ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

メランコリー、ロサ会館

2015年09月12日 | 散歩・旅行

  じつに久しぶりの晴れた週末に恵まれました。
 休日恒例の朝湯につかった後、散歩に出かけました。

 どこに行こうかなと思案して、先般仕事で訪れた目白の町並みが面白そうだと考えて、首都高速を護国寺インター目指して走り出しました。
 千葉市の自宅から車を走らせること50分、目白駅近くの時間貸し駐車場に車を停めました。

 目白には徳川黎明会なる西洋のお城のような建物があり、びっくり。
 持参のiPad miniで調べたところ、名古屋で徳川美術館などを運営する旧尾張徳川家が運営する財団の総務担当部署が入っている建物だそうです。
 なるほど、立派なわけです。

 軽井沢の別荘地のような緑豊かで豪邸が立ち並ぶ一角を抜け、しばしぶらぶら。

 目白庭園という小さな日本庭園が無料で解放されていました。
 小さいながら滝や池があり、錦鯉が泳いでいて、都内であることを忘れさせてくれます。

 ガストで昼食をとってから、なんとなく、池袋方面へと歩き出しました。
 ほどなく、立教大学に到着。
 近頃の私学がそうであるように、立派なタワービルが建っています。
 私が知る立教大学とはおよそ異なる風情でした。

 立教通りを抜けると、池袋西口の繁華街に懐かしい建物を見つけました。

 ロサ会館です。

 天井が低くて薄汚れた雑居ビルは、まさに昭和の風情。

 ここには映画館が二つあって、私が学生のころは、5~6百円で2本立ての古い名画が観られる名画座でした。
 20年ほど前まではこの手の名画座が都内各地にありました。
 飯田橋の佳作座、八重洲のスター座、池袋の文芸座などで、ロサ会館のシネマ・ロサもその一つ。
 名画座からロードショー館に変わってはいましたが、そのたたずまいは昔のまま。
 ロサ会館にはその他にも、洋食屋など、往時と変わらぬ店が入り、タイム・スリップしたかのような感慨に襲われました。

 学生のころ、たっぷりある時間を持て余して、1人で映画を観たり古本屋を回ったりしたことを思い出します。
 サークル活動もせず、バイトもしなかった私には、時間が無限にあるように感じられたものです。
 しかしそれは、無限ではなく、夢幻に過ぎなかったことを、数年後に就職して思い知らされることになるとは、その時は想像もしなかったのですから呑気なものです。

 なんとなく、「それから」の主人公のように、学校を出ても、ぷらぷらしていられるような気がしていたのです。

それから (新潮文庫)
夏目 漱石
新潮社

 

それから [DVD]
松田優作,藤谷美和子,小林薫,風間杜夫,中村嘉葎雄
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

 今思えば愚かなことです。

 当時の私は、耽美的で幻想的な文学や映画、美術にどっぷりとはまり、現実の何たるかを知らず、ただなんとなく、自分はひとかどの人物であるという少年らしい幻の自覚のなかで珍妙な世界を作り上げ、そこにたった独りで生きていたとしか言い様がありません。

 そして40代も半ばを越えてなお、その残滓のような物が、現実にしか生きられなくなった私を苦しめます。

 ロサ会館を後にすると、そこにはまさしく現代の池袋が私を待ち構えていました。

 メランコリーに浸りながら、しかし私は現実をしっかりと生きているのだという自負を持ちつつ、山手線で目白に戻り、帰宅の途についたのでした。

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