格差と貧困ゼミぶろぐ

東京大学「格差と貧困を考える」ゼミのブログです。授業やフィールドワークの内容をお伝えしていきます!

【駒場祭特別企画】3・11以後の社会に学生はどう関わるか―原発・震災・貧困―

2011-11-21 15:07:44 | はじめに

東京大学駒場祭特別企画

3・11以後の社会に学生はどう関わるか

原発・震災・貧困

 

 311日に発生した東日本大震災から8ヶ月が経った今もなお、311以後に噴出した課題は山積しています。国や自治体によって進められる「復興」の背後で、被災者の貧困問題は不可視化されており、いまだに原発事故の収束のめどは立たず、土壌や食品の放射能汚染は広がる一方です。

 

 しかしながら、原発震災の現場の実態とそれに対する取り組みは十分に共有されているとは言えないのが実情ではないでしょうか。

 

 本シンポジウムでは、私たち学生が3・11以後の日本社会をどのように考え、アプローチできるのかについて議論していきます。

 

 第一部では、Twitterを通じて原発震災に関し独自の発信をされているメディアジャーナリストの津田大介さんと、福島での現場取材を続けていらっしゃるフリージャーナリストの藍原寛子さんをゲストとしてお招きします。

 

 第二部では、3・11以後の様々な課題に取り組む学生NGONPOスタッフの方をお招きしてパネルディスカッションを行い、学生自身の手で議論していきます。

 

 多くの方のご参加をお待ちしております。

 

 

◆日時 1126日(土)14:0017:15

 

◆場所 東京大学駒場キャンパス7号館4761教室

http://www.c.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

東京都目黒区駒場 3-8-1

京王井の頭線「駒場東大前駅」東口徒歩0

 

◆講師

 [第一部]

 津田大介(メディアジャーナリスト)

 藍原寛子(医療ジャーナリスト)

 [第二部]

 山脇直司(東京大学教養学部教授)

 渡辺寛人(NPO法人POSSE

 竹田春加(NPO法人セイピースプロジェクト)

 内尾太一(NPO法人人間の安全保障フォーラム)

 

◆参加費 無料 ※予約不要

 

◆プログラム

13:30 開場

14:00 開会挨拶

 

[第一部]

14:10 藍原寛子さん講演「現地福島での取材から、東京の学生に伝えたいこと」

14:40 津田大介さん講演「ポスト311におけるメディアの役割」

15:10 質疑応答

15:30 休憩

 

[第二部]

15:45 パネルディスカッション「311以後の学生NGONPOの取り組み」

(コーディネーター:山脇直司さん)

17:15 閉会挨拶、終了

 

◆ゲストプロフィール

津田大介

1973年東京生まれ。メディアジャーナリスト。早稲田大学社会科学部卒業。IT・音楽ジャーナリストとして、ネット、音楽、ハード、マルチメディア系の記事を執筆。2009年に執筆した『Twitter社会論~新たなリアルタイムウェブの潮流~』(洋泉社)が話題を呼び、日本におけるTwitterジャーナリストの第一人者としても認知されている。

 

藍原寛子

福島県福島市生まれ。千葉大学文学部行動科学科卒業。福島民友新聞社取材記者兼デスク、マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。現地福島で除染や賠償の問題について取材を続けている。

 

山脇直司

東京大学教養学部教授。専門は公共哲学。12月に『3.11の衝撃を後に、公共哲学からの応答』(ちくま新書)を出版。

 

渡辺寛人

一橋大学大学院社会学研究科修士課程。NPO法人POSSE(ポッセ)スタッフ。被災地に常駐し、仮設住宅での見回りや生活相談事業などを行う。

 

竹田春加

日本女子大学3年。NPO法人セイピースプロジェクトスタッフ。原発事故に伴う福島から東京への自主避難者への支援活動を行う。

 

内尾太一

東京大学大学院「人間の安全保障」プログラム博士課程。震災後、NPO法人「人間の安全保障フォーラム」を駒場キャンパスに設立。東大生を中心に、被災地へのボランティア送り出し事業を展開している。

 

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「格差と貧困を考える」ゼミは東京大学教養学部公認の全学自由研究ゼミナールの一講座です。ホームレス相談など貧困問題に精力的に取り組んでいらっしゃる戸舘圭之弁護士(代々木総合法律事務所)をメイン講師としてお招きしています。講師と学生が一緒になって現代日本の格差と貧困の問題を考えていくゼミです。

 

連絡先:090-7772-4058 nowhilljp@yahoo.co.jp(教育学部4年・今岡)


格差と貧困ゼミぶろぐへようこそ!

