わたしたちもう
なんにも元に戻せない
知ってる
戻せない
あなたの街がテレビに映るたび
喉を締め付けられながら
今までと違う街で
あなたの知らない生活を
あなたの腕の中で終わること
叶わなかった
幸せになります
あなたの幸せを
願っているよ
少しでも多く笑っていてください
ありがとう
ありがとう
忘れない
ふたりで行った場所
食べたもの
教わったこと
もう
書かないね
だめだから
気持ちが揺れてしまうから
さようなら
さようなら
好きでした
好きでした
わたしの人生の5分の1は
あなたの色にべったりと覆われていて
そこに触れると
不意に蜘蛛を踏んでしまった時のように
短く息を吸い込む
呼吸が止まる
それだけは
きっと何年経っても変わらない
あなたの爪痕
宇宙より深い
その傷を掌で覆って
あなたの知らない人と結婚します
ことば
味
ひかり
おんがく
そういうものにちらりと触れるだけで
息ができなくなる
少しも色褪せず蘇って
全身に散りばめられて
赤い雫を落とすんだ
鮮やかに光る
あかいあかい
ちいさなしずくたち
さらさらと
かき集めて
握りしめて
泣き崩れて
震えてんだ
これからもずっと
震えてくんだ
洗った服の香りが
体温で溶かされいくのを嗅ぎたい
キミの胸に顔を埋めて
小鳥みたいに小さく
丸くなって
朝が来て
安心していて
そのまま死んでしまってもいい
書いて
消して
書いて
って繰返してる
キミは何をしているのかな
今
何をして過ごしているだろう
寒くなったね
ちゃんと暖房をつけて
風邪をひかないように
あなたは風邪をひきやすいから
そしてもう
それをわたしのせいにできないよ
わたしの憧れる白い世界へ
友達がいった
黙っていってしまった
毎日LINEでやり取りをしていた
男友達。
悲しいくらい
トモダチだった。
ちょっとめんどくさかったり
うるさかったり
けど
いなくなるなんて
かんがえたこともなかったよ
あっちの世界は
薄紙一枚くらいの距離感で
いつも背中にくっついてんだ
そのことを思い知った
パニックをおこして
キミに伝えた
友達が亡くなったと
キミはすぐに返事をくれたけど
LINEが来なかった日はなかったと打つと
既読くらつかなくなった
頭の中にドロドロのバリウムが流れ込んだような感覚。
トモダチもキミも失ったわたしは
荒れた。
ギラギラ光る包丁は
私のお腹をギロりと見て
吸い付きそうに向かってくる
この包丁を捨ててと叫んだ
それから
それから
もうやめよう
つまらないよ
私たちは失った
そのことを
あの頃二人で少しずつ買い集めたものたちが
嫌というほど訴えるんだ
てんとう虫ときみが名付けた
手のひらにのるWiFiルーター
小さなマウス
そのレシーバーを刺すため
3つのUSBが刺せるものを
キミから教わって買った
わたしたちの9年間
ふたりの人生からごっそり抜け落ちた
両手をついて
涙を落とす
ぽつりぽつりと音を立てて
ビニールの上におちた
ぽつり
ぽつり
痛く痛く
一生かけても埋まらない
穴に響く
.