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小森陽一氏「自民党の改憲草案を斬る!」-映画人九条の会4・25憲法学習会から(11)

2013年08月27日 | 国際・政治

昨日に引き続き2013年4月25日(木)に行われた「映画人九条の会」主催の「4・25憲法学習会」から、小森陽一氏の講演「自民党の改憲草案を斬る!」をご紹介します。(サイト管理者)

■河野談話を一貫して撤回するように言い続けてきたのが、世襲三世議員・安倍晋三

この1993年に自由民主党が初めて野党に転落して──それはどうしてかというと、この時の選挙で小沢一郎は羽田孜を立てて新生党を作り、鳩山由紀夫は武村正義を立てて新党さきがけを作って、自民党竹下派の若手が、リクルート事件で汚れてなかった割とクリーンな若手がみんな自民党を出て行って、ということは自民党田中派の実行部隊が自民党を出て行って、残ったのはイデオロギー政党としての福田派という構造になっちゃったのが93年です。それで小沢一郎の政界再編で、細川護煕政権が打ち立てられた。
ですから初めて野党に転落した自民党の総裁、首相になれなかった初めての自民党総裁である河野洋平さんが、崩壊した宮沢喜一政権の官房長官だったんです。細川政権に政権を渡す直前の1993年8月4日に、従軍慰安婦問題で日本軍が関与していたという内閣官房長官談話を出したのです。
この内閣官房長官談話が出たから、その後教科書に載るようになり、このことをめぐるせめぎ合いが「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとする草の根侵略戦争美化運動、こういう系譜が在特会までずっと続いているんです。
 この河野洋平談話を、議員になってから一貫して撤回するように言い続けているのが安倍晋三という政治家です。安倍晋三という政治家は、1993年の自民党が初めて野党に転落した総選挙で、世襲三世の一年生議員になったのです。
93年段階の自由民主党がどういう状況だったかというと、自由民主党という政党は1955年にできてからずっと38年間政権与党でしたから、当然1955年に最初に議員になった人は、25歳でなったとして38年間で60数歳です。だから55年の鳩山一郎改憲選挙の時に20代で当選してないと、二世、三世の議員は生まれない。つまり93年の段階では、そういう人しか残らなかったのです。
その時の自由民主党で何が最も怖いかというと、「あなたはなぜ政治家をやっているのですか」と問われると「お父さんが」、「お父さんはどうしてやっていたんですか」と問われると「おじいちゃんが」、おじいちゃんの話をすると安倍晋三は、母方のお祖父さんは岸信介に行きつく。岸信介はA級戦犯容疑者ですよね。みんな、そういう議員なのですよ、自民党に残っているのは。岸信介の場合はA級戦犯容疑者だけども、露骨にA級戦犯みたいな人もたくさんいるわけです。