2011-11-20 00:00:00 | はじめに

 ここは、東京大学「格差と貧困を考える」ゼミ(格差と貧困ゼミ)のブログです。

 
 皆さんは普段日本で生活していて、「格差」や「貧困」を感じることはありますか? 

 ここ数年の間に、ネットカフェ難民やワーキングプア、派遣切り、ブラック企業といった言葉がニュースでよく聞かれるようになりました。ですが、ニュースで聞いてはいても、日常生活の中でその実状を直接知る機会はそう多くありません。

 そこで私たちは、格差と貧困問題の当事者の方や彼らを支える活動家の方から直にお話を聞くことで、日本の貧困の実態に迫るという活動を行っています。講義の後にはディスカッションをして、ゼミ生同士意見を出し合い考えを深めています。
 
 

 お話を聞くだけではなく、時には自分の目で見ることも必要です。そこで、ホームレスの多いことで有名な町「山谷」にフィールドワークに行ったり、派遣切り裁判の傍聴に行ったりという活動も行っています。
  
 

 このブログでは、ゼミのそういった活動内容を随時報告していきます。皆さんが貧困問題を考えるきっかけにしてもらえれば幸いです。

 
 このゼミは、東京大学の学生スタッフが、現役の弁護士である戸舘圭之講師とともに運営しています(講師のプロフィールはこちら→http://www.yoyogi-law.gr.jp/lawyer/profile.html)。受講者を学期毎に募集しているので、少しでも興味があればぜひ来てみてください!第1回目は10月6日(木)の5限です(教室は決定次第お伝えします)。
 また、東大の学生でなくても参加できます。学外からの参加を希望される方は一度ご連絡ください。


フィールドワークwihスープの会(6月18日)

2011-10-03 15:49:14 | 活動報告

6月18日はスープの会の活動に参加するフィールドワークを行いました。

スープの会は新宿駅周辺のホームレスの方々に毎週土曜日にお味噌汁を配りながら、ひとりひとりとコミュニケーションをとる活動を行っています。電話相談のビラも同時に配り、土曜日以外でも何かあればすぐに相談できる体制を整えています。

また「風まちサロン」を運営しており、地域の方々が誰でも集える場所をつくっています。

ホームレスの方が自立し家に住むようになっても、地域住民と上手くいかずにまたホームレスに戻ってしまうことがよくあったそうです。

それを防ぐためにも誰もが集えるサロンで交流を深めようとしているのです。

 

僕たちはお昼過ぎにまず「風まちサロン」に伺い、夜に配るお味噌汁と一緒に作らせていただきました。

料理をしながらこれまでの「スープの会」の歩みについてお話をうかがいました。

最初はコンセプトへの理解がなかなか得られず、地域住民の方々に白い目で見られることもあったそうです。

しかし10年経ち徐々に交流の輪が広がってきたとおっしゃっていました。

地道に長い間努力することが信頼と理解を得るためには大切だと感じました。

 

 

お味噌汁はタマネギ、人参、椎茸、キャベツ、もやし、かぶ、ジャガイモetc...覚えられないほどたくさんの具が入って栄養満点!!

 

19時に新宿駅の集合場所へ。

集まった方々には、初めての人もいれば何年も続けている方もいました。

3グループに分かれてそれぞれ担当場所へ向かうことに。

いつもは気になりながらも素通りしてしまっていたホームレスの方々に声をかけました。

 

 

「こんばんは~スープの会です。温かいお味噌汁はいかがですか?」

「お~ありがとう!いただきます^^」

 

 

人通りが多いなかでみんなに無視され続けるのは非常につらい。

目があっても無視されるようなことが続くと、自分が存在しているのかがわからなくなる。

本当は誰も自分のことが見えていないのではないか。

 

不安な気持ちがいろいろ出てくるそうです。

声をかけて味噌汁を配る、それだけでも自分が社会の中で生きているということを実感できると言っている方がいました。

 

