今日はなんだか肌寒いですねぇ。
初夏という感じはしません。
暑い真夏が来るのを怖れながらも待ち焦がれる、矛盾した私がいます。
蒼ざめし 額つめたく 濡れわたり 月夜の夏の 街を我が行く
若山牧水の和歌です。
月夜の夏、蒼ざめた顔で町を彷徨する歌人が目に浮かぶようです。
牧水先生のことですから、きっと酔った頭で、しかし頭の芯は冴えたまま、ふらついているのでしょう。
不気味な迫力を感じる秀歌です。
疲れはてて 帰り来れば 珍しき もの見るごとく つどふ妻子ら
これも若山牧水の和歌です。
上の和歌とは別の歌集に載っていますが、続きだと思って読むことは、なかなか楽しいものです。
感傷的な深夜の散歩から酔眼で帰宅してみれば、珍しいお客様が来たかのように、妻子が集うというのです。
それだけ妻子を放ってふらついているのでしょうね。
芸術家の孤独な魂を感じずにはいられません。
飲むなと 叱り叱りながら母がつぐ うす暗き部屋の 夜の酒のいろ
牧水先生、老母に叱られながらも酒を飲むという、ほのぼのした面もあったのですねぇ。
それにしてもお母さん、飲むなと叱りながらついじゃあいけませんよ。
われとわが 悩める魂の 黒髪を 撫づるとごとく 酒は飲むなり
酒飲みは何かと理由をつけて飲みたがるものですが、上の和歌はちょっと気取り過ぎじゃないでしょうか。
むしろ、
それほどに うまきかとひとの 問ひたらば 何と答へむ この酒の味
こっちのほうが馬鹿正直で良いですねぇ。
私が酒を愛すること、牧水先生には遠く及びませんねぇ。
しかし私が牧水先生の歌を愛すること、人後に落ちるものではありません。
若山牧水歌集 (岩波文庫) | |
伊藤 一彦 | |
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