お笑いコンビ「爆笑問題」がNHKで政治家ネタを却下されたことや、年末の紅白歌合戦でサザンオールスターズの桑田佳祐さんの歌などについて、いわゆるテレビと政治を巡る問題がクローズアップされているなか、俳優の宝田明さんも同様の体験をされたことについて、このほど毎日新聞で振り返った記事が掲載されました。そこで2回にわたって転載させていただい、ご紹介します。(サイト管理者)
※ 以下、転載はじめ↓
<宝田明さん:反戦の訴え、NHK生番組で遮られ…>
◇「人間として言うべきこと」
お笑いコンビ「爆笑問題」のNHKでの政治家ネタの却下、昨年末の紅白歌合戦でのサザンオールスターズの演出……テレビと政治を巡る問題の議論がかまびすしい。実は昨年の衆院選のさなかにも、NHKの姿勢を疑わせる「事件」が起きていた。ベテラン俳優、宝田明さん(80)が「あの時は、俳優である以前に人間として感じていることを申し上げたのですが……」と振り返った。
◇「間違った選択しないよう選挙で…」にアナ「各自、思うところが」 旧満州引き揚げ時、頭に銃口、腹に銃弾受ける
「『おや? 何か止められるような発言をしたかな』。あの瞬間に浮かんだのは、そんな疑問でした」。初主演作品「ゴジラ」(1954年)の公開当時のポスターを飾った東京都内の事務所。銀幕のスターらしい落ち着いた口調で宝田さんは語り始めた。
その問題が起きたのは昨年12月3日、NHKの情報番組「ゆうどき」(午後4時55分?6時)への生出演時。「人生ドラマチック」というコーナーで、宝田さんは自身の近況や「ゴジラ」への思いとともに、幼少期を過ごした旧満州(現中国東北部)のハルビンでソ連軍の侵攻を受け命からがら日本に引き揚げた体験を披露し、「戦争は人間の大罪」と語った。そして、女性アナウンサーから「戦争を全く経験していない世代に伝えたいことは」と問われると、こう述べた。
「無辜(むこ)の民が無残に殺されるようなことがあってはいけませんね。国家の運命というのは、たかが一握りの人間の手によってもてあそばれている運命にあるんですよ。だから間違った選択をしないよう、国民は選挙を通じて、そうではない方向の人を選ぶのか、あるいはどうなのか……」
宝田さんが言葉を継ごうとすると、聞いていた男性アナウンサーが突然、「その辺は各自、思うところがあるでしょうから、個々の選択がありますけどね……」と、制止するかのように割って入った。さらに「戦争を知っている世代として、これからもいろんな演技を見せていただきたいです。ありがとうございます」と、コーナー終了を“宣言”してしまったのだ。
だが、コーナーは終わらなかった。いったんは「そうですね」と応じた宝田さんが再び口を開き、きっぱりと言い切った。「声を大にして、戦争は絶対起こしちゃいけないということをメッセージし続けていきたいと思います」。ぎこちない空気の中、ようやく画面が切り替わった。
当時の心境を宝田さんが説明する。「最後の、大きなピリオドを打つ言葉が言えずに止められたという気持ちは確かにありました。だから、これだけは言わせてもらいたいと……」。事前にNHK側から発言内容などへの注文は一切なかったという。
<宝田さんナイス><リスペクトします>。ネット上では「制止」にもひるまず信念を語った俳優への称賛が飛び交った。宝田さんが仕事で名古屋を訪れると、年配の女性たちに囲まれ「見ましたよ。よくぞ言ってくれました」と拍手される一幕もあった。
【出典】2015年1月21日配信「毎日新聞」
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