当日は雨が降っていたので都庁付近の屋根があるエリアは100人近い人が集まっていました。

スタッフの方々は顔見知りになっている人もたくさんいるようで、一度話し始めるとなかなか止まらないほど盛り上がっていました。

フリーダイヤルの電話相談チラシも忘れずに配ります。

やはり悪徳業者に「いい仕事がある」とだまされそうになっている人もいて、声かけをして注意を喚起していかなくてはいけないと感じました。

リーマンショック以降は20代30代の若い世代の人も増えてきたそうです。

自分は関係ない、といって無視していられる問題ではないと思います。

 

味噌汁を配り終わったらまた集まり、報告会。

 

○○さんを最近見かけていない。

△△さんがまたお酒をよく飲むようになった。

☆☆さんが今日はとても笑顔で機嫌がよさそうだった。

 

毎週活動を続けているからこそわかる、ひとりひとりの変化。

人と人との交流を長く続けることの大切さを実感したフィールドワークでした。

 

スープの会の活動はいつでも誰でも参加できるので、気になる方は個人でも参加してみてはどうでしょうか?

 

文責 松本 駿


フィールドワーク@山谷(6月11日)

2011-10-03 13:16:52 | 活動報告

6月11日に希望者を募って山谷へフィールドワークに行きました。

☆山谷とはなんぞや☆

僕もこのゼミで学ぶまでは何も知らなかったんですが、南千住駅近くにあるドヤ街地域です。

で、僕は「ドヤ街」も知らなかったので軽く説明すると、日雇い労働者が多く住む街です。一泊2000円程度の安い宿が密集しています。

低賃金で不安定な職を点々としている人が多いようです。僕たちは昼過ぎに訪れたのですが路上に段ボールを敷いて寝ている人も多く、かなり疲れているように見えました。

 

私たちは日本キリスト教団・日本堤伝動所メンバーの高澤充朗さんに案内してもらいました。

高澤さんは長年山谷における様々な問題の解決に取り組んでこられた方です。当日も山谷の歴史や問題について詳しく説明してくださいました。

まず南千住駅に下りて山谷に向かう途中でスカイツリーが見えました。

そのときに高澤さんがおっしゃった「発展の陰には汗水たらして働いている低賃金労働者がいる。立派なスカイツリーのすぐ近くに山谷のようなドヤ街があることを知ってほしい」という言葉が印象的でした。

 

 

歩いていると徐々に格安宿が増え始め、日雇い労働者の方々とも会うようになりました。

疲れて路上で寝ている人、友人と談笑している方、とぼとぼと歩いている方と様々でした。

 

 

まず炊き出しを行っているキリスト教の伝道所に伺いました。

毎週土曜日の朝にカレーを作って配っているということでした。

ボランティアは随時募集しており、連絡をしなくても土曜日の朝に訪れれば参加できるそうです。

ただ食事を提供するだけに見えますが、そこにはコミュニケーションが生まれます。相談事を聞いてくれる人がいるということが、とても大事なのではないかと思いました。

無料診療所やホスピスなどもありました。

 

都に悪いイメージをつけたくないという理由で地図から「山谷」という地名を消すような動きがある一方で、地道に支援を続けている方々がいるというギャップ。考えさせられました。

 

 

最近はネットカフェなどで寝泊まりする人も増え、日雇い労働者の実態が非常につかみにくくなっています。

山谷に暮らす人数も減少しており、最近は外国人バックパッカー向けに改装する宿も出てきているようです。

今は山谷の転換期なのかもしれません。

しかしその動きが加速すると、山谷に暮らしていた労働者は強制的に追い出されるような事態を招くかもしれません。

 

フィールドワークの最後によった公園に鼻歌をうたっている男性がいました。

声をかけたところ、翌日の職が見つかったから嬉しくて歌っていたそうです。

「働くことができる」ということがどれだけ大切なことかということに気付かされた瞬間でした。

 

今後も自分たちの目で見る活動を増やしていきたいと思います。

 

文責  松本 駿

 

 


