湘南オンラインフレネ日誌

フリースクール湘南オンラインフレネ学習的就労支援活動・災害ボランティアの実践を書き溜めていきます。

JHC板橋会見学を終えて(1)「JHC赤塚」「JHC秋桜」

2009-06-03 17:44:03 | 引きこもり
板橋区の下赤塚と、ときわ台にあるJHC板橋会の事業所を見学してきた。片道1時間40分以上かかるので、朝出て夕方にもどる日程。今回は事前の予約の半数4名の参加となった。前回の見学会と関係の研修準備が続き、日程が近かったために、再確認が遅れたためだった。

今回の見学会は、茅ヶ崎に出来るたい焼き屋さんと協働スペースのデザインを考えるという前提があったために、関係者以外は目的が見えにくいという難があった。ひとつは、協働ショップのネットワークの結節点(ノード)としての機能をどう作るかということ、もうひとつは就労支援を本人の自主活動としてどう育てていくのかという観点があった。更には、前者について地域協働、相互連携(例えばJHC秋桜の弁当の配食サービスのような…)の形の事例を求めた。後者については、プレ就労と地域セイフティネットのようなスキルアップと、失業社会的挫折組の受け皿のような通過型のデザインと、そこを本拠とした地域起業型のデザインのヒントが期待されていた。

巡回する事業所は4つあった。すべてJHC板橋会のネットワークの中にあった。「JHC大塚(洋菓子作り)」「HC秋桜(弁当作り・飲食店・配食サービス)」「JHCスペースピア(地域活動支援・相談支援)」「社会就労センター プロデュース『道』(喫茶『風見鶏』・一般就労への就労移行支援)だった。それぞれに解説の方が付き、Q&Aをしっかり話し合えたので、日程最後の「道」が15時終了ということで時間切れ、3箇所の見学に終わった。

JHC板橋会は24年の歴史を持っている。それだけに、それぞれの成果と同時に課題も浮かび上がってくる。また地域の雰囲気や、参加者(あえて利用者と呼ばない)の皆さんの体温のようなものは、現場に足を運ばなければわからない。見学はそういう不確かな姿をまるごと感じ取ってくる行為なのだが、今回はそのための時間的なゆとりを取るために、内容の次に隣接した事業所を選び、上板橋の「クラブハウス・サンマリーナ」を後日機会のあるときに送った。

私達は、初め下赤塚駅そばの「JHC大塚」にお邪魔した。私は以前に「パイ焼き窯」見学のとき、一般就労を目指した洋菓子作りの技術習得の職人作りに匹敵する活動を見てきていたので、そのプログラムを通過できる素質が問われる点が気になっていた。

「JHC大塚」は、近郊駅前都市の表通りの、すぐ裏側の住宅街が持つコロニー化したまとまりのなかに、しっくりはまる内容を持っていた。つまり素人臭さと、この地域の店で働くための誠実さのようなのようなものを感じていた。ケーキもパウンドケーキ、それにクッキーというロー・ハードルでありながら、奥が深いが、いわゆる共同作業所の定番の品選びをしていた。材料の品質や焼き上げ、包装、販売方法などを売り上げの制約の中で最大限に引き出していく、そのセンスと経営力が、類似の店の味の違いとなって現れてしまう。その「差」は、比べる意志のあるものが気づく地味なものだが、障がい者店舗畑の人間には、店の潮位の変化としてそれがわかってしまう。それは構成員の方の気持ちではなく、ここからの一歩上はプロとの出会いだという天井のようなものだった。

素人の方が練り上げて作ってきたお店なのである。どこにも構成員・スタッフの方の手が入っていた。2階を案内されても、よそよそしさの無い落ち着きを持っていた。しかし商品が客を呼んでいないというか、相手を持っていない、これが目立ってしまっていた。

パイ焼き窯さんのように、営業活動に専業店に競り勝つような磨きをかけた経営が他極にある。しかしそのお菓子が媒介となって地域の人とつながる、販売活動ともちょっと違うつながりの精彩が萎えてきているところにお邪魔したように感した。これは不況下シャッター通り商店街に開店しようとする私達が気をつけなくてはならないつかみどころの無い最大の難関、ここの活力のノウハウが試行錯誤の期間の厳しさとして浮かび上がってきた。

