昨夜はSF時代伝奇ロマンとも言うべき小説、「機巧のイブ」を読みました。
機巧のイヴ (新潮文庫) | |
乾 緑郎 | |
新潮社 |
江戸幕府をモデルにしたと思しき天府。
そこに仕える天才機巧師によって生み出された、人間そっくりの美しいロボット、伊武。
天皇家を思わせる、しかし女系しか皇位を継げない天帝家。
二つの巨大な権力が、女系でしか皇位を継げないがゆえに、女児ができない場合を想定して天帝の身代わりとして生み出されたロボットをめぐって、暗闘を繰り広げます。
そして天才機巧師の弟子が、美しい女性にしか見えない伊武に恋心を抱きながら、魂とは、心とは何なのか、深い思索を巡らせます。
人間にしてからが、愛する両親や、友人、恋人、配偶者との関係性の中で、性格が形作られ、心や魂らしきものを手にします。
それならば、ロボットもまた、愛し愛されることによって、心や魂を得ることが出来たとて、何の不思議もありません。
あるいは逆に、人との接触を持たなかったロボットが、単に命令どおりにしか動けなくても。
そしてまた、その命令がどんなに残虐なものであろうとも。
奇想天外な物語が、エンターテイメント性豊かに語られる、なかなかの逸品でした。