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中村敦夫さんが新作喜劇「流行性官房長官-憲法に関する特別談話-」

2018年11月29日 | 国際・政治

1972年、一風変わったテレビ時代劇として登場した「木枯し紋次郎」の主役に抜てきされトップスターに。その後80年代に小説を発表し、テレビの情報番組「地球発22時」のキャスターを経て1998年、参院議員に初当選と様々な経歴を持つ中村敦夫さん。その中村さんが、このほど新作喜劇の台本を発表しました。その名も「流行性官房長官-憲法に関する特別談話-」。「9条改憲は滑稽」だから喜劇で表現するのがピッタリと中村さん。実に面白い。2018年11月25日配信「毎日新聞」からその記事を転載させていただき、紹介することにします。(サイト管理者)

 

※以下、転載はじめ↓

  

〈喜劇で描く「9条改憲は滑稽」 中村敦夫さん〉

新作「流行性官房長官」

俳優、作家、脚本家など多くの肩書を持つ中村敦夫さん(78)が新作喜劇の台本を発表した。題名は「流行性官房長官-憲法に関する特別談話-」。首相の懐刀とも女房役とも言われる官房長官が主人公だ。改憲を目指す安倍晋三政権を思い起こさせるタイトルだが、9条改憲がいかに滑稽(こっけい)か、劇場で立体的に示すのが狙いという。

この官房長官、一種の「護憲派」なのか、改憲の必要は全くないと説明する。なぜなら、改憲の目的が既に達成されているとの主張を持っているからだ。日米安保条約の違憲性が争われた「砂川事件」の最高裁判決(1959年)を引き合いに出す。

<その理由は、「条約のように高度の政治性をもつものは、裁判所の違憲立法審査権には原則としてなじまず、内閣と国会の判断にゆだねるべき」ってことだった。君ら、ここは重大だ。この瞬間に、日本の司法界は、強大な権限を自ら投げ捨てたんだからな> 

なぜ最高裁が「三権分立」の原則を崩したのか。官房長官は「判検交流」制度について解説する。裁判官が法務省に出向し、行政訴訟で国側の代理人を務めることによって、行政と裁判所の間で癒着が生じるというものだ。正気と狂気を併せ持つ官房長官。<三権分立は空中分解し、裁判所も検察も内閣の言いなりになった。大日本帝国、万歳! 君らもやれ! 万歳!>と声を張り上げると、ギターを持った歌手が続けて言う。

<あーあー驚いた、あーあー知らなんだ、危ねえぞこれ、どうすんだこれ!>

官房長官と歌手の掛け合いで約25分の芝居が進行する。

◾️永田町での日々 喜劇そのもの

72年にテレビで始まった時代劇「木枯し紋次郎」でブレークした中村さん。スターの座をなげうって、98年から6年間、参院議員を務めた。永田町での日々は喜劇そのものだったと振り返る。例えば、在職時に著した本「国会物語 たったひとりの正規軍」に、こんなエピソードが載っている。当選後初めて参院本会議場に入り、議長を選ぶ際、中村さんが議員バッジを「権威主義のシンボル」とみなして胸につけなかった場面だ。

<私が(採決用の)投票箱に近づいた時、にわかに会場が騒がしくなった。中央の自民党席が私を指差して大声で野次(やじ)っている。よく聞いてみると、「バッジをつけろ!」「つけねえ奴(やつ)は出てゆけ!」「気取ってんじゃねえ!」。中には、興奮して歯をむき出し、顔を真っ赤にしている者もいる。私は一瞬、自分が猿の惑星に舞い降りたのではないかと錯覚した(一部略、以下同)>

舞台は東京・永田町ではなく、なぜか東京湾の倉庫街。地下3階に設定された記者会見場には、ギターを抱えた歌手が椅子に座り、一筋のライトを浴びている。歌手が「長官のテーマ」を奏でる中、分厚いノートを小脇に抱えた官房長官が登場し、記者たちを前に口を開く。この官房長官、方言で自分のことを「わだし」と言い、「~でガス」と話す語尾に特徴がある。劇中、実在する政治家の名前は出てこない。

<これより、官房長官として、超特別記者会見を始めるでガス。定例会見とは異なり、官邸から遠く離れた東京湾、(中略)極秘の談話室で展開する重大発表でガス。一年に、二度はあっても三度なしという……ハアハアー、ハクション!>

