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小森陽一氏「自民党の改憲草案を斬る!」-映画人九条の会4・25憲法学習会から(1)

2013年08月15日 | 国際・政治
今日8月15日は68回目の終戦記念日。本来なら二度とあのような悲惨な戦争は嫌だと、戦争の放棄とそのための武力の不保持を宣言し恒久平和を世界に宣誓した日本国憲法を守らねばならないのに、それとは真逆の方向に安倍政権は進めようとしている。そこで終戦記念日を記念して2013年4月25日(木)に九条の会事務局長で東京大学大学院教授の小森陽一氏を迎えて「自民党の改憲草案を斬る!」と題して開かれた「映画人九条の会4・25憲法学習会」の講演から自民党の改憲草案の問題点を、何回かに渡り転載してご紹介させていただきます。(サイト管理者)
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<映画人九条の会4・25憲法学習会>
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「自民党の改憲草案を斬る!」
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2013年4月25日(木)/文京シビックセンター5階C会議室
講師・小森陽一(東京大学大学院教授)
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 皆さん今晩は。小森陽一です。今日は「自民党の改憲草案を斬る」ということでお話させていただきますが、NHKの元プロデューサーで、ドキュメンタリー映画「加藤周一 幽霊と語る」を作られた桜井均さんが同じテーマのもの(あぶない憲法の話/小森陽一さんによる「自民党憲法改正草案」解読)を編集してDVDなどで出していますので、今日、分かり切らなかったという人は、そちらの方も見て下さい。
まず大枠として、現在の非常に大きな特徴は、自由民主党という政党は生まれた時から改憲政党なわけですが、とにかく前文から一番最後まで全部変えるということで、2005年10月末の段階で郵政選挙で国民をだまして圧勝し、衆議院で3分の2以上の議席を小泉政権が取った段階で、「自民党新憲法草案」というのを出しました。
これは、憲法9条2項をばっさり削って自衛軍を保持するということを明記した、まさに当時アメリカから要求されていた9条2項を削って自衛隊を軍にするということに焦点を絞った、ひとことでいうと2000年代から強烈にアメリカが要求してきた、9条2項を中心とした改憲案でした。
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■今回の「自民党改憲草案」は単なる保守復古ではなく、天皇中心の新しい国家構想を打ち出したもの
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しかし今回の──今回というのは、つまり自民党が野党に転落している段階で、改めて与党に返り咲こうとしながら、「日本会議」を中心とした右翼グループなどが、かつての侵略戦争は自存自衛の戦争であったという、戦争を正当化する歴史認識を中心に編集した──「新しい歴史教科書をつくる会」は二つのグループに分裂しましたから二つの教科書会社から出ているのですが、その育鵬社系の、今回の安倍政権の教育政策の懇談会(教育再生実行会議)の中心メンバーになっている八木秀次という人が中心ですが、この「つくる会」系の教科書の採択を全国的に押し出しながら、その中で5年前に自ら政権を投げ出した安倍晋三という政治家を改めて自民党総裁として選挙戦に臨む、ということを取り組んできたその前段階として、いつ総選挙が起きても構わないような形で、自民党という政党は現在の憲法を変える政党なんだということを全面に出すために、2012年の4月27日に、今日お話する自民党改憲草案──日本国憲法改正草案というものを出したわけです。
ですから、これが現在の安倍晋三を総裁とした自民党だけでなく、その前からの谷垣総裁時代、野党に転落していた自由民主党という政党の日本国憲法草案なのです。つまり、ここに自民党の国家像というものがはっきりと表れている。そしてそのことが、この後の重要な政治的な争点になっていくのです。
その上で、まず最初に「前文」と「天皇条項」をめぐる問題についてお話していきたいと思うのですが、自民党の日本国憲法改正草案の「前文」は、最初の一節は次のように始まります。
「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」
 ここで後半部には、わざとらしく「国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立」とか言っていますが、その前段階としてはっきりと「日本国は、長い歴史を固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家である」、つまり天皇制国家であるいうことを明記し、さらにこの「前文」をうける形で第一章第一条は、「天皇は、日本国の元首である」となっている。
そうするとこれは、明らかに構成としては大日本帝国国憲法ですね。大日本帝国国憲法は、第一条に「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」いうふうに、天皇を統治権者として、つまり天皇を唯一の主?権者として位置付けていたわけです。その大日本帝国憲法体制の在り方を、いわば条文としては踏襲するという形で「天皇の国である」ということを明記している。ここにどういう狙いがあるかということをまず、最初にお話します。
多くのマスメディアの中においては、それから憲法改悪に反対している政党の主張においても、“これは立憲主義をないがしろにした、極めて保守復古の本質をむき出しにした内容です”という批判が多いんです。つまり、いにしえに戻る、保守であり復古である、という分析なのですが、私はそうは思いません。これは、全く新しい国家構想を打ち出しているというふうに考えなければならない。その中で、日本の国家を維持していくためには、「天皇を戴く国家である」ということをまず最初に言わねばならないという事態なのだと。ここがなぜそうなのかを見抜かないと、問題が見えてこないのです。
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■4月28日「主権回復の日」の狙いは何か
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これはこの間、一気に問題になってきましたが、今日は4月25日ですからあと二日後なんですけれども、なぜ安倍晋三政権が4月28日を「主権回復の日」として寿ごうとしているのか。そこに平成天皇明仁を無理やり引っ張り出そうとしているのか、その狙いは何なのかと、いうことにあるのです。
ここに、従来の自由民主党の在り方から、これからの自由民主党の在り方へ転換していくための、今までの改憲政党としての自民党の在り方から、新たに脱皮するための論理、論理というのは非常に馬鹿げているから言いたくはないのだけれども、彼らなりの考えがここに込められていると思います。
ですから保守復古、昔に戻る、という言い方では、この部分にグッと来てしまう人たちを改憲策動から切り離すことはできないと思うのです。このグッとくる来かたは、3・11以降、周到に布石が打たれてきているんです。つまり五日後に平成天皇の玉音放送があったわけでしょう。“3・11で大変かも知れないけれども、生き残った人々は死者を弔いなからがんばっていこう、自衛隊もがんばってくれ”と。
これに関して、さきほど申し上げた「新しい歴史教科書をつくる会」の中心人物だった人たちは、一斉に喜びの声を挙げたわけです。平成天皇明仁が自衛隊の活動を寿いだ、これが一点目。
二点目には、本来の天皇の姿である、国家のために祈る、そういう天皇ですね。つまり宗教的な中心としての天皇として、3・11の被災者のためにあらゆるところで祈りをあげている、と宣伝したわけです。
ここにどういう意味合いがあるかというと、それは現在の日本国憲法が背負っている大日本帝国憲法との連続性とその不整合を分からないものにしてしまおうという意図があるからなのです。
(つづく)
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