小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

隣席のおばあさんのびっくり話

2015-10-03 | 旅先でのお話
ここのところ毎月1、2回、地方に行く仕事があり、
9月は寝屋川市に行くことになった。
中学生2人が殺害された凄惨な事件があった後だったので、
出張後、友人から「寝屋川の町、どうだった?」と聞かれた。

どう?って聞かれてもねえ。
駅前だってさびれているわけじゃなかったし、
おどろおどろしい雰囲気であるはずもなく、
親御さんも含め、大人が子どもたちのいのちを
守ってあげられなかったことに、胸が痛んだよ。

関西出張続きで、昨日は尼崎に行くことになっていた。
未明から朝方にかけて、激しい風雨だったけれど、
私が東京を発つころには、お天気も回復。
よしよしと思いつつ、窓側の席へ。

すると、背の低いおばあさんが隣の席にやってきて、
「ここ、いいですか」と聞いた。
日焼けした顔に、深く刻まれたシワが目立つけれど、
お肌そのものは、ハリがある。80代半ばかなあ。
ちょっとかわいい「田舎のおばあちゃん」という感じ。

そのおばあさんの口から出た予想外のお話に、
道中、口あんぐりの連続となったのだった。

おばあさんが「きょうだいも友達も1人2人と減っていき、
1日誰とも話さない日がある」などと言うのを、
うん、うんとうなづきながら聞いてあげていた。

きょうだいが減ったという話から、
そういう話になったのだったか……。
7人きょうだいのうち、女は、このおばあさんと妹の2人。
あと5人の弟の中で、まだ生きているのは1人だけで、
最近「なんかボケちゃっている」とおばあさんは笑った。

栃木の人なので、北関東訛りがある。少し訛りながら
「下の弟はね、事故で死んでね、交通事故。即死」と、
ものすごくふつ~うに言ったのだ。
私は「ひえ~っ!」という表情をしたと思うが、
口からは「あら、まあ」というマヌケな言葉しかでなかった。

なんでも、弟さんはタクシーの運転手さんで
お客さんを乗せて走っているときに、
若い男女が乗った車に正面衝突されて、
お客さんは足の骨は折ったけれど、いのちに別条はなく、
弟さんは即死だったのだそうだ。

おばあさんが「即死」を連発するので、聞く耳がつらかったが、
きっと弟さんの突然の死をなかなか受け入れられなかったのね。
聞けば、やさしい弟さんだったらしい。

私が「お気の毒に」と言って黙っていたら、今度は
「1人っきゃいない妹も、事故で死んだの」と言うではないか。
私はもう、ハトが豆鉄砲をくらった顔で固まりましたよ。

「妹はさ、山道、あんでしょ、くねくねした山道。
そこをダンナと車で走ってて、車のドアが開いて、
落っこちて死んだの。そんなこと、あっかしらね?」と言うのだ。

いやいやいや、あっかしらね?って言われても…、
「ダンナがちょっといやな人で、うまくいってなかったから、
やられちゃったんじゃないかって、みんなで言ってんだよね」と、
ものすごく怖いことを、さら~っと言った。

「やられちゃった」を漢字で書くと「殺られちゃった」となるわけで、
おばあさんは「だって、走っている車のドアが急に開くなんて、
おっかしいでしょ。そっから転がり落ちたっていうんだから…」と
火曜サスペンス劇場ばりのことを、事もなげに告げたのだ。

困った私が「それは、それは…」と言葉を選んでいると、
今度は「それでもって、もう1人の弟も事故でさ」って、
畳みかけるよに告白したのですよ。

その弟さんは、人に頼まれて、崖に咲く花を取りに行ったら、
崖が崩れて、岩にあたって落ちて亡くなったとか、
転落したところに岩が落ちたとか、
聞かされている私のほうが混乱してしまって、
よく覚えていないのだけど、とにかくもう1人の弟さんも
不慮の事故で亡くなったそうなのだ。

「旅館の人がさ、あの花、取ってくれって言ったんで、
崖んとこに、登ったんだよね~、弟が……。
きょうだいが3人も事故で死んじゃうなんてこと、
あっかしらんえ。弟は2人とも50代だったんだよ。
妹は62歳のときだったねえ」と、
あまり表情を変えずに話すのね。
こっちはもう目を見開きっぱなしで、ドライアイになっちゃう。

多分ご主人には先立たれたのでしょうが、
それでも今、おばあさんは病気もなく健やかで、
2週間ばかり、3人いるひ孫の世話をしにいくのだとのこと。
「名古屋で降りる」というので、少しほっとした。

江戸川区の篠崎に住んでいるのだそうで、
「こっちへ来ることはあるかね?」と私に聞いた。
名古屋で降りるときにおばあさんは、
「お世話になりましたね。どこかでまた会えっかしら」と言い、
何度もお礼を言って降りて行った。
お礼を言われることは、何もしていないのだけど。

さらりとした話しぶりと、
おばあさんの純度の高さみたいなもののために
重苦しい気(邪気)が充満しなかったけれど、
おばあさんのきょうだいのお話はなかなか壮絶で、
新大阪まで少し眠ろうと思ったけれど眠れなかったし、
新大阪まで何を考えていたか、思い出せない。

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2 コメント

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Unknown (mare)
2015-10-04 10:40:03
推理小説の始まりみたいなお話しで、その後を想像してしまいそうです。
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そうなんです (トチ母)
2015-10-04 17:44:31
妹さんが亡くなったとき、もめたのではないかとか、変な心配しちゃって……。
小説より奇なりって、こういうことですね。
返信する

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