ジャーナリストの語る貧困問題

2011-07-07 23:00:00 | 活動報告

2011年度夏学期の最終回。元朝日新聞編集委員・和光大学教員の信三恵子さんをお招きし、労働問題をどう報道するかについてお話し頂きました。

竹信さんはご自身の労働がリアリティだったということで女性労働の担当となり、さらには労働問題の担当になったそうです。この「リアリティ」が今回のお話の鍵です。

 

1.マスメディアは水道水である

・水源地   → 浄水場(ろ過) → 水道水

 もとの情報 → マスメディア  → 提供される情報

・メディアリテラシー=情報は加工済みのものという意識

 

2.マスメディアの担い手たちとその限界

マスメディアの担い手はそもそも大卒の上層ホワイトカラー男性が8~9割を占めており、情報入手先も同様の階層であるため、同じ階層の中で情報が回っていることになる。

・記者クラブでは情報の占有だけではなく官庁から流れてくる情報をそのまま流す現象が起こっている。

・以上の理由から、マスメディアの担い手の大部分が労働問題へのリアリティが薄い

 

3.労働のリアリティをどう伝えるか

「主婦パート」という見えない非正規雇用。日本の現在の労働は「妻付き男性モデル」で、非正規雇用者は被扶養者がなるものという前提の上に制度があり、無期で働くパートというものを人々は想定していない。

1985年の均等法、労働者派遣法、第3号被保険者ゆえに、85年は女の貧困元年」。女性保護撤廃によって女性も無制限労働をするようになり(残業の歯止めがきかなくなる)、家事負担する女性は正規で働けなくなってくる。そこで、労働者派遣法で女性パートとして拾う。さらに、第3号被保険者でパートの賃上げに歯止めをかける。さらに、現在では正社員になりたい女性や若者にもこれが及んでしまうばかりか、正社員になって過労死するか非正社員になって不安定な雇用状態にいるかの二極化が起こっている(過労死は80年代から激増)。均等法の本来の目的が同時進行の女性保護撤廃(労働者派遣法・第3号被保険者)によって歪められてしまったということになるが、当時のメディアにこの構造が見えなかった。

・「パート=有期」「総合職と一般職は全く別の仕事をしているから昇給に差が出てくる」というなんとなくのイメージ(錯覚)、報道者のリアリティの無さゆえに、社会に労働の現場が伝わらない

・労働問題を報道しようとしても、フリーター・外国人・女性という差別のフィルターがかかって「それは一部の人」と報道者の間で決めつけられ、労働問題であるという意識を持ってもらえず、報道として社会に出ない。

「年越し派遣村」報道によって貧困の氷山の一角は表に出てきた。その重要な要素としては、ユニオンと反貧困団体の連携、継続取材する報道者、厚労省脇という舞台があった。

 

4.労働問題を伝えるための報道力

・遠目で見たら「困って無さそうだ」と思ってしまう。苦境にある人の顔を見て話を聞くことが重要。

言葉の変換によって概念の転換を起こす。例:「在職死亡」から「過労死」という言葉に代わったことで、「仕方ない」と思われていた現象が問題化され、報道しやすくなった。

・同じ話でも角度と見出しを変えて繰り返す。

・官庁の代弁者となっている記者クラブとは違う、電話一本で話を聞けるような自前記者クラブの創設が必要。

「悲惨さ」を描けば人々は当事者を「格下の恵まれない人」と認識してしまう。その現象を生み出す構造と対抗力を報道することで、当事者を「対抗手段を持ちうる、情報の受け手となる人々と対等な立場にある人」と位置付ける。

 

5.報道力を支える社会運動グループ

・ユニオンが良質な水源地(情報源)となって非正規労働報道を支えた。2007年結成の反貧困ネットワークも同様の役割を果たしている。

・マスメディアは常に同じものを報道しているわけではなくhit&awayが宿命。マスメディアの目を集めることは戦略上重要なことで、パワーエリートと社会運動は良質な情報源たることでメディアを取り合っている。

 

6.読者・支援団体・報道の連携

・社会の報道者への評価・批判によって記事・記者の質の向上を図る必要がある。(例:反貧困ジャーナリズム賞)

・労働問題に関わる記者はデスクと争うのではなく、理解のあるデスクを探し、デスクが掲載しやすいように話を持っていくことが必要。

・パワーエリートには情報発信力があるが、社会運動側にもパワーエリート側に対抗するメディア・自己発信力が必要

 

(文責:上野)