こちらの店舗が地元住民の方の協力によって支えられているところに、店の歴史を感じるのだが、変化とつながりへの意志が感じられなかったのだった。本人活動の立ち上げの難しさがそこにあった。お土産にパウンドケーキと小クッキーを買った。そのパウンドケーキは包装に工夫が必要だったが中身は美味しかったが、小クッキーはいただけなかった。こういうばらつきは、あってはならないことなのだが。ここは当事者さんを「利用者」と考える法の旧い発想が足を引いているように思えた。

余談だが、2階の消毒器付きスリッパ収納器は面白かった。なるほど支援者の方たちの出入りが多いのですね。

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JHC板橋会の事業所を横断する職員さんのガイド役の方によって、私達は、次の「JHC秋桜」にお邪魔した。丁度お昼時だったので、私達のお弁当定食を準備していてくださり、私達は定食をいただきながら、お店の様子を観させてもらった。

厨房狭しと当事者の方が仕事を分担して働いており、ただ配食で出かけている方が戻っていない状態なので、帰ってきたら一杯になってしまうと、余計な心配をしていた。

私達が食事をしている間に、何人かのお客さんが入って食事をされていたが、中には始めてのお客さんで、喫煙休憩が目当ての方が、禁煙と分かって出て行くなど、接客商売の難しさも。カレーとお弁当という形だから、喫茶または食堂の展開と、「お弁当」という先方が可搬性をメリットにした料理の形態が、違和感を感じさせた。可搬性を持たせる場合には、味の保持とまとまりのよさという、例えば横にパックを持っても、汁が流れ出さないというような携帯優先の工夫がはいる。ところが喫茶・食堂のようなお店の展開では、食事に「華」がないといけない。ここが違和感の原因だった。

しかしお弁当としては、調理師の方が入っているのか、バランスの良いもので、美味しかった。ただ私だったら「汁」にこだわる。機械切りでもいいから、白髪ねぎを作っておいて、直前に使うなどの鮮やかさを作る。または好き嫌いがあるが小粒トマトとか赤カブを使った色を入れる。これらは、配食用には向かない。これが使い分けと思うのだが。人通りが少なめだが車が通らない落ち着きのあるところだから、口コミの効く、競合店も少ない立地展開が出来る店舗であると思った。「日替わり」とあったが、メニューを見てみたかった。お弁当チェーンとの違いをどうだしているのかなと思いつつ、美味しくいただいた。バランスはプロのものだった。

食事後、「JHC秋桜」の事業展開の概要説明をしていただいた。私の関心は、ここにどのような冒険を仕掛けているかという部分だった。安定して当事者さんの職場を維持継続することと、当事者さんの仕事と知り合いの輪を拡げることとは矛盾しないはずなのだが、実際の問題として、当事者さんが仕事に慣れるために払う労力だけでも相当のパワーを要する。今回、「秋桜」さんの仕事手順は相当試行錯誤を重ねた結果であって、私が考える相互の関係が規定する力までマッチングの発想で掻き消えているように思えた。「赤塚」「秋桜」ともに、見学の限界ではあるが、「現場の労働の様子」を時間をかけてみてみなければ、本質的なことは見えないのだろうが、配食先が行政など関係機関の固定的な場所ばかりで、いわゆる民間の地域市場まで踏み出さないでいるというのは、仕事の定着支援の労力と、固定的な従業員としての当事者さんの安定したパワーが前提に出来ないところにあるように思う。日中の当事者さんの居場所として助成を受けていた場合、企業的な手法で純益を上げようとするところに制度的な飛躍がある。冒険するか否かというところで、企画力が問われているように思えるのだが。

私はJHC秋桜の独居高齢者宅の宅配サービスを通じて、地域の相互支援ネットワークに参加しているように聞いていただけに、現場の環境の重さを感じている。

ブログ書き込みの時間の限界が来たので、この辺で一度区切るが、歴史のある活動ゆえ、見えるものという点について、次回も「秋桜」見学話の続きから書いていく。ご覧下さい。

(つづく)


夜間傾聴:□□君(仮名・私の体力の限界で昼間巡回へ)
     多摩センター君(仮名・親御さん)

(校正1回目済み)


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