新型コロナウイルス感染拡大にともなって「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」が3月13日成立し、政府は新型コロナウイルス感染症にも「緊急事態宣言」を発令できるようになりました。これは使い方では個人の権利を制限できるわけで、事前に国会承認も必要としないなど、数々の問題があります。この問題について2020年3月14日付け「東京新聞」朝刊から元日弁連事務総長・海渡雄一弁護士へのインタビュー記事を転載させていただき、紹介することにします。(サイト管理者)
※以下、転載はじめ↓
<【新型コロナ】改正特措法「緊急事態宣言」なら 抗議集会できなくなる>
◆元日弁連事務総長・海渡雄一 弁護士
新型コロナウイルスの急拡大に備える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が十三日に成立し、政府は同ウイルス感染症にも緊急事態宣言を出し、個人の権利を制限できるようになった。私権制限は二〇一二年の特措法制定時に盛り込まれ、日弁連が反対声明を出した。当時、日弁連事務総長だった海渡雄一弁護士に、改正特措法の課題を聞いた。
――緊急事態宣言が出た場合、市民生活にどんな影響が出るのか。
「例えば誤った政府の政策に対して、集会で抗議できなくなる。都道府県知事は集会や音楽、スポーツイベントなどの開催制限の要請、指示が可能になる。これは実際には禁止といえる。政府がNHKなどに指示を出す仕組みもある。報道機関の権力からの独立や報道の自由が確保されず、重要な情報が伝えられない可能性がある」
――知事は住民に外出の自粛も要請できる。
「経済が完全に停滞してしまうだろう。戒厳令が出たようになっていくのではないか」
――衆参両院で、緊急事態宣言の発令時に、国会への事前報告を求める付帯決議が採択された。
「付帯決議には法的拘束力が無い。法律に書き込まないと、ほごにされても文句の言いようがない。改正特措法では、事前はおろか事後の国会承認も必要とされていない」
――必要な歯止め策は。
「宣言発令について、国会の事前承認や国会の権限で解除する仕組み、民間の有識者を入れた検証組織などのストッパーがあれば、乱用されにくくなる」
――安倍晋三首相は緊急事態を巡り、現状は「そういう事態ではない」と言っている。
「欧州や韓国などから、日本はきちんと検査をしていないと非難されている。現実には宣言が必要な状態かもしれない。きちんと検査も受けさせないまま突然、議事録を残さない場で小中高校などの全国の一斉休校要請を決め、混乱を生んだ。そうした政権に、強権を与えるのは危険だ」
――今、急ぐべき対策は。
「検査態勢を改め、経済的な困難に直面している企業や個人に支援の手を差しのべることだ。感染者が次々と発生している場所や、クラスター(感染者集団)の発生を正確に把握できれば、緊急事態宣言もその地域に限定でき、経済的な打撃も少なくて済む」
<かいど・ゆういち> 1955年生まれ。弁護士。2010~12年に日弁連事務総長。現在、脱原発弁護団全国連絡会共同代表、NPO法人監獄人権センター代表。編著書に「市民が明らかにした福島原発事故の真実」「戦争する国のつくり方」など。
【出典】2020年3月14日付け「東京新聞」朝刊
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