流行性感冒(インフルエンザ)にひっかけた「流行性官房長官」は、今秋発売された本「憲法についていま私が考えること」(日本ペンクラブ編、角川書店)に収められている。作家、評論家、詩人ら44人が寄稿した。その多くは評論やエッセーだが、中村さんはなぜ喜劇を書いたのか。 

「安倍さんの目指す改憲にリアリティーがないからです。自衛隊を憲法に書き込まないと『かわいそうだ』との趣旨の発言をしていますが、それならば領海を守る海上保安庁や、国内治安にあたる警察や消防も憲法に明記されていないから、かわいそうだ。日本の防衛問題を考える上で、本質的な議論が行われていない。この滑稽さを浮き彫りにするには、喜劇が最もふさわしいと考えました」

官房長官は、政権に忖度(そんたく)する記者だけを集めて会見し、「ポンちゃん」のあだ名を持つ首相が、なぜ改憲を目指しているかをレクチャーする。

<さて、本日のテーマは、日本国憲法でガス(ギターがジャジャジャーン)。久しぶりに超でっかい話になる。私個人は正直言って、この問題はややこしくて嫌いでガス。いくら議論したって、落としどころがないからでガス。それなのに、ポンちゃんが「改正! 改正!」って叫ぶもんだから、とんでもない騒ぎになっちまったんでガス>

この官房長官、一種の「護憲派」なのか、改憲の必要は全くないと説明する。なぜなら、改憲の目的が既に達成されているとの主張を持っているからだ。日米安保条約の違憲性が争われた「砂川事件」の最高裁判決(1959年)を引き合いに出す。

<その理由は、「条約のように高度の政治性をもつものは、裁判所の違憲立法審査権には原則としてなじまず、内閣と国会の判断にゆだねるべき」ってことだった。君ら、ここは重大だ。この瞬間に、日本の司法界は、強大な権限を自ら投げ捨てたんだからな>

なぜ最高裁が「三権分立」の原則を崩したのか。官房長官は「判検交流」制度について解説する。裁判官が法務省に出向し、行政訴訟で国側の代理人を務めることによって、行政と裁判所の間で癒着が生じるというものだ。正気と狂気を併せ持つ官房長官。 

<三権分立は空中分解し、裁判所も検察も内閣の言いなりになった。大日本帝国、万歳! 君らもやれ! 万歳!>と声を張り上げると、ギターを持った歌手が続けて言う。 

<あーあー驚いた、あーあー知らなんだ、危ねえぞこれ、どうすんだこれ!>

官房長官と歌手の掛け合いで約25分の芝居が進行する。

◾️永田町での日々 喜劇そのもの 

72年にテレビで始まった時代劇「木枯し紋次郎」でブレークした中村さん。スターの座をなげうって、98年から6年間、参院議員を務めた。永田町での日々は喜劇そのものだったと振り返る。例えば、在職時に著した本「国会物語 たったひとりの正規軍」に、こんなエピソードが載っている。当選後初めて参院本会議場に入り、議長を選ぶ際、中村さんが議員バッジを「権威主義のシンボル」とみなして胸につけなかった場面だ。

<私が(採決用の)投票箱に近づいた時、にわかに会場が騒がしくなった。中央の自民党席が私を指差して大声で野次(やじ)っている。よく聞いてみると、「バッジをつけろ!」「つけねえ奴(やつ)は出てゆけ!」「気取ってんじゃねえ!」。中には、興奮して歯をむき出し、顔を真っ赤にしている者もいる。私は一瞬、自分が猿の惑星に舞い降りたのではないかと錯覚した(一部略、以下同)。 

同じく98年に、閣僚が本会議場のひな壇に並んだ時の感想はこうだ。個性的な顔が多い内閣だった。

<まるで妖怪漫画の雰囲気である。もし、国民が私たち議員席に座り、『これが国難に対処する内閣メンバーです』と紹介されたら、我を忘れて外へ逃げ出すのではないかと思った> 

◾️国会は世襲議員の特殊な世界

今の国会、内閣をどうご覧になってますか?

