテージは最高潮に達していました。
 野球はイマイチでも、会社は国営企業。大勢の社員を動員し、声を限りに、善戦を続ける野球部を応援します。
 宮武監督はベンチの中央に陣取り、片足をグラウンドに上げ、実にキマった姿で戦況を見守り続けます。
「私は祈る神がいれば、祈りたかった。なんでもさしあげます、と私はいった。もしジプシー・ローズが私のカノジョなら、さしあげます。『ミス専売』でもいいです、さしあげます。『ミスピース』でもいいです。裸にむくなりなんなりと好きなようにしてください。」(「青春」より)
 岡村さんの祈りは果たして通じるのか。回は中盤5回を終了し、0-0、両軍無得点のまま、折り返し地点を迎えます。



【第8回参考文献】
「青春・神宮くずれ異聞 宮武三郎と助っ人の私」(大島遼(岡村寿)・防長新聞社)
「都市対抗野球六十年史」毎日新聞社
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2 コメント

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Unknown (老骨武道オヤジ)
2018-07-12 19:59:11
格闘技大好き人間が何故、一昔前の野球が好きなのか?それは一昔前のわが国の大卒エリート達が「文武両道」の危うさに惹かれたのが原因かもしれません。勉学の素質は武道&勉学ともに“凡人努力型人間=私”にとっては如何ともしがたいものでありますが、勉学に優れ、なおかつ硬球に当たれば命にかかわる“野球”、しかも単純筋肉バカには絶対出来ない「文武両道」で相手を下す“野球”・・勉学しかできない頭でっかちの秀才どもより“秀才が勝負する野球人が上なのだ!で、”かっての大学野球経験者が戦前なのにプロ野球を創設した偉業!”・・残念ながら単純格闘技バカ先輩どもが牛耳る“格闘技界”でそうした偉業は無理かもしれませんな・・チャンチャン・・格闘技の方が“野球”より上と思っていますがね・・だって実社会では役に立つのですからね・・
ありがとうございます! (周防平民珍山)
2018-07-13 18:34:16
 老骨武道オヤジさま、まさか、誰も書き込みしないだろうと思っていた記事に登場いただき、感謝しきりでございます。ありがとうございます!ちなみに、「格闘技の方が野球より上」、ワタクシも同意見です。

 老骨武道オヤジさまの意見も頷首するところ大なのですが、ワタクシ的な「格闘技好きには一昔前の野球好きが多い」理由としましては…特に高校野球がそうなのですが…「歩が大いなる知恵と、少ない力を集めて飛車角に勝つ」ができていた、というところでしょうか。
 高校野球は昭和の時代までは、各地のコミュニティに密接したスポーツであり、学校や地域ごとに、まさしく「個性」がありました。
 しかし現在は、身体能力に優れた若者をかき集め、どんな場面でも、ウェイトで鍛えたパワーで金属バットをマン振り!という野球ばかりが跋扈しており、「選手の個性を生かす」という美名のもと、「野球クローンの集団による、ファシズム高校野球」をやっているようにしか見えません。

 格闘技は負けて学ぶものが多く、実際の生活に役立つ(;^ω^)のですが、一昔前の野球もその色がありました。今はもう勝利至上主義であり、そんなカケラもないですが…。

 ともあれ、コメント大変ありがとうございました!

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