■アメリカからの政権つぶしの強力な圧力

その93年にいったい何が起こっていたかということが、もうひとつ重要です。91年の年末に、大方の予想に反してソ連が崩壊してしまいました。アメリカに対抗してソ連が核兵器を持つことで、東西核兵器の核抑止力論で対立する──つまり、向こうが打てないようにここに核を配備する。向こうが配備すれば、こっちも配備するという、そういう核抑止力論で東西冷戦がずっと続いていた。
最初、核兵器はアメリカとソ連しか持っていなかった。1949年にちょうど中華人民共和国ができた時に、ソ連が核保有するわけですから。その後、中華人民共和国が核保有しようとした1963年に、部分的核実験禁止条約というのをアメリカとソ連が結んで新興国に、いや同じ国連安全保障理事会の常任理事国ですが、そこには持たせないと。でも持っちゃったんです、5カ国が。アメリカ、イギリス、中国、フランス、旧ソ連。この5カ国だけが核兵器を保有して良いというのが、核不拡散条約(NPT)という不平等条約です。
 でもソ連が崩壊しちゃうと、ソ連の持っていた核施設がウクライナやベラルーシにある場合、これは全部、核拡散しているということになります。ソ連を受け継いだのは、ロシアだけですから。
ソ連が崩壊するだけで、ヨーロッパとアジアにも核拡散状態が生れて、ソ連が北朝鮮で開発していた核施設もアメリカは核拡散状態だから査察を受けろと言って、圧倒的な圧力をかけてきていたのが、ちょうど細川政権の時代です。
細川政権の与党には日本社会党も入っていました。北朝鮮の核拡散の問題で第二次朝鮮戦争勃発か、というところまでアメリカは危機を高めていった。だけども韓国の場合、金泳三政権でしたから、アメリカの軍事的なやり方には賛同しない、協力しないということを明確にしましたので、日本から戦争をしかけるしかない、というのが93年の年末から94年にかけてです。
だから細川政権を潰さないと、日本社会党は出せないわけです。ですから何をやったからというと、一応佐川急便事件は、検察特捜が準備していたわけです。でも佐川急便事件では落とせない。何か決定的な失策をやらせなければいけない、というところで、小沢一郎がアメリカの命令で細川政権をつぶすために仕掛けたのが、大蔵官僚である斉藤次郎に絶対実現不可能な、国民の福祉だけに使う増税、国民福祉税というのを深夜の国会で記者会見させて、やろうとして、見事に破たんさせるわけです。
 これと佐川急便事件が結びついて──だから細川護煕というのは、最も怖いアメリカからの政権つぶしの圧力を見てしまった政治家だから、間もなく辞めたんです。
 お分かりでしょう。この斉藤次郎のこの時の功労に恩賞を与えるために、民主党が政権を取った時に 連立で入っていた亀井静香が、小沢一郎さんの思いを汲んで、斉藤次郎を郵政の社長にして、民営化したけど郵政株は売らない、ということでやってきたのです。その斉藤次郎を辞めさせて、社長の首をすげ替えて、そして郵政株売り出したから株が値上がりしているんです、今。
 何が「アベノミクス」ですか。全部、「アベノミス」ですよ。そうでしょう、日銀が売りに出した国債を7割買うという方針を出した4月4日。ちゃんと考えろよ、と言いたい。日本の市場とアメリカの市場とは時間差があるんですよ。日本の市場で取引できない時、アメリカの市場で取引できるわけでしょう。だから何が起こったかというと、4月5日の午前中に日銀が国債を買う前に、全部ヘッジファンドに買われちゃったんです。で、午後にヘッジファンドが売り出して、一気に値上がりです。長期金利も上がっちゃったわけです。全部逆効果。黒田辞めろ、という話ですよ。
でも、そういうことはちゃんと報道されずに、株価が上がっているからいいじゃないか、と内閣支持率はうなぎ昇り。そうじゃありません?
 今、日本が安全だと言われていたのは、国民の預金が国内にあるからです。まさに国民の資産と預金が国外に株という形でどんどん流失しているというのが現在です。だから、一気にヨーロッパと同じ財政破たんに向かう、いま前段階に入っていると考えた方がいいじゃないですか。
 今、斉藤次郎でいきなり現在の経済の話に行っちゃいましたが、その斉藤次郎に細川政権を潰させて、そして社会党と新党さきがけが抜けますから、少数与党になった。
でもこの時に米朝国交回復を実現したジミー・カーター元大統領に北朝鮮に飛んで、金日成と会って、やめなさい、査察を受けなさい、NPT条約に戻りなさい、2003年になったらアメリカが原発をあげるから、それまではちゃんと重油あげるから、という米朝枠組合意というのをやって、これで大丈夫というふうになりましたから、自民党の総裁・河野洋平さんは、日本社会党が政権に戻っても大丈夫だろうと考えるのは当然ですね。
だから、私は初めて首相にならない自民党総裁でいいから、ずっと首相になりたかった日本社会党の委員長の村山富市さんに声かけて、やりましょうとなって、2ヶ月で羽田孜政権終わって、村山富市政権が6月末にできるわけです。
その数週間後に、金日成が突然亡くなり、金正日が主席を継ごうとしたら、当時のクリントン大統領は、アメリカの大統領と同じような重要な任務に世襲でつくのかといって、一気に盛り上がって、国会で村山さん自衛隊はどうなの、日米安保条約をどうみているの、と訊かれたら、「自衛隊合憲、日米安保条約堅持」という答弁をして、そして日本社会党がなくなってしまうんです。
この時に60年安保で作った日本社会党、日本共産党、それを総評が繋ぐという「社共総評ブロック」という護憲の体制が完全に潰されたのです。総評は、89年に連合に入ってなくなった。
そのあとは市民運動で闘うしかない状況でやってきて、九条の会を作って一旦押し返したんだけど、民主党政権になってみんな安心して、安心しているうちに安倍政権が第2次安倍政権になって、どうなの、というところにいま来ている。
どうなのというと、まさに日米安保条約体制に戻す、90年代アメリカがずっと要求してきたアジアの戦争を日本の自衛隊が担う、日本の国防軍が担う、そういう状態にきている。ですから、ここに改めて草の根からの運動で押し返すことができるのかというのが、私たち九条の会には問われているということです。
(つづく)

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