「1998年と2018年、全く変わりませんね。世襲議員が多い特殊な世界です。国会議員にはある程度の知的レベルが必要ですが、持ち合わせていない人が多い。小選挙区制度の弊害ですね。野党が弱いと、与党の候補はみんな当選してしまう」

無駄な公共事業や権力の腐敗を追及し、「政界の一匹オオカミ」と呼ばれた中村さん。当時、「三つの旗」を掲げていた。環境主義、行政改革、憲法9条にのっとった平和外交だ。なぜ、9条なのか聞くと、俳優座時代の米ハワイ大留学(65年)にさかのぼるという。

「私は戦中を知る最後の世代ですが、大学時代は60年の安保闘争にも無関心なノンポリでした。しかし、ハワイ大には肌の色や文化の異なる人が一堂に集まり、島国の日本しか知らなかった私は度肝を抜かれた。『あなたはどう思う?』と自分の意見を表明することが求められる。自分自身の国際化が進み、日本のことを考えました。日本国憲法には民主主義、基本的人権の尊重といったアメリカ合衆国の価値観が色濃く反映されている。『アメリカ的』がいいなと思いました」

しかし、米国がベトナム戦争に突入すると、米国的価値観を単純に支持できなくなった。

「正義のための戦争ではなく、経済政策としての戦争という側面がありました。ならば、どんな価値観を持てば、戦争をしない国になれるのか。その答えが、9条を『語る』ことではなく、『実現する』ことにありました」

◾️まずアメリカからの独立を

再び劇中。官房長官は「外交政策の転換」の必要性を説く。

<米兵に少女が暴行されても、逮捕、裁判もままならない。わが政府ができるのは、ポーズだけの抗議の繰り返しだ。こうした治外法権の網が広く日本にかけられ、愛国主義者であるわだしは、正直気分が悪い>

防衛問題を考える上での基本がここにあるという。

「日本は戦後、自信を喪失したまま、アメリカの属国であり続けています。だから、安倍さんは、米大統領選でトランプ氏が当選を決めると、いち早く駆けつけた。まだ現職だったオバマ氏に対して失礼な行為であり、外交儀礼に反する。奴隷根性であり、非常にみっともない。自衛隊を憲法に書き加える前に、まずアメリカからの独立を果たすべきです。日米安保条約と日米地位協定の運用が、憲法の上位に立っている現状を変えなければいけない」。地位協定は在日米軍の法的地位などを定めたもので、米軍人が事件を起こしても裁判権は米側にある。60年に発効してから一度も改定されていない。

その安倍内閣。森友・加計両学園問題に加えて閣僚の問題発言が相次いでも、高い支持率を誇っている。中村さんの分析はこうだ。 

「資本主義国は安い労働力を途上国に求めてきた歴史があります。しかし、それらの国が経済的に発展すると、労働力不足に陥る。だから、国内の中産階級を崩して格差社会にし、安い労働力を生み出す。これが、バブル崩壊後、日本がたどってきた道です。格差に不満を持つ人たちは、外敵を作り、ナショナリズムに救いを求める。彼らが『美しい国』を唱える安倍さんを支える構図で、世界各国で同じような状況が生まれています」

新作喜劇の終盤、官房長官は狂気に陥り、支離滅裂になる。

<我々に必要なものは、日本の文化、国情、気質、体質に合った古き良き国家を取り戻すことでガス。まずは教育改革。すべての幼稚園で教育勅語を教える。登校時、校門前での君が代斉唱を義務付ける。大日本帝国万歳! 君らもやれ! 万歳!>

なお、劇中の「ポンちゃん」は「アンポンタン」に由来しているという。

  

【なかむら・あつお】1940年、東京都生まれ。東京外国語大中退。63年、俳優座入団。72年、テレビ時代劇「木枯し紋次郎」の主役に抜てきされトップスターに。83年、小説「チェンマイの首」を発表し、ベストセラー。84年、情報番組「地球発22時」のキャスターに。98年、参院議員に初当選。2007~09年、同志社大大学院で環境社会学を講義。16年、自ら台本を書いた反原発朗読劇「線量計が鳴る」の全国公演を始める。25日の横浜公演で50回目。来年4月まで公演日程が埋まっている。この台本と戯曲をもう1本収めた「朗読劇 線量計が鳴る」(而立書房)を10月に刊行。

 

【出典】2018年11月25日配信「毎日新聞」


※9条改憲を許さず、憲法の平和・人権・民主主義が生かされる政治の実現を求める

「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」(3000万人署名)にご協力を。

 署名はこちら=> =>http://kaikenno.com/?p=1

(安倍9条改憲NO!全国市民アクション)

■5月3日「憲法集会」で4月末時点で1350万筆が集まったことが報告されました。引き続き3000万筆目指して取り組ます。

 

※日本政府に核兵器禁止条約への参加を求め、

 核兵器のない世界の実現に向けて、

 あなたも「ヒバクシャ国際署名運動」を。

  ネット署名はこちら=> http://hibakusha-appeal.net 

  (「ヒバクシャ国際署名」推進連絡会)

 

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