一昨日の当ブログで、野田首相の原発事故の「冷温停止状態」を実現したということから「収束宣言」にいたったことに関して、元米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の原発技術者だった菊地洋一氏の見解を掲載しましたが、今日は、原発の専門家である元中央大学教授(核燃料化学)の舘野淳氏の見解についてご紹介します。(文責:サイト管理者)
舘野氏は、「冷温停止」について、本来は健全な原発で正常に運転を停止する際の状態を指す専門用語であると指摘。それを炉心溶融という深刻な事故を起した原発にもあてはめ、「原子炉底部の温度が100度以下の状態になったら冷温停止だ」とし、それで「事態は収束した」とする“二段論法”でもっともらしく言う言い方は悪質な言葉のトリックだと批判しています。
かつて1979年3月に発生した米国のスリーマイル島原発事故で、事故調査委員会が事故発生後7ヵ月目に発表した報告書では、「事故は冷態停止(冷温停止)で終わったわけでなく、まだ当分終わる見込みもない」と記載されていました。福島第一原発事故は、それより燃料の状況も放射性物質による汚染の状況も桁違いに深刻です。
舘野氏は、「事故収束」というのは、危険のおおもとである溶融した燃料を原子炉から取り出し、その処理についても技術的に決着がついた時点で言えることであって、スリーマイル島原発の事故調査委員会の報告書に照らしてみても、福島第一原発事故が「収束」したという認識は、まったくおかしいと指摘しました。
福島第一原発の現状を見てみると、100度以下をずっと維持できるかは疑問で、もし冷却が止まればたちまち100度以上に上がってしまいます。余震など突発的なことが起こって冷却ができなくなれば100度以下に保たれる保証は何もないと言います。
舘野氏は、これまで事故処理は熱と放射能と水素との闘いであり、処理を誤れば破局的な事態を引き起こすと指摘してきました。現在も燃料は莫大な発熱を続けており、建屋地下などには高濃度の放射能汚染水が大量にたまっているうえ、雨が降ると流れ込んで水量が増え、浄化槽からの漏洩事故も発生しています。さらに水素爆発の危険も残っています。
東京電力自身が中期的な取り組みとして、より安定的な冷却システムをつくることを計画しているように、これは事故収束の課題であって、廃炉の課題ではないように「収束宣言」とは程遠いことであることを示しています。
(つづく)
【出典参考】2011年12月25日付け「しんぶん赤旗」
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